『東京家族』  映画関係

〔映画紹介〕

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「山田洋次監督50周年記念作品」と銘打った作品。
監督作が81本目というから大したものだ。

チラシに「『東京物語』をモチーフとした、<今の家族>の物語です。」と書いてあり、
エンドクレジットで「小津安次郎監督の『東京物語』に捧ぐ」となっている。
リメイクとは言っていないが、
設定がほとんど同じで、
いくつかのシークエンスも同じ、
しかも、登場人物のほとんどが同じ役名だから、
リメイクと言っていいだろう。
なにしろ、時代的に設定を変えざるを得なかった
原節子演ずる次男の嫁の役に当る
蒼井優の役名も「紀子」としているくらいなのだから。

つまり、山田洋次版「東京物語」であり、
平成版「東京物語」であると言ってもいい。
最新の東京スカイツリーも出て来る。

瀬戸内海の小島で暮らす老夫婦が、
子供たちに会うために東京にやって来る。
開業医を営む長男と
美容院を経営する長女に
舞台美術の仕事をしている次男。
しかし、長男も長女も
仕事の忙しさにかまけて
父母に十分なことをしてあげられず、
やがてもてあますようになる。
夫婦版「リア王」の様相。
よかれと思って提供した豪華ホテル暮らしも
老夫婦にとってはなじめない。
予定を変更して帰って来た父母に
「今日はお店で商店街の会合がある」
と邪険にされた夫婦は、
「ついに宿無しになった」と口にし、
父は同郷の友人を訪ねて
断っていた酒を飲みすぎて迷惑をかけ、
母は気にかけていた次男のアパートに泊まって、
その恋人に会い、安心する。
しかし、その翌日・・・

というわけで、
生活を別にした日々ゆえに
家族の間に作ってしまった溝が
次第に明らかになる。
長男も長女も今は一国一城の主。
城の事情を優先せざるを得ない。
誰も悪くないのに、
傷つけてしまう家族の絆。

老夫婦が横浜のホテルの前の海岸で所在なげに過ごすあたりから
「家族って哀しいな」と、
涙が流れてしまった。

旧友と会って愚痴を言い合い、
飲み屋で邪魔者扱いされ、
「お前は幸せ者だ」
と言われても、
「みんな東京に出て来てしまった」
と不満を口にする父。
「我々の国はどこかで道を間違えてしまった」
というあたりが
山田洋次の一番言いたいことだったのだろうか。

老夫婦を演ずる橋爪功吉行和子が好演。
特に蒼井優
次男の婚約者をさわやかに演じ、
最後に父親から感謝の言葉をもらうところで涙を誘う。

山田洋次の演出は
まさに職人芸で、
終始安定した画面で引きつける。
普遍的な内容に、後半は泣かされてしまった。

「東京物語」のリメイクなんて、と
当初、身を斜めにして観たが、
これはこれで、山田洋次の作品になっていた。
ただ、「東京物語」には、遠く及ばない
そのあたりが題名を「東京家族」と変えざるを得なかった事情だろうか。

終盤、母親の年齢が「68歳」と分かってびっくりした。
父親は72歳だという。
しかし、今の70歳前後の人は、
もっと活動的ではないか。
画面から受ける印象は70代後半。
東京に出て来ながら、
息子や娘の家に
案内がないからと言ってひっそりとこもっている、
というのは、
山田洋次の他の作品でも見られる、
思い込みではないか。

そういう意味で、
現代の物語というより、
20年ほど前の話のように感じた。
年齢をあのようにはっきりさせずに、
観客の想像に任せる、
というのも一つの手であったと思えるのだが・・・。

5段階評価の「4」



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