『双頭のバビロン』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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皆川博子の大力作。
なにしろ、2段組みで538ページある。
そう簡単に読める小説ではないが、
読めばたちどころに、この夢幻の世界に引き込まれる。

19世紀末のウィーン。
貴族の血を引くグリースバッハ家に生まれたのは、
腰の部分で癒着したシャム双子だった。
一族の恥としてその存在は秘匿されるが、
骨の癒着がなかったことから
4歳の時、分離手術に成功、
一方のゲオルグは名家の跡取りとなるが、
もう一人の半身、ユリアンは
その存在そのものを否定され、
プラハの癲狂院「芸術家の家」で、
中国で神父に引き取られた少年、
ツヴェンゲルと共に育てられる。

ゲオルグは決闘騒ぎを起こして放逐され、
アメリカに渡って
ハリウッドで監督として成功する。

ユリアンはツヴェンゲルと共に第一次世界大戦に参戦し、
ゲオルグをかたって生家にもぐりこむ。

ゲオルグとユリアンの間では
不思議の共鳴作用が起こり、
お互いの記憶が共有され、
しばしばお互いの記憶が混濁する「自動書記」という現象が起こる。

やがて、
ユリアンはアメリカから輸入されてきたハリウッド映画のタイトルに
アメリカに行った片割れの名前を発見し、
会うためにアメリカに渡る。
しかし、事件に巻き込まれ、足踏みしている間に
撮影所で火災を起こして失脚したゲオルグは
上海に渡って映画製作にのぞんでいた。

ハリウッドの重鎮から特別な使命を帯びたパウルと共に
上海に渡ったユリアンは
ゲオルグの住まいの向かいに居を構え、
再会する時を狙うが・・・

この話に、
ゲオルグの自伝を速記し、
助監督としてとりたてられるエーゴン・リーベンという青年が関わるが、
この青年の正体が知れた時、
物語はぐるりと展開する。

ハリウッドと上海という
二つの魔都を舞台に展開する
引き裂かれた双生児の運命・・・

酔った
シャム双子については私は昔から興味津々だが、
それを題材に
かくも重層的で奥行きの深い物語が展開するとは。
しかも、無声映画からトーキーの端境期のハリウッドが舞台。
ゲオルグはシナリオを書きながら、
いつのまにかユリアンの世界と同化してしまう。
そのあたりの描写の見事さ。

ドイツ語題の「DOPPEL BABYLON」は、
ドッペル・アドラー=双頭の鷲、オーストリア・ハンガリー帝国の紋章や
ドッペルゲンガー=分身
ドッペルベービ(BABY)=双頭の嬰児
などのイメージと重なる意味ある題名。

最後にゲオルグは
上海で観た貧民窟の情景に基づく
「HUA MULAN」を作り上げる。
そのガラ・プレミアの夜、
全ての謎が明らかになる。

もう一度書くが、酔った。
これが女性が書いたものだとは。
今、日本の女流作家が一番豊かかもしれない。





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