『無花果とムーン』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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2008年、「私の男」で直木賞を取った
桜庭一樹の作品。

荒野のど真ん中にぽつんとある小さな町・無花果に住む
18歳の少女・前嶋月夜の物語。
母親は出奔し、
父と二人の兄、一郎と奈落と4人で暮らしている。
小学校の教頭を務める父が
修学旅行の引率先で、
三歳の月夜を拾い、引き取った。
「もらわれっこ」であることが月夜の中にトラウマとして残っている。

年の離れた一郎とは距離があるが、
一歳年上の奈落とは近親相姦的愛情が育っている。

その奈落がアーモンドアレルギーで死んでしまった。
「ぼく、ずっと、月夜に言いたかったことがあるんだよ」
という謎の言葉を残して。

こうして、月夜と死者の夏の月の夜が始まる。

何かと死者の気配を感ずる月夜。
自転車のベルが鳴り、
口笛が聞こえ、
冷蔵庫の中のものがなくなる。
憔悴していく月夜を
腫れ物を触るように接する周囲。
夢の中に現れた奈落は、
「未確認飛行物体に乗って還って来るよ」
と告げる。

その予言どおり、
町起しのイベント「無花果UFOフェスティバル」の手伝いのための
季節労働者のトレーラーハウスに乗って、
青白い膚の青年・蜜が現れる。
月夜からは奈落そっくりの風貌に見えるが、
周囲の者にはそうは見えないらしい。
月夜と蜜は密接に交わり、
フェスティバルの夜、
ついに蜜の中に奈落が現れ・・・

というわけで、
多感な青春の中での
少女の最愛の者を失った哀しみと別れが描かれる。
まぎれもなく
才能豊かな作者によって織りなされる人間模様。
様々な美しいイメージが重なり、
みずみずしい感性があふれる。
多分生身の俳優では無理なので、
アニメででも映画化してもらいたいものだ。

ただ、思春期の少女の想念の世界が描かれているので、
大の大人の男が読む小説ではない。
もし読む気になったおじさんがいたら、
その点、ご注意を。





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