『銀漢の譜』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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葉室麟が2012年、
『蜩ノ記』で直木賞を取る前、
2007年に松本清張賞を取った作品。

月ケ瀬藩の家老、松浦将監(しょうげん)の領内の視察にあたり、
郡方の日下部源五が案内役を勤める。
将監と源五は
同じ剣術道場に通う幼なじみで、
今は身分違い。
その上、ある出来事で
源五の方から絶縁を通告し、疎遠になっていた。
峠まで同道する間、
源五は将監の体調に異変を感ずる。
昔の友人口調で話そうと言う将監は、
自分が余命1年であることを打ち明け、
「源五よ、わしは間もなく名家老どころか、
逆臣と呼ばれることになるぞ」
と言い放つ。

こうして、
二人の出会いと修行、
離反と再会の物語が展開する。

銀漢とは、天の川のことで、
夏の夜、もう一人の友、百姓の十蔵と共に
空を見上げて星の美しさに感嘆した経験による。
後に一揆で処罰される十蔵の最後の手紙に託される。
銀漢が友情のシンボルとなっているのだ。

物語は、
藩内の様々な確執に翻弄される
親友たちの姿を描き、
その中での男の生きざまが現れる。
貫くのは身分を越えた友情で、
解説で島内景二氏が、
藤原公任(きんとう)が「源氏物語」と同時代に編纂した
「和漢朗詠集」の「交友」の歌に触れ、
「君と我いかなることを契りけむ昔の世こそ知らまほしけれ」
(君と私とがこの世で出会って、
これほど深い友情で結ばれたのは、
前世でどのような深い因縁があったからなのだろうか、
それを知りたいものだ)
という歌を紹介しており、
また、
『わしには友がいた』という充実感が、
将監の人生を輝かせる。」
と書いているが、
まさにこの小説のテーマを表している。

その他、
少年時代、将監の母、千鶴が生け花をしているのを見て、
源五が
「花というものは自然に咲いておってきれいなものと思いますが、
やはり葉は切らねばならぬものですか」
と聞くと、
千鶴が
「源五殿は、人は皆、
生まれたままで美しい心を持っているとお思いですか」
と問い、
「人も花も同じです。
生まれ持ったものは尊いでしょうが、
それを美しくするためには
おのずと切らなければならないものがあります。
花を鋏を入れますが、
人は勉学や武術で鍛練して自分の心を美しくするのです」
「花の美しさは形にありますが、
人の美しさは
覚悟と心映えではないでしょうか」

と言うくだりなど、
心に残る場面が多い。





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