『プリズン・トリック』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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第55回江戸川乱歩賞受賞作

まず「序章」で、
市原交通刑務所の内部の描写が興味を引く。
作者は実際に入ったことがあるのではないかと思うほどの
詳細な記述が続く。

そして、第1章で、
この刑務所の中で殺人事件が起こる。
しかも、密室殺人だ。
死体は顔に硫酸がかけられて損傷しており、
手の指にも硫酸が。
そして、「石塚、死すべし。宮崎」
という文句が模造紙に大書されていた。
囚人・宮崎が囚人・石塚を殺して逃走したと思われる。
刑務官は宮崎の家に張り込む。
しかし、宮崎は現れない。
やがて、殺されたのは宮崎で、
逃走したのは石塚だと分かるが、
石塚本人は自損事故で植物人間になっていた。
では、刑務所にいた石塚は何者か・・・

というわけで、謎が謎を呼ぶ展開。
まさに江戸川乱歩賞にふさわしい内容だ。

難点は、
「視点」が無秩序に変わること。
刑務官、県警捜査官、保険調査員、出所したばかりの囚人・・・
視点が変わるのはよくあることで、
それ自体はいいが、
混乱気味なのが困る。

まあ、それでも、
犯行の背後に見えて来るのは意外な内容だし、
内包する世界も広がり、
妥当な着地点に落ち着く。

と思ったら、
最後の最後に登場人物の一人の「手紙」という形で
読者にうっちゃりを食わせる。
「終章」が閉じた後のこの「手紙」は、
応募時点にはなかったもので、
単行本刊行時にもなかったという。
インターネット上に発表されて、文庫版に収録された。
こういう形のどんでん返しも珍しい。






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