最後の追い込みと『異聞浪人記』  

今日は、各支部や理事に
加入促進の最後のお願いをしましたが、
その時に全支部、全理事の達成状況の一覧表を添付。
今までは達成者だけを載せましたが、
今日のは「0」を含めて掲載。
効果はてきめんでした。
今日5時までで218。
残り114。
週明けにどんな展開があるか、楽しみ。


〔書籍紹介〕

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映画「一命」の原作。
その前に映画「切腹」の原作。
それは、
この本の表題作で、
他に5編の短編を収録。
中には、映画「上意討ち」の原作である「拝領妻始末」もある。

昭和54年に刊行した本。

面白い。

どの登場人物も心の中に大きな秘密を抱えており、
その秘密が明らかになった時、
武士社会の不条理が具現する。
それを不条理と言うのは現代からの視点で、
当時はその中で生きるしかなかったわけで、
しかし、その不条理社会の中で生きる人の中に
血の通った哀歓があったことが
鮮烈に描かれる。


「薩摩軍法」

戦の時、隊将の首を取られたら、
その一隊は全員討ち死にしなければならない
という軍法ゆえに、
命を捨てなければならない若者たちの不条理が描かれる。
戦場から帰った若侍と秘密を共有した農民が
その秘密を必死に守りながら生きていく姿は胸を打つ。
そして、その秘密が暴かれた時の
本人及び周囲の反応がまさに不条理。


「異聞浪人記」

「切腹」と「一命」の原作。
井伊家の江戸屋敷を訪れた浪人の口から語られる真実が、
井伊家に恐慌を与える。
何カ月か前に起こった事件とのつながりが分かった時・・・

実にうまい構成で、
映画にしたくなる気持ちが分かる。
それを井伊家江戸家老の記録として脚本化した橋本忍の力量を
改めて認識した。
もともとこの本を読むきっかけは、
「一命」で最後に父親が竹光で闘うので、
それはないだろう、と思って「切腹」で確認し、
もしかして原作がそうかもしれないと思って読んだのだが、
やはり竹光では闘わない。
というか、そもそも最後の死闘は映画化の時の産物だ。
父親は、それ以上死者を増やさずに静かに死んでいった。
映画としては、最後に闘わせないと絵にならないのでそうしたようだ。


「高柳父子」

鍋島藩主が死んだ時、
追腹を申し出た侍がいたため、
藩はあわてる。
追腹は既に幕府によって禁止されており、
そんなことをさせたら藩が処罰されてしまう。
藩の上層部は必死に止めるが、
侍には、それだけの理由があった。
前の藩主が死んだ時、
最も寵愛を受けたのに追腹をせず、
親戚一同の圧力で無理矢理詰め腹を切らされた父の汚名を晴らそうというのだ。
かつては無理矢理追腹を求めた同じ人が
幕府を恐れて追腹を止める。
その姿をあざ笑いながら侍の取った行動は・・・


「綾尾内記覚書」

仇討ちを果たして帰ってきた侍がいた。
しかし、その後、
討たれたはずの仇が生きているという噂が広がった。
汚名を晴らすために、
その人物を呼び寄せるが、
その真実は・・・
この時の親戚の行動は・・・
これも秘密を抱えて生きた人間が
真実が表れた時の行動が胸を打つ。


「拝領妻始末」

愛し合っていた夫婦が
藩の事情で引き裂かれる。
その愛と哀しみが描かれるが、
原作と違うのは、
抵抗の結果上意討ちを受けず、
最終的に従ってしまうこと。
普通の人間の普通の愛情が
制度ゆえに認められない不条理。
あなたなら、どうしますか。


「かげろう記」

琉球との密貿易によって経済を建て直した薩摩藩が
幕府の調査を受けるが、
発覚すれば藩は取りつぶしに合う。
ではどうするかと藩は必死になるが、
その窮状を一人の若侍が救っていく。
その方法は・・・


このように、
軍法、切腹、追腹、仇討、拝領妻、幕府の査察等、
武士社会の不条理を描いて
その中の生身の人間の哀歓を描いて鮮烈。

特に、昔の日本人は恥を知っており、
恥のまま生きるよりは命を捨てた方がいいと思っていた。
今は恥知らずが増えたが
武士道を日本人はもう一度思い出すべきだ。

30年も前の小説だが、
今読んでも面白い。

筆者の滝口康彦は、
5回直木賞候補になって、
ついに取れなかった。
充分賞を取る力はあるのに、
きっと不運だったんだろうな。

時代小説を読む楽しみを味合わせてくれる本。





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