ある新年会と挨拶  

夕方から
業界団体の新年会へ。

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芹田理事長も壇上へ。

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お定まりの鏡開きなどあって、

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お食事。

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ローストビーフは、

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「がんばれ東北」の意味で
福島牛を使ったそうです。

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あとの料理の写真は、カット。

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1年に1度、
この時だけしか会わない人も多くおり、
その人の1年間が顔に表れます。

中には、
悪徳不動産会社の社長のような風貌になってしまった人もいて、
どんな1年間だったのでしょうか。

ある団体の理事長をしている方は、
28年前の初対面から変わらない姿を見せていました。
この方は、
事務局長が組合に入った時に、
連れて行かれた農水省の
課長補佐だった人で、
事務局長の顔を見た途端、
「業界の人みたいな顔をしていないね」
と言ってのけた人。
そういう見方の出来る人だから、
本人も変わらない。


そういえば、
この東京会館は、
昨日の芥川賞・直木賞の記者会見の場だったはず。


特にこの新年会について言うわけではありませんが、
せっかく挨拶に立たされながら、
何でこんなにヘタなんだろうとう人がいます。
国会議員の方は、
さすがに経験値が違って
総じて、お上手です。
都会議員クラスになると、
かなりレベルが落ち、
今日も書いたものを読んでいる人がいましたが、
代理代読ならまだしも、
本人なのに読むというのはいかがなものか。
普段、その場にいる人たちと交流がないことが歴然としてしまいます。

なぜ挨拶がつまらないかというと、
自分の実感的経験が織り込まれていないからで、
それがないと通り一遍のものになって、
聞いている人の胸を打ちません。

というより、時間を奪うことになります。
3分の挨拶が空疎だと、
その場にいる人が200人だとすると、
3分×200人=600分、
つまり、総計10時間分の時間が無駄にされたことになります。

やはり、聞いている人が、
「ああ、いい挨拶を聞いた、
得るものがあった」
というものにしないと、
時間をもらった分、申し訳ない。

外人、特にアメリカ人が
日本人の挨拶を聞いて驚くのは、
ユーモアのかけらもないことで、
アメリカではユーモアのない人は
人間的幅がない、とみなされます。

かと言って、ユーモアのセンスが悪いと、
「法務大臣というのは楽ですねえ」
とか、
「ブータンの国王の晩餐会よりこちらが大事」
などということになります。

挨拶の常套句、
「〜すると共に」
とか、
「さて、」
とか
「最後に」
とか
「簡単でございますが」
など、
無意味だし、聞き苦しい。


既に書いたとおり、
1月6日の組合の新年賀詞懇親会における
山本一力氏の挨拶は、
自分の実体験を語り、
人から聞いた格言への自らの感動があり、
出席者に対する励ましがある。
だから、私語が一切なく、
シーンと聞き入る。

文章を書く人、必ずしも話が上手ではなく、
話がうまい人が、必ずしも良い文章を書くわけではありませんが、
その両方うまいのは、珍しい。

本人の了解を得て、
「東京食肉新報」に掲載しましたが、
講読していない方のために、
次に山本一力氏の挨拶を採録します。


皆様、明けましておめでとうございます。
今日、この会場で何べん、
おめでとうございますを言ったか分かりませんが、
とにかく、新年が始まった、本当におめでたい日です。

時代小説を書いておりますこの身とお肉屋さんの皆さんと、
どんな接点があるんだとお考えかもしれませんが、
そこには、大きな縁(えにし)が横たわっております。

私は中学3年の時に、
14歳で高知から東京へ出てまいりました。
渋谷区の富谷というところで新聞の専売所に住み込んで、
新聞を配達しながら学校に通うというところから、
私の東京の暮らしが始まりました。
今年で64を迎えますので、
言わば半世紀前の話です。

その半世紀前に、
実は今のこちらの食肉組合の事務局長をしている大野谷、
同級生ですから、あえて呼び捨てでいきますが、
大野谷と渋谷の上原中学という区立の学校で出会いました。
私は高知から出て来て、右も左も分からない。
土佐弁丸出しでわあわあしゃべってて、
何か言うとみんなから笑われる。
そんな中で、大野谷とは、
映画が好きだとか、
音楽のことだとかで気の合うところがあり、
大変深い結びつき、縁を得ることが出来ました。
新聞を配る配達先まで一緒に大野谷は付いてきて、
配達を手伝ってくれた、ということもありました。
もう50年も昔の話です。

私は高校を卒業して、社会に出ました。
大野谷はその後大学に進み、
学生時代は交わるところはありませんでした。
私はとにかく早く卒業して、
社会に出たいと思っておりましたので、
卒業と同時に、念願叶って、社会人になりました。
旅行会社に入社し、
配属されたのが、
このすぐ近所の有楽町駅前にある交通会館です。
このあたりは社会人の第一歩を歩んだ場所でもありました。

それから先、ずっと長い時間が経過し、
私が販売促進の仕事をやっていた時に、
大野谷が前の事務局長である岡本さんに顔つなぎしてくれて、
組合の料理パンフレットを作るという仕事を
させてもらったというご縁もありました。

思えば、
物書きになって直木賞に手が届く今から10年前までは、
食うのが精一杯という暮らしをしておりました。
そんな時に手を差し伸べてくれた方の一つが
こちらの食肉組合です。
ありがたいことです。
人は辛い時に受けたご恩というのを簡単には忘れません。
深い縁になります。

何か機会があればと思っておりましたら、
今日この場で、私の方から皆さんに
お礼を申し上げる場を作ってくれる
ということになったものですから、
喜び勇んでまいりました。
本当に組合のおかげで、
組合から仕事をいただいたおかげで、
私は食いつなぐことが出来ていたんだとはっきり思っています。

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もう一つ、
先程芹田理事長さんがご挨拶の中で言い及んでくれたことなのですが、
こちらの帝国ホテルの小林哲也社長とも又ご縁があります。
今話している「縁」の言葉の源を私に教えてくれたのは、
実は他ならぬ小林社長です。

ある会食の後、
小林さんから
「人には縁という大事なものがある。
『小人は縁に気づかず、
中人は縁を生かせず、
大人は袖すりあう縁も縁とする』
これは中国の大事な言葉ですが、
覚えておいた方がいいですよ」
という話をうかがいました。
もうあれから何年もたちますが、
小説を書いていながら、
そのことを常に思っております。

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今日お集まりの多くの皆さんは
町のお肉屋さんであるとうかがっています。
お肉屋さんこそ、
お客様との縁を大事にされるご商売です。

アメリカのイーストマン・コダックという
大きな、写真の世界のガリバーだった会社が、
破産の申請をするというニュースが伝わって来ました。
1880年に創業して、
世界中のフィルムの8割のシェアを誇っていたこの会社が、
なぜそんなことになったのか。
答えは簡単です。
ユーザーとの縁を大事にしなかったのです。
ユーザーが今何を欲しがっているか
ということに耳を傾けず、
俺たちはフィルムの開発メーカーだというところに
あぐらをかいてきたことが、
この考えられない結果を引き起こしたと思えてなりません。

私はジョン万次郎の物語を書き続けており、
その取材で何度もアメリカに行っております。
ニューヨークという町は、
歩いて回れる大変好きな町です。
この町にはいたるところに食料品屋があります。
一つの町の中に本当に小さな食料品屋さんが3つも4つもある。
驚いたことに、
どのお店も同じ値段でものを売ってない。
たとえばコカコーラを例にとって言えば、
あるお店では95セントで売っているのに、
別なお店では1ドル15セントで売っている。
高いお店に行って、
あそこでは95セントで売っているのに、
というと、
ウチがいやなら、そっちで買ってくれという。
彼らは、そういう商売をしていながらも、
お客様との縁の結び方は大変に絆が強い。
ですから、少々高かろうが、
お客様は、
その店にわざわざ訪ねて行って、ものを買うということをしている。
それを目(ま)のあたりにして、
ああ、商いの原点はここにあるんだな、
ということを本当に痛感しました。

消費者と一番先端で結びついているのが、小売店です。
小売店が元気でないところに発展などあるわけがありません。
うちの小僧も、
上は大学2年、下が高1ですが、
せっせと町場のお肉屋さんに行って
買って帰って来ます。
小さなお店でそこのご主人の顔を見ながら、
見ている前で肉を切っていくあの包丁さばき。
包丁さばきの見事さの中には、
技だけではなく、心が詰まっている。
どういう心かというと、
人の口に入る食べ物を
おかしなものは絶対に売らないという
その誇りに満ちた心が詰まっています。
それがある限り、
町の小売店は元気になります。
絶対元気です。

皆さんが一生懸命やっておられることを
理解できる消費者も数多くいます。
私も及ばずながら、
自分の小説やエッセイの中で
小売店の大事なことをこれからも書き続けていきます。

どうか皆さん、
年の始まりに当たり、
今日も明日も、
どこよりもおいしいお肉を食べさせてくれる商いであることに
誇りを持ってこの1年を迎えて下さい。
お招きいただいて、本当にありがとうございました。






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