外回りと『天地明察』  

今日は10時30分から4時30分まで外回り
といっても営業して回ったわけではありません。
将来の布石のために
3ヶ所を回ってお話をしてきた次第。
従って事務所には9時45分までと
5時30分以降。つまり中抜け。

わざわざ事務所に戻ったのは、
明日から執筆にかかるため、
細かいことを片づけたいと思ったからです。


[書籍紹介]

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今年の「本屋大賞」受賞作

「本屋大賞」は、全国の書店の販売員が投票で決める賞で、
沢山の書籍を見ている人たち、
「本読み巧者」が選ぶだけに、
読んで面白い、感動作が並ぶ。

過去の受賞作は、↓をクリック。

http://www.hontai.or.jp/history/index.html

この「天地明察」も相当面白い。

簡単に言うと、
江戸時代前期の囲碁棋士で天文暦学者の渋川春海の生涯を描く
というものだが、
一つの青春が燃え上がり、
燃え尽きる様が胸をつく。

春海は将軍家に仕える囲碁棋士の家に生まれ、
将軍の前で「御城碁」(剣術で言えば、御前試合)を打つのが仕事。
しかし、ここのところ算術にのめりこんでおり、
遺題 (数学の問題) を解くことに夢中になっている。
「明察」というのは、
問題に対して出した回答が正しい時、書かれる言葉。
簡単に言えば、「○」みたいなもの。
間違えると、「誤謬」と書かれる。
春海は、自分に解けなかった問題を
ことごとく数秒で解いている関孝和という人物の存在を知って、
衝撃を受ける。

というところを発端として、
算術に夢中になっていた春海が、
北極星出地の観測隊に抜擢される。
この観測隊というのは、
北極星を観測して全国各地の緯度を測るためのもの。
春海はそこで二人の老天文学者に出会い、
この二人から大きな影響を受ける。
その上、二人から
大きな目標を継承し、
それが最終的に日本独特の大和暦の編纂と改暦になっていく。

そこに至る二十数年の歳月の中に、
大老・酒井忠清、水戸光国、会津の保科正之らが登場し、
春海の運命を変えていく。

これらの群像は
学問にせよ、政治にせよ、
大きな使命感を持って邁進する人々で、
戦国の世から太平の世に変わろうとしている
江戸時代の節目の改革を担った人々だ。
その姿は実に清々しく、胸を打つ。

北極星の観測に嬉々として取り組む二人の老人。
その姿は、
しわくちゃの顔をしただけで、
実は全く歳を取っていない二人の少年のように描かれる。
その姿を見て、春海は、心が浄化する思いをする。

将軍のご落胤・保科正之は、
一揆の首謀者の三十六人の農民を磔にした苦悩の中から
一揆の原因を筋道立てて考え、
凶作、飢饉、飢餓を起こすのは蓄えがないからで、
その原因は民のために蓄える方法を為政者たちが創らなかったからだと
過去の治世の欠点を喝破し、
「民の生活向上」を泰平の世の大目標に定め、
「会津に飢人なし」と言われるような民生社会を作り上げる。
様々な幕府の改革にも参画したが、
最後は、幕政の建議が自分の構想であったことが後世に伝われば、
将軍への敬意が損なわれることをおそれ、
自分の幕政建議を全て焼いてしまう。
生きた証をさえ公のために捨て去る、
公平無私を貫く姿。
今の政治家に聞かせてやりたい。

正之が隠居して会津に戻った時、
「大殿様が来る」という噂に集まった領民たちが
「会津に飢人なし」という偉業をなし遂げた君主を
街道の両脇に並んで「大殿様」「大殿様」と
むせび泣きをもって迎える姿は感動的だ。

志を高く持つこと、
その使命感を持続すること、
それを全うすること、
それが人間の生きた証

こうした全ての思いは、
800年の間にすっかり古びてしまった宣明暦を改暦するという
一点に収束していく。
こうしたすぐれた人々の願いを継承して
春海は改暦の大仕事に邁進していく。

江戸時代の当時、
既に日蝕や月蝕を予報する技術が既に出来ていたことをはじめ、
知らないことを沢山知らされる。
そういう知的刺激を満足させられる本だ。

算術への興味と天文への知識、
更に大きな使命に翻弄される春海の姿は
青春グラフィティそのもの。
江戸時代にも、こういう熱い人々がいた。
何度も胸が熱くなり、泣きそうになった。

474ページの長い小説で、
重くてしょうがないが、
読み終えた時の充実感は他に代えられない。
最後のあたりがなぜ駆け足になったかが不思議だが、
読んだことのない世界に目を開いてくれる小説、
どうか直木賞を取ってくれますように。


以下は、余談。

実は事務局長、数ある教科の中でも数学が得意だった。
自慢じゃないが (自慢しているんだが)
算数・数学については「5」以外はとったことがない。

中学の時、因数分解は面白くてたまらなかった。
一つの数式が複数の数式に分解出来るなんて、大発見だった。
平方根が出て来ると、
「二乗して5になる数」を「ルート(√)5」と呼ぶ数学の概念が
たまらなく面白かった。
無理数の概念も新鮮で、
二乗してマイナスになる「虚数」の存在に瞠目した。
二次方程式など大好きで、
真円に対して、二つの中心を持つ楕円や
双曲線などが数式として表現できることに驚いた。
高校に入って、「極限」だの「集合」だの出てきて、
やがて「微分」を知った時には、
全ての図形の秘密を知ったような気がした。
それが「積分」に進むと、
球の体積=4×π×半径の3乗÷3
が導かれる過程が面白くてたまらなく、
なるほど、
こんな複雑な図形の面積・体積はこうして求めるのか、と狂喜した。

こうした高校までの数学も、
大学に入って、「線型代数」だの「行列」だのが出てきて、頓挫。
ここらあたりから文化系に進んでいく。

こんなことを思い出しながら、
「天地明察」を読んだ次第。

ちなみに、親が子供に教えられない科目は算数で、
大体、分数の足し算あたりで無理になるそうです。






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