待ちに待った『トゥーランドット』  映画関係

夕方から銀座に出て、
プッチーニが大好きな友人と夕御飯を食べて、
それから東劇へ。
METライブビューイング
今シーズンの3作目、
プッチーニ「トゥーランドット」を観るためです。
昨年11月7日の上演ですが、
大晦日の歌舞伎座での先行上映の関係で、
2ヶ月待たされて、ようやく観ることが出来ました。

このブログの読者ならご存知のとおり、
「トゥーランドット」は、事務局長が最も愛するオペラ
もう何回観たか、何回聴いたか分かりません。
いろいろへんな演出もあり、
事務局長の私見では、
このフランコ・ゼフィレッリのプロダクション以上のものはありません。
メトロポリタンのこの舞台は、ニューヨークで2回観ました。

もう何度も書いていますが、
ゼフィレッリの演出の素晴らしさは、
決して奇抜に走らず、
リアリズムかつオーソドックスで、
音楽の邪魔をせず
オペラのドラマチックな構造を
視覚的に構築
して見せるところです。

そのために、
装置も自分で設計しており、
第1幕の北京の城前広場は、
階段が複雑に入り組む構造で、
左右の動きだけでなく、
上下の動きを伴う群衆処理が
観客の目を視覚的に楽しませてくれます。

第2幕第2場の宮廷の場面は、
その前の三人の廷臣のコミカルな場面が終わると、
ほんの短い暗転で登場し、
その豪華絢爛さに、拍手がわきました。↓

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第3幕第1場から第2場への転換も本当に早い。
今回の中継では、この時、
画面を引いて、場面転換の早さを認識させてくれます。

全編見所聴きどころ満載。
特に事務局長は、
第1幕が好きで、
冒頭の大臣の宣言から
王ティムールと王子カラフの再会、
首切り役人の登場、
月の出、
子供たちの歌、
ペルシャの王子の処刑、
恩赦の請求、姫の拒絶
と続く
ソロ、デュエット、三重唱が入り乱れ、
これを素晴らしい合唱がつないでいく
もう完璧と言えるドラマチックな展開が大好きです。
第1幕終盤の
奴隷リューのアリアと
「泣かないでくれ、リュー」のカラフのアリアが
王ティムールと女奴隷リューの歌を呼び込み、
廷臣ピン・パン・ポンの3人が応じ、
更に群衆の合唱が加わって来る盛り上がりは恍惚とさせるものがあります。

戯曲「アマデウス」(映画の方ではなく)で、
モーツァルトは、
「Aがしゃべり、Bがしゃべり、Cがしゃべり、
とみんなが同時に話せば、
劇なら目茶苦茶になる。
しかし、オペラでは、それが出来るんだ。
Aの思い、Bの気持ち、Cの感情が、
それそれの歌となってぶつかり合い、
重なり合い、絡み合い、響き合う、
それがオペラなんだ」

と言いますが、まさに、このシーンがそれです。


第2幕は、
トゥーランドットの強烈なドラマチック・ソプラノの独壇場
何しろタイトル・ロールがオペラの後半になって
やっと第一声を発するという作り方がすごい。

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そして、第3幕の「誰も寝てはならぬ」
荒川静香のおかげですっかり有名になりました。
ここはこのオペラでたった2箇所、
拍手が許された
(別に決まりがあるわけではないが、
慣習的にそうなっている。
もう一つは第1幕のリューのアリア)
ところですが、
普通は音楽をそのまま続けます。
喝采に答えて一旦演奏を止めたのは、
事務局長の記憶にない出来事でした。

リューの歌う「氷のように冷たいあなた」は、
ソプラノには珍しい陰鬱なアリアで、
このリューの死から
王ティムールの告発に続く一連の場面では、
今回も泣かされました。
大の男が毎回これでは恥ずかしいですが、
なにしろ、音楽が泣かすように作ってありますので、
仕方ありません。

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幕間インタビューでは、
金管奏者や小道具係も登場して、
いろいろな発見がありました。
大ペテランの皇帝へのインタビューもほほえましく、
歌手たちがお互いに尊敬し、
労りあっている姿は心地よい。

この演出は、
METは永遠に演じ続けるのではないかと思えるもので、
安心して観ていられました。
変わっているのは、歌手の細かい演じ方。
その点で、
トゥーランドットを演じたマリア・グレギーナは、
生まれて初めて目にする
自己犠牲の愛によって変化する心情をよく表現していました。
リューのアリアの途中からの動きで
ああいうのは、初めて見ました。

カラフのマルチェッロ・ジョルダーニは、
歌唱は立派ですが、
演技は今一歩。
もっとも、それは1987年版のプラシド・ドミンゴ
事務局長が見過ぎているからかもしれません。
なにしろ、
第1幕の終り、
謎解きの挑戦を決めてドラを叩く時、
金管楽器が音を引っ張る間、
階段を駆け上るドミンゴは、
まさに花道を行く千両役者。
ローレンス・オリビエ
ドミンゴを評して
「彼は、歌も歌える」
と言ったほどの
保証付きの演技力。
第2幕の謎解きのシーンも、
ドミンゴの演技でサスペンスフルになっていたのに、
ジョルダーノは何もしていません。
まあ、46歳の心技体共に充実していた時のドミンゴと比較しては、
ジョルダーニ、かわいそうですが・・・。

トゥーランドットとのキスも短かすぎて、少々・・・。
これではトゥーランドットの変化が分からない。
「オペラ座の怪人」もキス一つで人間が変わってしまうのですが、
たっぷり演じています。
あれくらいやってくれた方が納得しますが・・。

感心するのは、
群衆の一人一人がしっかり北京の市民としての演技をしていること。
へたな演出家がやると、
合唱はいつも正面を向いて歌い、
それ以外の場面では、
マネキン人形のように突っ立っている、
ということがよくあるのですが、
この舞台では、
群衆の一人一人が生き生きと演じられています。

アンドリス・ネルソンズの指揮は、
破綻はないものの、
若いせいか、やや情感が足りず。
やはりプッチーニを振るのは年齢が必要か。

コミカルな場面あり、
切々と心情を訴える歌あり、
叙情的な子供の合唱あり、
夢幻的な女性合唱あり、
グレギーナ、ジョルダーニ、
それにリューのマリーナ・ポプラススカヤも素晴らしく、
プッチーニの世界を堪能した3時間でした。

1月22日まで。
上映中、もう一度行くつもりです。

帰宅後、
1987年版のMETの「トゥーランドット」を再見。
これは名盤
素晴らしい。
指揮はジェイムズ・レヴァイン
演出は同じ。
トゥーランドットはエヴァ・マルトン
カラフはプラシド・ドミンゴ
リューはレオーナ・ミッチェル
ティムールはポール・プリシュカ
これが全員ものすごくいい。
指揮、歌唱力、演技が最高峰のこのLD (DVDも) は、
やはり、家宝です。

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↓DVD

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タグ: 映画




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