METライブビューイング始まる  

今日は理事・支部長会の資料を印刷している脇で
最後の資料、「為替と決算の見通し」を作成。
説明は事務局長が自分で担当することになったので、
言葉の説明はあまり入れず、
図表等の連続。
これが人の説明するための資料だと、
読めば説明になるように、懇切丁寧なものになってしまいます。

懇親会の座席表も作り、
その一方、「国産牛肉まつり」の件で、実施団体と折衝。
詳しいことは書きませんが、
責任の回避を前提にしている人たちとの仕事は疲れます。

夕方から築地の東劇へ。
11月1日から、今年のMETライブビューイングが始まっており、

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その第1作、「サロメ」を観に。

「サロメ」は聖書ネタで、
イエスの時代の王ヘロデは、
実兄の妻・ヘロディアスを娶ったかどで、
洗礼者ヨハネ (オペラでは、「ヨカナーン」) から激しい非難をされている。
ヘロデは継娘・サロメによこしまな思いを持っており、
ある時、ヘロデの前で踊った褒美に
(「七つのベールの踊り」といわれ、
まとったベールを一つ一つ脱いでいく踊り。
早い話が、ストリップです。)
何でもやろうと言われ、
母・ヘロディアスのさしがねで
「ヨハネの首を」と所望する。
ヨハネを神の預言者と思って畏怖の念を抱いていたヘロデは躊躇するが、
人前で約束した手前、
ヨハネを殺し、その首をサロメに与える。

ちなみに、新約聖書のこのくだりで「サロメ」という固有名詞は出てこない。
当時の歴史家・ヨセフスの著述の中に、
ヘロディアスの娘としてサロメの名前があるため、
この誘惑の踊りを踊った娘はサロメということになっている。
なんだか雰囲気のある名前だね。

この聖書ネタをオスカー・ワイルドが戯曲にした。
聖書どおりの政治的背景は織り込んだものの、
むしろヨカナーンに対する少女の性愛の物語に変貌。
これをドイツ語に訳して、
ほとんどそのままオペラにしたのが
リヒャルト・シュトラウスのこの作品。

1905年の初演は大変な反響を呼び、
反道徳的として、上演拒否の憂き目にあった。
METでも1907年初演の際は、
有力者の圧力で2回目が上演できなかったという。

確かに
聖なる存在に対して性的なアプローチしかできない少女が
その性的欲求により聖なるものを破壊するという
宗教的暗喩と時代の崩壊を予感させる内容で、
今観ても衝撃的だ。
20世紀に作曲されたオペラの最高傑作と言われるのもよく分かる。

さて、今回のオペラは10月11日に上演したもの。
(欧米ではナマ中継。日本は時差の関係で無理。)
2004年の新演出で評判を呼んだ。
演出はユルゲン・フリムで、
装置も衣裳も現代。
古代の物語を現代に持ってくる演出は
事務局長が「大」がつくほど嫌いなのだが、
この作品については違和感がなかった。
むしろ効果的とさえいえる。
どこかの国の貴族階級の頽廃的なサロン、
という感じの装置で、
たとえばナチを出して来て
特別な意味を与えてしまうような押しつけがましい演出でないのがいい。
人物の対立関係を際立てる造形も見事で、
カメラワークもいい。
何より出色はサロメを演じたカリタ・マッティラで、
48歳の熟女だから、この役には、特に映像では無理があり、
観客の想像力で補うしかないのだが、
想像力で補う以上の歌唱力、演技力で魅了した。

七つのベールの踊りは体当たりで、
一体この人、どこまでやるのか、
おばさんの裸など観たくないなあ、
とけしからん思いを持っていると、
(実際に全裸になる演出もある)
トップレスまでいく。
前は手で隠すが、
カメラはヘロデに切り換えたので、
最後はオールヌードになったようだ。

それはともかく、
ヨカナーンに象徴される聖なるものと
ヘロデに象徴される俗なるものの対立、
そのはざまでうごめく少女の性的妄想による
秩序の崩壊の恐怖は十分感じられた。
少女がヨカナーンの首にくちづけする様に
ヘロデが「何かきっと良くないことが起こる」と震撼する様は、
この物語の奥行きを開示している。
いつのまにか黒衣の天使たちの数が増えているのも不気味だ。

↓はヨカナーンの首に口づけするサロメ。
後ろにいるのが黒づくめの天使たち。

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ヨカナーンのユーハ・ウーシタロはもう少し性的魅力がほしい。
ヘロデのキム・ベグリーは少々善人すぎるか。

だが、細かいことはさておき、
緊迫感を持ち続けたこの作品、
最後は総立ちのスタンディング・オベーションは当然の結果。

METライブビューイングのお楽しみの楽屋訪問は
今回は休憩がないので、
冒頭に行い、
マッティラが楽屋から舞台に向かう様をたっぷり見せる。
板付き (幕開き時舞台にいる状態) のマッティラが
柔軟体操を始める様など、
ぎりぎりまで見せてくれる。
そして、カーテンコールの舞台裏も見せる。

第1作にふさわしく、堪能した

とこで、今度のMETライブビューイングは、
↓の10作。

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ポピュラーな作品が少ないのは、
事情通によると、
日本だけではなく、
メインは欧米で、
欧米のファンはポピュラーな作品では今更映画館まで足を運ばないので、
こうした作品が並んだらしい、という。
そういえば、MET初演を含む新演出が5本もある。

例年と違うのは、上映が一週間続けて行われること。
東京では新宿ピカデリー(毎朝10時から)と
東劇(毎夕6時40分から)の2箇所で観られる。

東劇は画面が大きく、
高い位置にあるので、
前の人の頭が邪魔にならない。
音も大きく、クリアで、
オーケストラのステレオ感が不足なのは従来どおりだが、
これも事情通によると、METの送り出し側の音作りがそうだから、
いじらないのだという。
歌はマイクの前で歌っているかのように鮮明だから、
多分録音用のマイクが仕込まれていると思われる。

音の配置は「シネマ歌舞伎」の方が上で、
フレームごとに声の位置を役者の位置に合わせて変えていたのは、
やはり日本人らしい細やかさだ。

回数券も嬉しい制度で、
各演目3500円のところ、
5枚綴りで1万5千円。
つまり、1作品3000円で観られる。
↓5枚の券はそれぞれ写真が違っていて嬉しい。

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プログラムは1300円。

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↑この超美人は、「タイス」のルネ・フレミング
10作品とオープニング・ガラの解説が載っている。
(オープニング・ガラは、大晦日に歌舞伎座で上映。)

「サロメ」は予想以上の出来。
観る (聞く) べし。
11月7日まで





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