日本アカデミー賞  

昨日夜の「日本アカデミー賞」で、
「ALWAYS 三丁目の夕日」が、13部門中12部門受賞の独占状態。
昔、「シャル・ウィ・ダンス?」が13部門独占、というのがあった。
あれは世界に通用する名作だったからいいが、
今度のはちょっと・・・。
なにしろ、私の評価は、5段階中の「2」

ちなみに、私の評価の基準は、
普通に見られて、何とか時間が埋まれば、「3」。
それより優秀なら、「4」。
更に深く感動させてくれれば、「5」。
退屈したら、即座に、「2」。
更に汚かったら、「1」。

と、大変分かりやすい。

最近では、「ホテル・ルワンダ」、「クラッシュ」などが「5」。
「サイレン」が「2」。

「三丁目」は試写会で観て、すこぶる退屈。
観終えた後の感想は、
大の大人が集まって、よくもこんな緩んだ映画を作ったものだ
というもの。

昭和30年代当時の東京タワー建設中の下町の商店街の話。
自動車修理工場に間違って就職した田舎の少女や、
芥川賞をめざしながら、挫折して鬱々としている文学青年や、
会社社長の妾腹の子で、引き取られて金持ちになる道よりも、
貧乏でも暖かい心の絆を求める子どもや、
妻子の死で幸福な家庭を喪失した医者などが出て来る。
そこにからんで、
町に初めて来たテレビや電気冷蔵庫といった
庶民がみんなで豊かになっていった時代の風俗が描かれる。
それを見つめるのが、建設途中の東京タワーで、
最後に完成する・・・。

私は昭和33年に東京に出て来た。
小学校の帰り道、
山手通りと井頭通りの交差点から
建設途上の東京タワーが少しずつ
空に伸びていくのを毎日見ていた。
まさに映画に描かれる世界の住人だ。
だから、なつかしい。
だが、ノスタルジアにすっかり寄り掛かってしまい、
真摯なドラマ作りをしていない姿は、
映画としては失格
だろう。

スクリーンの背後から聞こえて来るのは、
「みんな、やさしいでしょう?
貧しいけど、心豊かでしょう?
ね、昔はよかったね」

という、制作者の声。
感想の書き込みを見ると、
異常なほどの高評価の中で、
そういう声が沢山聞こえるから、
まさに制作者の狙いは当たったのだろう。

だが、私は
「昔はよかった」
というのは大嫌い

「昔の食べ物の方がおいしかった」
「昔の映画の方が面白かった」
「昔の音楽の方が心に響いた」
などというのは、
要するに新しい状況に順応できない、
許容力の狭さをいい訳しているにすぎない。
昔と比べれば、今の方が良いものもあるし、昔の方が良いものもある
が正解というものだろう。

ちなみに、私は、いつも今がいい。
映画だって、今の映画の方が面白いに決まっている。
「今、現在」を描くものはいつも新鮮なのは当たり前。
昔で良いものは、
時間の試練に堪え忍んだ「古典」だけだ。
社会も、今の豊かさが好きだ。
昔に比べて失ったものがあるのは当たり前だが、
反対に、昔には求めて得られなくても、
今なら自由に享受できるものも沢山ある


映画が描いた時代のことだって、
私の記憶の中では、
暗い世間があり、不便な生活があり、不公平も不公正も横行していた。
差別だって今よりひどかったし、
何より格差は今よりずっと強く存在していた。

西岸良平の原作は、
それらをあの独特の画風の中に全て受け止めてデフォルメしているから
人の心を打つのであって、
それと同じことを
リアリズムの極致である映画でやっても
ウソが目立つばかりだ。
登場人物はどこか間抜けで、
間抜けな人たちが、
間抜けなことをしでかすからといって
笑えるわけではない。

映画の評価はそれぞれだが、
私はこの映画、ほんとにダルかった。

ついでに言えば、
吉岡秀隆が最優秀主演男優賞でびっくり
文学を志し挫折して、
駄菓子屋の店番をしながら、
子ども向けの雑誌で空想科学小説を書き、
それも行き詰まって、
引き取った子どもの話を盗作する、
という役どころだが、
そんな屈折も悲哀もなんのその、
これではただの馬鹿青年。
彼は大変特異な役者なので、
こんな役を演ずることはできず、
いつもの「吉岡くん」のままなのだが。

更についでに言えば、
「北の零年」が脚本賞とは。(最優秀賞は取れず)
だって、あの映画は
嘘だらけの目茶苦茶な脚本で、
最後のくだりなど、
私は「これ、昭和30年代の脚本?」と目を覆った。

更に更についでに言えば、
吉永小百合が最優秀主演女優賞 ?
「北の零年」の最も驚愕のシーンは、
猛吹雪の中を歩く吉永小百合の服も何も雪がびっしり付いているのに、
顔だけは一つの雪も付いていない場面。
公開当時、
「大女優の顔は雪も避けて通る」と話題になったものだ。
映画館でも失笑がもれた。
そのような役作りそのものが既に俳優失格だと思うが。

いずれにせよ、
「三丁目」が昨年のベスト・ピクチュアということが
日本映画の水準を良く表している。
たまには「該当作なし」という年があっても良いのではないか。

なお、
本物のアメリカのアカデミー賞は3月5日。(日本時間は6日)
作品賞候補の一つである
「クラッシュ」を観れば、
同じ群像劇でも
大人と子どもの違いがあることか分かっていただけるだろう。




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