現在の保育所は、子ども何人に対して保育士は何人というように職員の配置基準や、
部屋の広さの最低基準、調理室の設置の義務などが法律で定められ、
それに沿って運営されています。
しかし、現在すすめられようとしている保育制度の改革では、
それらが緩和、もしくは撤廃されるかもしれません。
子どもの健やかな発達には明らかにマイナスなのですが、
民間企業などが少ない資金で保育に参入し、利益を上げやすくするためとも言われています。
もし、そんな新制度が出来たら、私も自分で斬新な保育所を作って大儲けをしてやりたいと考えています。
保育所の名は、「イケメン保育園」。
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都会のファッションビルのワンフロアに、
洒落たインテリアのイケメン保育園はあります。
園長(私)以下、少数の職員は全員文句のつけどころのないイケメン。
保育の経験や情熱はどうでもよく、顔で選ばれた面々です。
保育士資格の所持者はそのうちの半数程度。
イケメンにつられて入園希望するお母さんが多く、常に子どもは満杯です。
保育方針は「未来のイケメンやイケメンをゲットできる人を育てる」。
内容どうこうよりも、スタイリッシュな保育を大切にします。
そして職員が全員イケメンということを活かし、どの保育所でも悩みの種である苦情解決もスムーズです。
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「ちょっと先生!うちの子、10日連続で友だちに噛まれてるんですけど!!」
「はあ、一応注意しているんですが…」
「前から思っていたんですけど、1歳児クラス20人に対して保育士2人っておかしくないですか!?」
「ねえ、お母さん…」(母親の手をにぎるイケメン)
「まあ、先生…!?」
「僕たちに至らない点があるのは認めます。だけど、ブサイク4人とイケメン2人、お母さんならどっちがいいですか?」
(そっと目をのぞきこむ)
「そ、そりゃあ…」
「イケメンはイケメンの中で育つ。モンテッソーリの言葉です。息子さんはイケメンへの一本道をふみだしたところなんですよ。そっと見守っていただけませんか?」
「え…でも…」
「不安な時はいつでも僕が、そばにいて肩を抱いてあげますから。だから、ね?」
(ウインクするイケメン)「わ、わかりましたわ」
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また違う日。
「ちょっと先生!あんな発表会ってあんまりじゃないですか?先生がキラキラの衣装を着てピーターパン。本来は主役のはずの子どもたちが木や岩の役でセリフすらないなんて!」
「お母さん、僕の演技に何か足りないところが?」
(そっと髪をかきあげる)
「いえ…先生はそりゃあ素敵でしたけど…」
「でしょ?僕がこうして輝いて見せることで、男の子たちには歩むべき道を、女の子たちには選ぶべき人を示しているんですよ」
(お母さんの肩を抱く)
「そ、そうかしら?」
「そうですよ。そしてお母さんと僕のこの会話は、二人のネバーランドへの扉を開くことになるんですよ」
「まあ…先生…!?」
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またまた違う日
「先生!給食のメニューですけど、あんまりじゃないですか!?昨日の昼なんておにぎりとキュウリ一本だなんて!」
「お母さん、これには訳が…」
「訳も何も、ちゃんと料理してくださ…先生、なんで上着をぬぐんですか?」
「お母さん、聞いてくださいますか?」
「だからなんで?…ちょ、ちょっとシャツまで脱いで…!?」
「うちの保育園では素材本来の味を大切にしているんですよ」
「ちょっと、服を着てくだ…ああ、そんな所まで…!」
「本当にいい素材はそのまま味わうのが一番です。余計なものはいらないんですよ」
「あ、先生なんて美しい…」
「ホラ、もうおわかりでしょ?そのままの素晴らしさが?」
「ええ、自然のままが一番ですわ…」
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と、いうように苦情もすべて円満解決。
保育士も少なく、調理員もいないので人件費はかなり抑えられ、
園長の私はガッポガッポ儲かる、という構図です。
保育制度がこのまま変われば、こんな保育園の実現も可能になります。
さあ、あなたは保育制度の改革に賛成ですか?それとも反対ですか?

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