8/14
前日はもの凄く暑くって「明日は絶好の沢日和だ!」って思っていたのだが、朝になってみるとどうだ? 斜里岳の頂上は雲で隠れ、天気予報によると、網走地方は曇り/晴れ、根室地方は雨の予報となっている。
「台風が近づいているからなぁ〜?」
今日の遡る予定のパンケニワナイ川は、網走管内ではなく根室管内なのだ。
車を根北峠に向けて走っていくと、越川を過ぎたあたりから雨が落ちてきた。
「雨の中の遡行か?」
瑠辺斯林道の・539で沢の装束に着替え、身体を沢モードに切り替える。なんと最後に沢を遡ったのは2014年7月? Blogもサボっていたので、最後の遡行がいつなのかもわからない始末だ!
「果たして歩き通せるか?」
「ぶよぶよの身体は悲鳴を上げないか?」
考えても仕方がない。「私が連れて行ってやる!」って言って連れてきたのだ。
頑張って歩こう!

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06:45 パンケニワナイ川 ・539 から入渓する。
いつもの通り涸れ沢から始まる。
歩き出して15分ほどで590m二股となったのを誰も気付かず本流を進む。
「二股まだだねぇ〜?」
とっくに二股を過ぎ、昨年のGWに南斜里岳を目指したときに渡ったcnt.700mを過ぎたあたりから涸れ沢にも水流が現れてきた。
「今年は水流が多いか?」
思ったよりも随分と手前から水の中を歩くこととなった。


07:44 cnt.720m いよいよ何となくF1と呼んでもいいような滝が出てきた。
雨だというのに濡れたくない私は、樋状の細い滝を跨ぐように登っていき、後続に綱を出す。
この沢に架かる滝は、岩に囲まれて細く高さのない滝が多い。ひょっとしたらF○○と呼べない滝ばかりなのかもしれない。ただここから休む暇もなく出てくる滝は、遡行者を飽きさせない。
これで天気がよくって、向かう先や、遡ってきた沢が見えていたらもっと楽しいのだけれど。


08:14 cnt.780m 樋状のS字滝 滝中を歩くか跨ぐように登る。
08:47 cnt.840m 二条の滝 左岸を登る
08:53 cnt.870m 滑滝を登っていくと段々傾斜が増してくる。最後は四つんばいで。
ここまで写真で見るほど難しい滝はなく、難なく乗越せる。だけれどここからは低いものの微妙なバランスの滝も出てくるので、お助け縄は手放せない。
そして私のお助けは、必ずハーネスに繋いでもらうようにしている。できるだけ自分の手足で登ってほしいからだ!


08:57 cnt.880m 左岸を歩くように登る
09:00 cnt.890m 右岸の落ち口の岩をバランスで乗越す
09:10 cnt.910m 右岸から乗越す


09:14 cnt.930m 左岸の岩をヘツリ気味に登るか、流芯を歩くように登る。
09:20 cnt.940m 右岸を登る
09:25 cnt.950m 細い樋状の小滝群を跨ぐように登ると正面には3mの直瀑が架かってた。右岸の泥付き急斜面をロープで確保しつつ乗越すが、そんな記憶はない。
登ってから良〜く見ると、左岸の傾斜したバンドを慎重に登ってくるのが正解だったようだ。でもこれはこれで楽しい。
しかし、この沢地形はどのようにして出来たのだろうか? 沢の岩脈に細い裂け目ができ、そこを水が侵食していったのだろう。どうして縦方向に掘れていっているのだろう? どうしてもっと幅方向が削れていかなかったのだろう?
そして、その裂け目には巨岩が何個もボコボコと詰まって、その岩の落差が滝となっているのだ。
09:50 cnt.980m 積み上げた巨岩から流れ落ちる3m滝。
前回ここは滝の左側を靴のフリクションを活かして微妙な登りをしたのだが、今回は手前の巨岩を登って滝を越えた。
みんなそうだと思うが、3mくらいの滝なら、微妙なバランスで登ったほうが、達成感が大きい。
あとは安全をとるか? 達成感をとるか?
10:05 巨岩帯に突入する。もう少しでCS連瀑となるがそこに至る小滝群も岩の裂け目を流れているため巻くこともできない。ここでも濡れたくない私は、手足を突っ張りながら小滝の釜を突破する。
10:10 cnt.1040m 〜 10:55 1130m チョックストーンの連瀑の下に立った。


ここが今日の最大の核心部、の予定。


V字型に切れ込んだ急な沢に巨岩が何個も何個も詰まっていて、その巨岩の間を落ちるように水が流れている。落ち込みの高さはないものの、私には連瀑としか表現ができない。
小滝じゃん!っていう人もいるかもしれないが、傾斜は急で攀じ登りの連続となる。SさんもAちゃんもよく頑張ったわ!
ここでもお助け縄が大活躍!
120pのソーンスリングを2本、3本と繋いで長さを調整する。
この90mにも及ぶ連瀑を5人パーティで45分程度で登れたのは、ロープを出さずに、お助けをだけで登ったからに他ならない。
10:55 1130m 沢は開けてくる。赤い滑の始まりだ。
私の記憶の滑とはちょっと違う。今日の赤い滑は汚い!
両側の崖から崩れてきたガレや、全層雪崩で上流から流れてきた多くの木が景観を壊している。でもこれが自然ってやつだ。
「あのおしっこのような水の吹き出しはあるかなぁ〜?」
赤い滑には水が噴出している小さな穴があるのだ。それは同行のMさんも気になって楽しみにしているようだ。


私は前回遡行したときに、その噴出している水の味見をしたのだったが、赤錆臭くって飲料には向いていないのを知っている。今回は写真を撮っただけでスルー!
赤い滑が終わると地形は擂鉢状となり大滝が架かっているのが見えてくるはずだ。
今回はどういう状況かとワクワクしながら歩を進める。なんせ雨混じりのガスの中を遡行しているものだから、前方も歩いてきた後方も見通すことが出来ない。課題はガスの中から唐突に現れるのだ!
11:10 cnt.1180m 前方に白いものが見える。
「やったぁ! ラッキー!」
「雪渓詰めて、大滝を越えられる。」
前々回来たときは、雪渓を利用して難なく大滝を超えられたし、前回きたときは雪渓が融けてなくなっていたので、左岸のガレを攀じ登り、藪を漕いで滝の落ち口まで辿り着いたのだ。もちろん雪渓を詰めたときの方が簡単だったのは言うまでもない。
しかしどうだ? ガスの中から現れた大滝は、雪渓から3mも上に落ち口があるではないか!
ガスが濃くって擂鉢状地形の全容は見渡せない。「どうしよう?」雪渓から安全に滝の落ち口に上がれるかどうか判断する情報が少ない。
私たちはパンケニワナイ川 cnt.1200m の左岸に流れ落ちる細い滝を詰め、竜神玉稜線と東斜里岳(東稜上・1452)のコルに出ようとルートを変更した。


「正しかったのか?」
ayaちゃんったら、一度も藪を漕いだ事がないっていう。藪が当たり前って思っている人には普通の事でも、藪初心者にとっては絶望感すら感じる猛烈な藪として襲いかかっていく。
でもすでに藪に突入してしまった。ここから後戻りはできない。
沢形から水流がなくなり、ガスの向こうにはうっすらと二股が見えてくる。コルは左方向となるものの、左には地形図上険悪地形を示す芋虫マークが描かれている。GPSと地形図を照らし合わせ、遠回りだけど安全策をとり右に進路をとった。
先が見えないのは辛い。終わりかと思った場所に着くと、先にはまだまだ藪が待っている。また終わりかと思った場所に着くと・・・。
沢形はどんどん不明瞭になり藪はハイマツの海となっていった。このままじゃコルの方向になんか進むことなどできない。意を決し東斜里岳方向に進路をとる。
とにかく、ここが今日の最大の核心部となってしまった。

13:00 東斜里岳の稜線上 cnt.1440m に出られた。最近ここに来る人はいないのだろうか?あるはずの踏み跡はまったく見つけられない。
ここからも藪を漕ぎつつコルに降り、竜神の玉稜線を目指す。
2008年この道をsatoさんと歩いたことがある。そのときのsatoさんは、踏み跡があるにもかかわらず「こんなの道じゃない!」とか「すごい藪漕ぎ!」とか言いながら悲壮感満載で歩いていたのだったが、今回は先頭にたち藪を漕ぎ、うっすらとした踏み跡まで見つけてくれた。
「すごい進歩!」数年前が嘘のよう!
竜神の玉稜線に出てからは、くっきりとした縦走路。目を瞑っても歩いていける。途中の竜神の玉で手を合わせ、馬の背に降りたった。
13:50 cnt.1430m 馬の背に着く。風がひどくって、けっこう寒い。誰も頂上に行こうとは言い出さない。
だけど、札幌から走ってきて、ピークに立たずに帰るのも何でしょ!
「あと15分くらいだ、行くぞ!」
すでに7時間以上歩いている身には辛い登りだ。ほんと普通なら15分程の道のりを20分以上かかるくらいのスピードでしか歩けない。とにかく私の脚は上がらない!
いま歩いている登山道は、国境稜線として網走と根室を分けている。天気予報の通り、網走管内の天気はいいみたい。
社ピークに上がる頃、雲の上に出たらしく、眼下には雲海が広がりその上はご褒美のような青空となっていた。本峰まではあと少し。
14:13 斜里岳(1547m)に着いた。パンケニワナイ川を遡っているときとは大違いの青空。
「ほら、やっぱ頂上まで登ってよかったでしょ!」
20分ほど休んで後は夏道(旧道)を降るだけ。夏道側は網走管内だからかいいお天気。
沢靴の私達はジャブジャブと沢の中を歩いていく。でも私ったら、一昨年に沢を歩いたっきりで脚力がそうとう弱っているらしく、下山を始めた頃から両膝が痛い。
それでも、最年少のN君と一緒に、私は涼しい顔をして降っていく。
「若者はいいねぇ〜!」これからどんどん技術を磨いて先頭を歩くようになっていくんでしょう。


それにしてもいつも思う。この山が登山ガイド本では「初級」となっているのだから不思議としか言いようがない。この旧道は登りで使っても、降りで使っても登山道としてのグレードは高い。
そして地元の山を悪くは言いたくはないが、初級なら初級で登れるように、FIXロープや鎖を適切に設置する必要があるのではないかと思うし、登山道表示なんかは、降りでもわかりやすく表示する必要があるのではないだろうか?
「FIXロープがなきゃ登れない奴は来るな!」とか「下山は旧道禁止」って言うのならそれでもいいけど、違うでしょ!
〈夏道の詳細は私が書くまでもないので割愛〉

17:00 旧登山口に到着した。やっぱり私にはここが登山口としてしっくりとくる。
あとは清岳荘まで取ってつけたような登山道を歩いて終了です。
みんな満足いっぱいのいい顔です。
よ〜し、車の回収して、温泉入って、ビールだ!
***久しぶりにパンケニワナイ川に来て***
ほんとまるまる2年も沢を歩いていなかった。というか夏尾根もそれほど歩いてはいなかったのだから、体力と沢のバランスが心配だった。
だけど身に着いた感覚ってのはそう簡単にはなくならないらしく、身体はちゃんと動いてくれるし、飛び石を駆けるように渡っていくバランスなんて、2年のブランクなどなんのそのって感じ!
「あ〜良かった。」まだまだ歩ける。
それと、大滝を避けて・1452に向かったのは正しかったのか?というと、どうだったのかなぁ〜?
帰ってきてから前の記録を見てみると、その時だって雪渓の遥か上に滝の落ち口があるではないか。雪渓を詰め、擂鉢地形の途中にあるバンドを登って滝を簡単に超えたのだった。ところが今回はガスが濃く、擂鉢の途中にあるバンドやベルクシュルントを確認することも出来なかった。

結果的には良かったかな? ガスで確認もできないまま、雪渓に入っていき、シュルントに落ちたりなんかしたら目も当てられないモノね!
それともう一つ、斜里岳は私の一族のピラミッド。竜神の玉と本峰標識に手を合わせることができた。

お盆に、斜里岳好きの亡き父や叔父に会うことができた。これも成果の一つです。
***一緒に登った仲間***
pioletチーム marbo、sato、aya
K山岳会チーム muraさん、nagai君

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