広瀬正『マイナス・ゼロ』
素晴らしすぎて、どうしよう。
今まで幾度も書いてきたけど、日本人の書くSFというものが、どうしても苦手だった。
まして、舞台が日本であり、しかもタイムトラベル物、
面白いなんてことあるわけない、正直そう思って読み始めた。
時代は戦時中から現代にかけて。戦時中の知識が希薄なわたしが、果たして楽しむことができるのだろうか・・・
中盤に差し掛かるまで、この不安が頭のどこかにあったことは確かだ。
しかし、気づけば、もう、
物語に夢中。
日本とSF世界が、ここまで見事に融合された作品が、他にあるだろうか。
タイム・パラドックスの問題は、可能性を考えだしたら無限に存在する。
その中で、この結末を導き出すとは・・・
本当、素晴らしすぎて、どうしよう。
直木賞にも候補として挙げられていたらしい(特に司馬遼太郎さんはこの作品を最も高く評価したそうだ)。
確かに、賞を取るにはいささかエンターテインメント性が高すぎるかもしれない。
しかしこれは、正に『記録ではなく記憶に残る作品』である。
とにかく、おもしろい。
わたしはこの作品を読みながら、おばあちゃんがよく話してくれた戦時中の話を同時に思い出していた。
大正・昭和。
おばあちゃんっ子だったわたしは、年齢の割には昭和に価値観が傾倒しがちである。
そのアナログなイメージを持つ時代と、タイムマシン。
どこか懐古的な世界観が、更にわたしを夢中にさせたのであろう。
世界系の漫画やアニメが好きだと言う人は、次の作品を見つける前に、
まずはこの作品を読んでみてほしい。
活字のみで、ここまでのエンターテインメント。
複線回収も御見事。
そして全てを例えるならば、
ゴールドエクスペリエンス・レクイエム。
なんてことだ、わたしの中で、バック・トゥ・ザ・フューチャーに並んでしまった・・・!!!

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