バンコクに住んで日常、目にしたり体験したこの国の音楽事情/情報の覚え書きです。
ルークトゥンからT-Popsまで幅広く。
但し、守備範囲は私個人の好みに合わせますので、アシカラズ。
2005/6/9
古いシリポーンのカセットから。。ピアノのお母さんという風情?
夜、知人を迎えにドムアン空港にタクシーを走らせる。今日は一人なので、運転手の隣の助手席に座る。カー・ラジオからはパラポンが流れている。
で、何時ものように、『運転手さん、何処の出身?』とやってみる。『知ってるかなー、スリンってとこなんだけど。。。』と返ってくる。すかさず『象祭りやるとこでしょ!?』と言うと、『そう、そう、良く知っているね。イサーンさ。』と少し恥ずかしそうに顔をほころばせる。で、ひととおり、カオニヨウがどうした、ソムタムがアーだと、イサーン礼賛をした後で、『イサーンの人はルークトゥン好きでしょ?なのに。。。』とラジオを指差すと。。。ゴチャゴチャと箱の中から1本のカセットを取り出し、『これ、聴いてみる?』と。。『誰かな。。?』。。『シリポーン』一言いってガチャ!と差し込まれたカセットから、また随分古臭いバック・サウンドに乗って、十年一日変わらない、シリポーンのかすれ声が流れ始めた。『これ、シリポーンの古いやつかな?』と聞くと、『アー、モーラムだけど。。』と肯定のリアクション。シリポーンを聞く最高のシチュエーションが、これで出来上がった。日本人が一人で聞く時の10倍良い状況。更に、『やっぱ、こんなの聴いている時って、田舎を思い出すのかな。。。?』と聞くと。。さあ、このスリン出身の運転手、もう、遠くを見つめる目になっちゃっいました。多分、彼の頭の中を、田舎の風景、親の顔、兄弟、友達の顔、昔の思い出が駆け巡っている事でしょう。望郷の念と言うやつか。。。私にはそんな望郷の念というの在るんだろうか。。。
そんな事話しているうちに、車はドメスティックを通り越して、インターナショナル・ターミナルの方まで行ってしまった。『ドメスティックって言ったでしょ!』と言いかけて、『マイ ペン ラーイ。そのまま、ドメの方へ戻って。』と言う私でありました。。。

さてさて、RSのSiSが新しいの出した訳ですけど、SiSの事、ろくに知らない私にしても、この3人姉妹が今、どの辺に位置しているかは大体、解ります。とりわけ、先のTongのRS移籍後のCDで1曲、競演したSiSの姉さんPianoのゴスペル歌唱が一部注目を浴びていますが、今度のこの新譜の中にも、タイ・ポップス・バラ−ドに混じって、ゴスペル・バラードもチャンと入っています。ここではアメリカ黒人がよくやる、複数の声(歌手)を揃えて置いて歌い継ぎながら展開する手法を用いています。ゴスペル風(いまならR&Bってかな)、というワールドワイドな王道路線も視野に入れているという事でよね。
しかし、驚いた事は、『อสงไขย』なる歌が、ルークトゥン・メロディーで歌われている事です。“ポップ歌手が
ルークトゥンを歌う時”と題して、気にしてきた私ですが、またまた、新たな驚きに出っくわした事になります。しかも、アプローチの仕方が、これまでの誰とも違う。ルーツ・ミュージックとしてゴスペルを拠り所にするが如く、ルークトゥンを拠り所にしていると言えないでしょうか。アプローチの仕方に、チャンと筋が通っているので、出来具合が非常に自然な感じと言うか、はまっています。(止まれ!勿論、ポップ畑内で制作されたモノですから、いわゆるホンモノ?とは違う音ですけど。。)これには、パチパチと拍手を送らねば。。
ワールドワイドな王道路線も視野に入れている。。。即ち、外を向いているようなこのSiSが、内側もチャンと見据えているという事に、驚くというか、面白いなぁーと思うわけです。

0
1 | 《前のページ | 次のページ》