<その4>
これも偶然のお話です。
9月のある日、一人のご老人がフラフラ工場にやってきました。
よく見ると自宅の近所の鉄骨建築業のおやじ(社長)さんです。
昭和45年に親父が自宅隣に60坪程の工場を建てて創業、
それからコツコツ?と増築を重ねて180坪ほどになって、
今年8月に新しい工場に移転したんです。
その創業当時に工場を建ててくれたのが近所の鉄骨屋さんだったんです。
おやじさんのお子さんと年が近くて子供の頃よく遊びに行ってました。
ちょっとこわいおやじさんで、背が高くハイジのお爺さんのイメージです。
80歳近くでちょっと足が不自由です。
そんな鉄骨屋のおやじさんが、現場口から左足を引きずりながら入ってみえました。
普段、あまり話しもしないので突然の訪問にビックリしました。
事務所に座りお話をうかがうと、
「この工場もオレが建てたんだぞ!」
「えぇぇぇぁ〜 ホントですかぁ!!」
図面には近所のゼネコンさんの名前が入っていたのは覚えていたのですが、
鉄骨工事はこのおやじさんが引き受けたそうです。
「この建物を、お前が使ってくれて嬉しいがや。」
「せっかく建てた無くなってしまうのかと思った。」
「自分の建てた建物が無くなるのが一番淋しい。」
「残ったにせよ、見ず知らずの人が使うより、知っている人に使ってもらいたい。」
「ここにお前の会社が入ったのは縁だ。」
「いくら頑張っても、縁も運もつかめない人もいる。」
「そこそこなのに、上手く行ってしまうヤツもいる。」
「この差は、縁の差だ。」
「お前には徳があるということだ。」
「先祖代々の積み重ねだ。感謝しろよ。わっはっはー。」
私に徳があるかどうかは?だが、
おやじさんの若い頃の話しなど久しぶりにおもしろい話しをうかがった。

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