★ 星の話題や旅の話などの日記風ブログです ★
ブログ開設2010年3月
By HIRAI Sapporo, Hokkaido, Japan
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2022/4/23 6:00
今回の記事は、札幌市青少年科学館で育成している現役天文指導員さん達がこのブログを見ていることも意識し、自主研修用の参考資料も兼ねて書くことにします。
あれもこれも欲張って書こうとしたら、長文になってしまいました。ご容赦ください。
私は SkySafari という星図アプリケーションを使っています。無料版と有料版があり、私は有料版を使っています。
(C)SkySafari
これは、SkySafari アプリで表示されたベガ付近の詳しい様子です。星々がスペクトル別に様々な色で表示されています。
右上が「こと座のベガ」。中央やや下の赤い星が下表にも掲載した「HK Lyr」という変光星です。変光星の命名法は下記参照のこと。
また、「Lyr」は星座名の3文字略号で「こと座」のことです。詳細は2022年版の天文年鑑328ページから330ページを参照。
SkySafari アプリではどうやら、色指数が+3以上の恒星が真紅で表示されているようです。色指数がプラスになればなるほど赤っぽく、マイナスになればなるほど青白さが増します。色指数の詳しい説明は後述します。
ちなみに、2022年版の天文年鑑332ページから336ページに3.3等級よりも明るい232個の恒星一覧表が掲載されています。
オリオン座のベテルギュース「α Ori」の色指数は+1.85、太陽は+0.65、おとめ座のスピカ「α Vir」は−0.23です。

この一覧表には、 SkySafari の星図表示を丹念に見て、赤緯が−20度以北で概ね7等級よりも明るく、色指数が+3以上の恒星を選んであり、それにガーネット・スターを加え、SkySafari の恒星データで作った表です。
一番赤っぽく見やすい恒星は「R Lep=うさぎ座R」という変光星でした。うさぎだけに目が赤い。(笑)
なお、R Lepは SkySafari によると光度が5.5等級から11.7等級まで光度が大幅に変わるミラ型変光星です。2022年版の天文年鑑204ページの極大予報によれば、2022年の R Lep 極大日は1月13日となっています。(ミラ型の極大日は大幅にズレることがよくあります。)
周期は416日ですから1年2か月前後の2023年2月から4月頃だと6等級前後の R Lep を見ることができるはずです。
実際に見た事例として、ブログ記事 【 赤い恒星の色比べ 】に R Lep の画像を掲載してあります。
それでは、実際に望遠鏡を使い、赤っぽい星を観察する場合のことを考えてみます。
札幌市が行っている移動天文台という事業に使っている口径10cmの望遠鏡だと、計算上は裸眼よりも5.8等級暗い星が見えます。(詳しくは2022年版の天文年鑑361ページを参照)
星の色がよくわかるのは裸眼だと1等星ぐらいの明るい星です。2等星よりも暗いと少し厳しい感じがします。
口径10cmの望遠鏡は裸眼より5.8等級暗い星が見える訳ですから、1+5.8=6.8等級の星が口径10cmの望遠鏡ではあたかも1等星のような明るさで見えることになります。
という理由で、上の一覧表には色の違いが認識しやすい概ね7等級よりも明るい恒星を選んであります。(星図を見ながら赤く表示された恒星を1個1個を確認しながら一覧表に記載したので、もしかしたら7等級よりも明るい恒星の記載漏れがあるかもしれません)
明るい赤っぽい恒星で、お勧めなのが「りょうけん座のラ・スパーバ Y CVn 」です。
赤っぽい恒星の殆どは変光星で、そのうち「ラ・スパーバ」は、比較的明るく、赤緯が北寄りなので北半球の私達からは見やすいはずです。
(C)AAVSO
中心が「ラ・スパーバ」です。
アメリカ変光星観測者協会のサイトで星図を作成しておきました。赤い円は移動天文台用口径10cm屈折のファインダーに合わせ8度の視野円を示し、北を上にしています。
なお、コル・カロリからラ・スパーバまで7.4度ほど離れています。
スターホッピングの手法で、導入に挑戦してみてくださいね。なお、少しピントをぼかすと星の色が分かりやすくなります。
91470773T
口径15cm屈折望遠鏡を使い、合成焦点距離3540mmでコリメート撮影したラ・スパーバです。
なお、色がわかりやすいよう、合焦位置よりも5mm内側のピント位置、色温度4500Kで撮影しました。色温度5500Kで撮影すべきだったかも。
【色指数】
色指数というのは、天体の明るさ(等級)を2種類の異なる色フィルターを使って測光し、その等級の差をとることで得られる指標です。
この測光には、主に紫外域の光を透過するUバンドフィルター、主に青色を透過するBバンドフィルター、緑色から黄色の波長域を透過するVバンドフィルターなどで測光します。
このBバンドとVバンドの等級の差を B-V 色指数と呼び、SkySafari では B-V 色指数の数値を表示しているようです。
色指数は、波長が短いバンドでの等級から波長の長いバンドでの等級を差し引きます。
色指数の値が小さいほどその天体は青白さが増す(または温度が高い)ことを示します。
逆に色指数の値が大きいほどその天体は赤さが増す(または温度が低い)ことを示します。
【変光星の命名法】
星座ごとに次の方法で命名します。
固有のギリシャ文字名のあるものはそのまま使用。
1番目から9番目: R, S,‥‥ Z
10番目から54番目: RR, RS, ‥‥, RZ, SS, ST,‥‥, SZ, TT, TU, ‥‥, ZZ
55番目から334番目: AA, AB,‥‥, AZ, BB, BC, ‥‥, PZ, QQ, ‥‥, QZ(Jという文字だけは不使用)
335番目以降: V335, V336, ‥‥
※ なぜ、Rから命名したのかは面白い経緯があります。
また、Jという文字が不使用になった経緯は謎のようです。
天文の世界では数字の「1」とアルファベットの「I」が間違いやすいので、アルファベットの「I」を使わないことがよくあるのですが、アルファベットの「I」とアルファベットの「J」を間違えたのでしょうかね?
(出典:https://www.aavso.org/naming-variables)
2022/4/21 6:00
プルケリマ( Pulcherrima )とは「最も美しいもの」という意味のラテン語で、うしかい座の有名な二重星の名称です。
しかし、有名な二重星とはいえ、主星と伴星の等級差が2等級ほどあり近接していることから、口径6cm以上の望遠鏡を使い100倍以上の倍率でないと分離が難しいですし、大気の揺れが穏やかで、ある程度の口径の大きさがないと、その美しさが十分に感じられないようです。
4月17日(日)の夜は大気の揺れが比較的少なめで、著名な二重星を観望。
口径15cm屈折望遠鏡を使い200倍で見るプルケリマは綺麗に分離。色の対比も見事でした。
iP220418
スマホで撮影したプルケリマです。
10枚ほどマニュアル撮影した静止画のうち、大気の揺れの影響が最も少ない画像を1枚選び、北を上にして掲載。
主星は金色、伴星は水色っぽく見えました。
主星の周囲に4重ほど見えるジフラクションリングがキラキラと輝き、一部が画像に写っています。
画像よりも眼視で見るプルケリマのほうが遥かに綺麗です。
SkySafari というアプリケーションのデータによれば、主星は2.5等級、伴星は4.8等級、離角は2.9秒角です。
iP220415
撮影の様子です。
自作のスマホ用コリメートアダプターを使い撮影しました。
最近のスマホは内蔵カメラが高性能です。
スマホ用のコリメート用アダプターも市販されていて、マニュアル撮影できるスマホであれば、明るい二重星を簡単に写せる時代になりました。
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