ハイG(ゲー)って音がある。
Gとはドイツ語読みの音階でソのこと。それのハイだから、五線譜の上に4本足して9線譜のてっぺんの音、つまり、おっそろしく高い音だ。
最初にこの音と出会ったのは十数年前、ロンドンで「ジーザス・クライスト・スーパースター」を観た時。ジーザスが「ゲッセマセ」と言うナンバーの中で“See how I die ”の“die”をこれで歌っていた。
しかも、とてつもないロングトーンで。
この時自分は四季でルフウをやってて、四十代バリバリだった頃。
だが、逆立ちしたって出なかった。
二度目はその十四年後、「リトルマーメイド」で蟹のセバスチャンが歌う“Under the sea”。
黒人の俳優が「なぁ元唄ってなんやった?」いうぐらいフェイクしまくり、間奏のダンス後に五線譜の「ソ」からグリッサンドして九線譜の「ソ」へシャウト、そのままブレスもせずに♪「アンダー・ザ・スィー!」;しつこいようだがオクターブ上の♪「ソファミ♭ド」とやるのだ。
一番“低い”音がハイC(ツェー)だぜ!
もうひっくり返ったよ。(2分53秒あたり)
https://www.youtube.com/watch?v=2DUXVAg7oWg
で、また、挑戦してみたら・・・出る・・・時もあった。
だが、力が要る。顔真っ赤にして、腹筋、顔筋、舌筋総動員で、やっとこさ。で、出ないときはかすりもしない。
とてもじゃないが、売り物にはなんなかった。
これが57才の時。
当時の限界はハイF、つまり九線譜のファ、あと半音が届かんのじゃよ。
ところが、昨日やったら・・・
えっ!?
さらっと出た、なーんにも力要らずに。
しかも、あの黒人と同じように九線譜フェイク、シャウトしまくれる。
げげげ・・・!?な、なんで!!??
あ・・・あれか・・・!!
今取り組んでる「軟口蓋おっぴろげ一点豪華主義発声」や。
詳しくは企業秘密やけど、この「一点豪華」ってのがポイント。
顔筋、首筋、腹筋を総動員して、ある場所をピンポイント攻撃するのだ。
こ、これか、先生が言うてはったんは・・・!
おっちゃん、腹は出てるけど、脂肪やない。
ウソ・・・脂肪。
けど、表層3ミリ・・・7ミリや思う。(増えてるやん!)
おっちゃんの腹触ってみると、プッチンプリンみたいに揺れるが、一瞬でコチコチになる。
知らんうちに付いとったんよ、インナーマッスル、歌筋が。
六つに割れる腹筋は縮める筋肉、歌腹筋は伸ばす筋肉やねん。
43才で手も足も出えへんかったハイGが60才でさらっと出せる。
ご同輩、「もう、年や・・・」なんて思たらあかんで!
要は技術と鍛練や。
昨日思った。「おれは70過ぎてもキツネはやれる!」
「ピノキオ」じゃ栄治と秘密特訓やった。
次回作じゃジェペット爺さん、福沢良一さんと公開特訓する。(開くな!)
良さんはタップの名手!その良さんが警察署長で私が会計監査官、悪徳国家公務員二人がソンドハイムの曲でタップを踊るのだ。
譜面を見たら、自分のソロパートは全然高くない。こいつをオクターブ上、九線譜で歌えば「行っちゃってる」感じで楽しい思うねん!
キツネコのときみたいに、今、あれこれ作戦練っとうで!
みんな、観に来てね!
わびさびパワー全開じゃ!!!
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神奈川芸術劇場3F稽古場本番前、栄治と。
(photo by Junichirou Nakano)


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