サンシャインクリスマスローズフェア、あの日は珍しくテレビを見てからの宿題、花に惚けてシャンテの学校へ行った。
奇特な方が私に招待券をくださったのだ。
会場では野田園芸のお兄ちゃんとも花郷園のお姉さんにも会え、楽しく談笑できた。
だけど、肝心のね、これは!っていうような花はなかったのよ・・・
そう、こいつ以外は・・・
純白の花びらに、まるで油絵の具を塗ったような、光沢のあるグリーン・リップ・ピコティ。
名前は「利休」っていうらしいが、おれにはグリーンの口紅を塗ったキャメロン・ディアスだった。
一体、どれだけの値が付くのだろう。
四国造園のハギさんが別ルートで手に入れたらしいが、販売するか、展示にとどめるか、迷っているよう。
さもありなん。
販売したらしたで、ドバイの富豪にしか買えないだろうし、展示にとどめたらとどめたで、アルカイダが強奪に来るかもしれない。
いずれにしても危険な花だ。
「脱法ヘレボ」として取り締まるしかないのか。
ああ・・・でも・・・欲しい・・・!
さて、昨日、「スタジオうもーりー」に行ってきた。今度はちゃんと宿題をやって。
百坪ほどの土地にログハウスとウッドデッキ、温室、庭、そこいら中にクリローたちが所せましと並んでいる。
電動自転車を1時間半こいでやってきたが、疲れはいっぺんに吹っ飛ぶ。もう、楽しいったらありゃしない。
その花楽園を二時間かけて選んだのが・・・
先ずはこれ。
ゴールド地に真紅のゴージャスベイン、なんと豪華な色合い、凛々しい立ち姿、しかも超がつくほどの丸弁。
雄しべが展開しているのにこの貞淑さ、さぞかし高貴な家柄に違いない。
まるで「オペラ座の怪人」のディーバ、カルロッタだ。
だとしたら、彼女の相手役、ウバルト・ピアンジは?
いた!
なんと艶やかなアプリコットのダブル。
キング・オブ・ハイツェー、張りのあるベルカントが聞こえてきそう。
ここまできたら、ヒロイン、クリスティーヌ・ダーエは・・・
ほおらここに!
同じアプリコットなのに、なんて清楚な・・・
そして、抱きしめたいほどの小輪。
「クリスティーヌ、君の赤いスカーフはどこへやった?」
その声は・・・
「・・・ラウルなのね!」
気品あるグリーン・ダブル・・・
じゃなくて、
「セミダブルなのね・・・」
それがまたいい。
一番花だから、ありがちな未成熟だが、その高貴なネクタリー・・・
ああ、ダブル伯爵、いや、ラウル侯爵!
その時だ、どこからか不気味な歌声が・・・
♪「私の宝物に 手を出すやつ 無礼な若造め 愚か者め・・・!」
さあ、皆さん。
お待たせしました!真打ち登場、
“The Phantom of the Opera”!!!!
まるで爬虫類のようなイボイボ、やけどの跡のようなベイン、これぞまさしく「ヘレボ座の怪人」!
以上、メインキャスト五名そろい踏み。
この豪華なラインナップ、果たしてギャラはおいくらに!?
「どうだい、大した花ないだろう?」
スタジオうもーりーの愉快なおじさんたちが聞く。
まるで、ディズニーアニメに出てきそうな二人組。
「ううん、凄く楽しい!!」
おいらは満面の笑みで応える。
「へえ、そうかい、えへへ、そう言ってもらえんのが一番うれしいよ」
「でも、この中から選ばなきゃ。チャリだし、全部は持ってけないもん」
「持ってきなよ、ぜんぶ。おれたちが車で運んでやるよ」
というわけで、おいらは手ぶらで帰ることに。
そして、この豪華キャストのギャラは・・・
なんと、研究生の発表会のようにお安かった。
その上、オマケまでくれたのだ。
そう、だって、ひとり大事なキャストを忘れてたでしょ?
私の劇団四季デビュー作、たった五日の稽古で出た「オペラ座の怪人」、おいらの役は舞台監督のブケー。
未成熟だけど、色合いがすごく気に入ってたやつ。
1円玉より小さいが、待ってろよ、植え替えて立派にしてやるから。
かくして、キャスト6人、なんとも楽しい舞台だった!

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