故大滝秀治さんの台本は書き込みで真っ黒だった・・・
そんな話に影響され、数年前から猿真似している。
おれの台本、「折れ」でいっぱい。
気分で喋るんじゃなくて、台詞の意図を明確にできるからだ。
「キャッチミー・・・」のロジャーさんもこれでうまく切り抜けた。
ソールさんも真っ黒けぇのけー、まさに完璧な役創りだった。
だが、ひとつだけ大きな問題があったのだ。
「折れ」が違(ちご)ててん・・・
的、外したんじゃよ。
ソールの登場、ラスティ役の耕史くんと二人きりシーン。
ここを先日、小池先生に修正してもらい、そして、一昨日、更に手を加えられた。
巨大な消しゴムでおれの台本、真っ白けぇにする・・・!
要求されたのはえぐい演技じゃなく、引退したカリスマ詐欺師の「枯れた演技」だ。
三国志「赤壁の戦い」のように、小池先生から何千、何万の「的を射る矢」が放たれる。
それがぶすぶすおれの「折れ」に突き刺さる。
しかし、全部が全部、的を射た指摘だから、オレは両手広げて刺されるがまま。
「動きは無駄なく、思いは強く、喋りさりげなく、意図明確に・・・」
うわっ、その上、枯れるんでっか!!??
理解一流、芝居は三流、あちゃこちゃでノッキングを起こす。
おっちゃんって、ステーキは結構得意だけど、お茶漬けが苦手なのね。
動き、タイミング、位置、方向、ニュアンス、サブテキスト、アクセント、こと細かく付けられ、身体の無意識の癖まで、ソールとロシア人とで矯正される。
たった2ページに2時間近くかかった・・・
例によって怒涛の集中力、必死で食らいつく。
強敵なんだけど、
一度に三つも四つも同時にこなさなきゃならんけど、
できなくてパニック起こしそうなんだけど・・・
でも・・・
楽しかった・・・!!
野村監督が言っている。
「『精いっぱいやった!』っていうのが稽古じゃない。できるようになるまでやるのが稽古だ」
還暦じじい、翌日、早起きして(いつものことやん・・・)部屋にこもり、先生から放たれた矢を一本ずつ、引き抜いていく。
そして、気づいた。
素直に、ストレートに、書いてあることを喋ればいい。
そして、どんなに枯れた、どんなに同時多発的演技でも、相手の台詞を聞いて、感じて反応しなくちゃいけない。
そう、シュートするには「パスをもらわなくちゃ」いけないのだ!
絶対サラサラにしまっせ、おれのお茶漬け!
♪
はるパパ、サーラサラ
修羅場で枯れた
重石(おーもし)さえ取ーれたら
断然素直


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