アメショのぎんちゃん(左)と、アメショ・ロシアンブルーのミックス;ミクシィはとっても仲が良い。
ま、正確には、ぎんちゃんはミクシィのことどうでも良くて、ミクシィが勝手に慕ってるだけなんだけどね。
あ、ねんのためふたりともオス・・・元オス・・・でも、「そっち系」って訳でもなさそう。
ぎんちゃんは猫のことあんまり眼中にはなくて、とにかく人が、それも知らない人が大好き。一番のお気に入りは郵便局の配達のお兄ちゃん。ピンポンが鳴ると一目散に玄関へ走る。
お兄ちゃんはお兄ちゃんで、慕われてるのを知ってか、呼び鈴を押すとすぐさま門扉を閉める。ドアを開けたとたんぎんちゃんが脱走するからだ。
だから、郵便物はいつも門扉の外から渡してくれる。
ぎんちゃんの一番の望みは、多分、お兄ちゃんと一緒に散歩することなんじゃないかな。
ぎんちゃんって、猫のくせに、散歩が大好き。
リードを付けて外に出すと、大喜び、チャッチャッチャと爪の音を立てながら歩き出す。
まるで犬みたい。
ま、決定的に違うのは、犬の散歩は人間に主導権があるが、猫のそれはあくまでお猫様優先。
人間は3歩下がって、ひたすら猫先生の後をついていくだけ。刺身のつま、カレーの福神漬け、たぬきうどんの天カス・・・なくちゃならんが、あくまで添え物、決して出しゃばっちゃいけない。
ぎんちゃんの最近のお散歩コースはうちから管理棟まで。
途中にエレベーターがあって、気が向くと乗りたがる。
乗って、振動を楽しんで、降りてまたチャッチャッチャっと歩き出す。
管理棟に到着すると、管理人のコームラさんに「にゃあ」と挨拶し、私の秘密の稽古場へ入る。「ピノキオ」、「愛の唄・・・」でダンス特訓したあの場所だ。
そこの鏡に姿を映し、ひとしきりバーレッスンをするが、あまりに猫背なんで、いつも途中で放り出す。(・・・)
そして、コームラさんに「どうもだにゃあ」と声をかけ、コームラさんはコームラさんで「いつでも、どうぞ」と、お見送りする。
ときにはご近所の奥様方や、掃除のおばちゃんたちに「きゃー、かわいい!」と取り囲まれるが、嫌がりもせず、気軽にサインに応じている。(・・・)
「ぎんちゃん、今度、遊びに来てよ!」
と、管理棟脇に住むヒノさんが声をかけると、「そのうちにゃぁ」と、適当に相槌を打つ。
が、しかし、こないだ、かみさんと散歩した時、本当にお邪魔して、お茶をご馳走になったらしい。
ま、猫舌なんでアイスだったらしいが・・・
ヒノさんのご主人は「猫って、こんなにひとなつこいんですね!」って、大感激したって話だ。
一方、ミクシィ、こちらは「自主散歩主義猫」。
ま、早い話が、脱走するんじゃよ。
広島の業者から通販で鳥獣被害防止フェンスを取り寄せ、半日かけて張り巡らしたが、ものの2秒で飛び越えやがった。(・・・)
柵をぴょんと飛び越え、出ていくんで、別名、ピョン吉。
朝一番で脱走して、公園猫の残りご飯を片付け、家に帰って正式朝食をいただくもんだから、どんどん太って、今や6キロ半。ちょっとした小型犬より大きい。
ぎんちゃんもうちに来たときは6キロを超えていたが、私と同じ甲状腺機能亢進症なんで(ふたりとも毎日チウラジールを飲んでる)ちょいと痩せて5キロちょっと。
ミクシィは大飯ぐらいのニキビ面した野球部員って感じだが、こいつがその巨体を揺らして、部活のぎんちゃん監督にすり寄る。
監督は全然相手にしてくれないが、高校生は一向にお構いなし。
ぎんちゃんが寝室にいてドアが閉まっていると、脱走から帰ってくるなり、「開けろぴょーーーーーん!」と、なんとも切ない声で鳴く。
この「ぴょーーーーん」があまりにも悲痛で抒情的で、霧の彼方の汽笛みたいに哀愁を帯びているもんだから、つい、ドアを開けてあげる。すると、一目散でぎんちゃんの隣にすり寄り、ゴロゴロ喉を鳴らすのだ。
なんで、これほどまでに野球部員は監督のことを慕うのだろう?
その秘密は二人のコンビ名にある。
ぎんちゃんとミクシィは「ホケンジョーズ」っていうユニットを組んでる。
ま、わたしが、勝手に決めただけなんだけど・・・
このふたり、実は三年前、保健所から保護したのだ。
もう一日遅かったら、散歩も脱走も天国でやってたことだろう。(・・・)
思うんだよね・・・冷たい保健所の牢獄で、心細くてしょーがないミクシィをぎんちゃんが、ヒノさんのご主人をうならせた、コームラさんを、掃除のおばちゃんたちを虜にした、あの世界一の天真爛漫さで励ましてたんじゃないのかなって・・・
「だいじょーぶだにゃあ。そのうち、なんとかなるにゃあ」
なんてね。
保健所からは7匹保護した。
五匹は里親さんを見つけたが、ふたりはなかなか縁がなく、そのまま我が家猫へ。
でも、きっと二人は神様が決めてくれたユニットなんだよ。
ホケンジョーズは玄関やら、玄関やら、玄関におしっこするけど(全部、玄関やん!)、いつか来るだろう解散の日まで・・・
それまではこのまま、ずっとコンビ組ませてあげようね!
「プーちゃん、仲間に入れてもらえんと」


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