「愛の唄を歌おう」東京千秋楽、これ以上はないってぐらい大騒ぎ、大賑わいで無事終了。
あんなに苦労した稽古・・・楽しい本番はあっという間。
シアターオーブを16回ぜーんぶ超満員で終えるなんて凄い!
さあ、大阪大千秋楽へ向けて出発だ!!
突然だけど・・・
自分って、一生懸命やる人が大好き。
それも、元気に、冗談言いながら頑張る人。
この楽屋じゃ、そんな仲間に恵まれた。
アンサンブルの若いみんな。
そして、おじさん仲間の栄治とマコリン。
ひとりよりふたり、ふたりより三人、パワーは百倍返しだ。
ひたむきにがんばる。
それは猫も同じ。
我が家は常識はずれの猫家族。
みんな個性的。
白黒猫、ためおくんにはいつも勇気づけられている。
彼にはセカンドネームがある。
「ニコラス」
決して、セント・ニコラスなんちゃらじゃなくて、映画俳優のニコラスケージからもらった。
「月の輝く夜に」って映画で、片腕の男を好演していたからだ。
ためおは交通事故で右目の視力がなく、尻尾と右脚が無い。
初めて家に連れてきたときは床を蛇のように這ってテーブルの下に逃げ込んだ。
ずっと引き籠っていたのに、気がつけば三本脚でひょこひょこ歩き始め、そしてある日、突如、ばばばーっとそのテーブルの上に飛び乗った。
愛猫家って、まず例外なく親バカ。
その瞬間、わたし、大泣き。
しかし、ためおの「社会復帰」はそんなもんじゃすまない。
なんと、走ったのだ。
ワン、ツー、スリー、ワンツースリー・・・三拍子を加速して、ものすごいスピード!
まるで、猫界のウサイン・ボルト。
部屋を、ベランダを、疾風のごとく駆け抜ける。
さらに、あの太い筋肉質の両手、左脚を使ってがぶり寄り、キャットタワーを怒涛のロッククライミング!
もう、目を見張る。
すげぇぞ、この猫・・・!!
「愛の唄を歌おう」東京千秋楽、カーテンコールを終え、楽屋はわきあいあいとお片付け。
「天使帽子はここに入れてください」
エノが指示する。
「おれって天使かな?」
天国看守役のはるパパが聞く。
「天使ですよ!」
マコリンが笑いながら答える。
ビール片手にお片付け、なんてオツなんだ。
ふと、携帯を覗く。
かみさんから何度も電話が入っている。
・・・
予感がした。
電話をする。
・・・
涙がボロボロこぼれ落ちた。
「だめでしたか・・・」
栄治が声をかけてくれる。
大晦日合宿をしたコバケン、エノ、マコリンが何事かと作業の手を止める。
電話を切った私は元気よく、お願いする。
「きみらが家に来たときはソファの下に隠れてたけど、うちのためおが・・・・さっき逝きました。どうか、みんなで見送って・・・」
最後は声にならなかった。
合宿五人組とビール缶を高く合わせ、ためおを見送り、急いで楽屋を後にする。
マコリンがポンと肩をたたいてくれた。
去年の10月ぐらいから突然食べなくなった。
ずっと、かみさんが愛情給餌で頑張らせた。
そのためおが12月24日に、一口だけだったけど、自分から食べた。
今にして思えば、あれはためおから私たちへのクリスマスプレゼントだったのかもしれない。
かみさんの話では昨日の12時をちょっと過ぎたあたりに旅立ったそうだ。
12時ちょっと過ぎ・・・
あの歌を歌ってるころだ・・・
♪ホーム、スィート、ホーム
いとしの我が家・・・
ためお、
ありがとう、我が家に来てくれて、
ありがとう、最高のクリスマスプレゼントを、
そして、ありがとう、たくさんの勇気を。
はるパパはきみを誇りに思います。
ためお、
大好きだよ!
2002年6月、亜門さん演出「太平洋序曲」NY公演直前、我が家にやって来て、
2014年1月21日、亜門さん演出「愛の唄を歌おう」東京千秋楽の日に・・・
治田・ニコラス・ためおは天使になりました。


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