いい休日だった。
結局、家から一歩も外に出ず、台本も開かず、発声も筋トレもせず、だらだら、どろどろ怠惰極まりなく過ごす。
録画しといた「半沢直樹」を見た。
おもしろいなぁ・・・芝居って・・・!
堺雅人さんが上司に詰め寄る長台詞、ここで彼は一度のまばたきもしなかった。
「羊たちの沈黙」、レクター博士役アンソニー・ホプキンスが淡々と語る長台詞でやはり、一度のまばたきもしなかった。(メイキングで見たのだが)監督から「カット!」の声がかかって、ようやくまばたきするのだが、緊張から解放され指で目を抑えている姿がとても印象的だった。この時の長台詞はレクター氏の異常さ、不気味さが浮き出、鬼気迫るものだった。
半沢の上司役、香川照行さんものらりくらりかわしながら、ここぞというときはまばたきをしない、まさに丁々発止と渡り合う。
故三木のり平さんは著書「パーッと行きましょう」の中で、こんなことをおっしゃっておられる。
「台詞(せりふ)っていうのは、役者同士が競い合って吐く言葉、『競り符』じゃないか・・・」
「ピノキオ」の中で、どうしても競れない箇所があった。
キツネがピノキオを言いくるめようとするのだが、その度におバカな猫が茶々を入れるシーン。
最初は、漫才のように一々どつくというプランだったのだが、あるとき、亜門さんが「猫の言葉にイラつくんだけど、ぐっと我慢して、最後に爆発してください」と、演出を変えてきたのだ。
これが、難しかった。イラつけないのだ。
何度やってもできない。
何故!?
卑怯なおじさん、しまいには、相手のせいにまでしてしまった。
で、あるとき、ふと、気が付いたのだ。
あ・・・
おれ、“次を言おう”としていない・・・!
このシーン、キツネは四言、台詞があって、四度、猫に茶々を入れられる。
おれはその茶々を「待っていた」のだ・・・
この四言、本来なら、一言の台詞で、その合間にたまたま茶々が入るもの。
だから、「急いて次を言おうと」してなくちゃならなかったのだ!
そのつもりでやったら、すんなりイラつけた。
なんで、こんな簡単なことに気が付かなかったんだろう・・・
ダメだねぇ・・・
実は、もう一か所、競れない台詞がある。
「半沢」を観ていて、ふと、あることを思いついた。
今日、早速やってみる。
故滝沢修さんは、
「台詞が自分の台詞として生まれ変わるのを待つ。自分がそうした感情になったとき初めてその台詞が出る」
そんなことを、本気でいつも考えていたそうだ。
ああ・・・
遠く及ばないけど、ちょっとずつ、おじさんも本気になんなきゃねぇ・・・
うちの近所の森。
こんな静かな心を持たなきゃ・・・


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