「アイラブ坊ちゃん」、幕が開いて二日、出来はどうなのでしょう。
やってる自分には分かりませんが、見た人の感想、そして、何より三度、四度のカーテンコールが物語っていると思います。
お客様は喜んでいらっしゃいます!
自分の演技的にはどうなのでしょう。
勿論まだまだ改善の余地ありではありますが、そんなに足を引っ張っていないようにも思います。
だとしたら、それはある助言のおかげです。
稽古後半、私はとある方から「野だいこが全ての黒幕に見える」という指摘を受けました。
で、即座にフットワークを軽くし、気配りを多用して改善に努めました。思い当たる節がないではなかったからです。
そして、稽古場最後の通し、私はその方に言われました。
「前よりは良くなっている。でも、まだ、『裏』が見える」と・・・
本来ならがくっと落ち込むところですが、助かったのは、どこのどの部分がどう見えるからダメなんだという「具体例」を挙げてもらえたことです。「大地の息吹きを感じないんだ・・・」みたいな、抽象的な指摘ほど迷惑なものはありません。役者は不安になるだけだからです。
そして、この方からいただいた最大の助言は、
「今でも悪くないのよ。でも、もっと良くなると思うから・・・」
だったのです。
どれだけ救われたでしょう・・・!
「役者殺すに刃物は要らぬ、『ダメだ』『ダメだ』を繰り返せ」
ってね。かつて、わたしはこれをやられ、本当にダメになったことがあります。
外人の演出家の凄いのは「褒め上手」なところです。
「オウ、グレイト!ファンタースティック!!」って乗せるだけ乗せておき、後で、「バット・・・」;「でも、ここはこうしてみようか」と巧みに変えていくんです。
こっちは褒められて、乗りに乗ってますからね、無い力まで出ちゃう。私思うに、一流の演出家って一流の‘催眠術師’なんですよ。
稽古場最後の通し後、「乗せられた」私は故三木のり平さんのDVD、とりわけ「社長シリーズ」を穴の開くほど見ました。
ここで三木さんは流行語にもなったほどの「パーッといきましょう!」の宴会部長をやっています。
三木さんって、あの「放浪紀」の演出家であるほど大物なのですが、この映画では実に「小物」を演じているんです。
良かれと思って書いたサブテキスト;「野だいこの生涯」、わたしはここで、いつの間にか大物になっていました。
切れるのも早いけど、反省も早い私。(笑)
早速、「猫の穴」に篭もり、これまでの芝居をアレンジしていきました。二ヶ月近く、「裏大物」で作った芝居でしたからね、初めはかなりのノッキングを起こしました。
「こんなん、もう無理やわぁ」とも思いました。
しかし、何度も何度も繰り返していくうち、次第に腑に落ちていったのです。
今、本番の舞台を小物の目で見ているのですが、以前とは全く違う景色が見えます。不思議ですねぇ・・・
まだ時折、大物目線になっちゃいますが、すぐに白血球がガンを駆逐しようと働きます。
私って生意気だから、すぐにブーたれちゃいますが、それでも信頼している人に対しては聞く耳を持っています。
人間が出来てないから、腹立ててガス抜きする悪いくせはありますが、反面、全力で取り組む良いくせもあります。(自分で言うな!)
良いものを創るのは戦いです。怒った振りして手を抜かない。そのほうが変化できると思うのです。
音楽座さんには感謝しています。
8月29日、本読みのときにあの方が言ったことを思い出します。
「悪意があって言うんじゃない。良くしようと思って言うんです」
ありがとうございます。
今後とも、腹蔵ないご意見を、(小心者なんで・・・)
一回だけ褒めといて(笑)、
どうぞよろしくお願いいたします。
家へ来て四年。まだ一度も触ったことの無いモモちゃん。
でも、いい子だよ!
二幕冒頭でお面売りをやってる新人俳優がいるんですが、彼は初めて稽古で見たとき、全く声が前に飛びませんでした。
で、私は「北半球で喋ってごらん」と、アドバイスしたのです。
鼻を通る線を赤道だとすると、彼は南半球、つまり、喉で喋っていたのです。私は、目、おでこ部分で発声してごらんと言いました。
一ヵ月後、舞台稽古でモニターから聞いた彼の声は全く別人でした。
「良くなってるよ」
私は彼を褒めました。すると、彼は誇らしげに言ったのです。
「北半球で喋っています!」
大事ですね、聞く耳って・・・

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