名古屋から豪雨で今にも止まりそうな新幹線を降りると、東京は秋でした。
涼しいを通り越して肌寒いぐらい、待ちに待ったこの皮膚感覚・・・
思い切り深呼吸して冷たい空気を吸い込むと、私は目的地への電車に乗り換えました。
名古屋はお世話になった方のお呼ばれです。
くだらない話に花を咲かせ、美味い酒を酌み交わしながら、色々相談にも乗ってもらいました。
そこへ突然電話で仕事の依頼、予定を変更し急遽帰京した次第です。
時代劇のお話でした。
現場へ行き、演出家や殺陣師の方とお話していくと、お二人の時代物に対する造詣の深さに驚き、実際に目の前でやっていただいた所作、立ち居振る舞いに目を見開きました。
以前、とある時代劇をやったとき、演出家の先生から、
「治田さん、この役は今のままの芝居でもいいけど、もし、別の役をやりたいなら、きちんと勉強しなくちゃいけない。
『なんちゃって時代劇』はすぐばれるんだよ」
と、言われたことがあります。
土曜時代劇撮影の時でも、所作の先生からいちいち刀さばき、着物さばきを教わりました。そこにはある種の機能美、様式美があるのです。いつかきちんと勉強したい、そう思った私にとってこの仕事は渡りに船でした。
秋のミュージカルと冬の時代劇、語呂もいいじゃありませんか!
日にちが近いのでかなりタイトなスケジュールになるでしょうが、今から準備すればなんとかなる、そう思ったものです。
しかし、思いもしない事態が待っていました。
役者って、プロである以上、ギャラは支払われるものです。
とことん芸を磨く、それがアマチュアと一線を画すところです。下世話な話、歌も踊りも教えを請うには金がかかります。しかし、それは自分への投資なのです。
お客様から木戸銭を頂戴するなら、真摯に稽古を重ね、投資した自分の芸を生かさなくてはなりません。
ですから、当然報酬を貰う権利があります。
農民が土を選び育てた野菜を売り、漁民が船に乗り釣った魚を金に替える、それと何ら変わりはないのです。
しかし、「役」っていうのは・・・ギャラの高低じゃない・・・それもまた事実です。面白い役、やりがいのある役、難しいけれど絶対に勉強になる役、それをやれるのなら多少報酬が低かろうが構わない、それが役者の心意気ってものです。
しかし、この冬の時代劇は・・・
台本を読んでいて、本そのものは面白いのですけれど、なんだか無性に悲しくなりました。
自分は、昔はともかく今は、謙虚な役者だと思います。
(こういうこと書くのが不遜なんですけど、それはまあ、ちょっと大目に見てください)
たとえ小さな役でも腐らず、膨らまそうとする、そんな役者だと思います。でも、これは・・・
「え・・・!?なんで、おれなの・・・???」
瞬間湯沸かし器ですから、頭の血管がプチっと音を立てて切れました。宮崎に続いて、今年二度目です。
(あ・・・三度目です・・・CTはまだ撮ってません・・・(笑)
即座にお断りの電話を入れました。
ダメですよね・・・人間が出来てないから・・・
蚤の器なんです。
演出家の先生と殺陣師の方には本当に申し訳ない思いでいっぱいです。お二人からたくさん学びたかった。
しかし、殺伐とした気持ちで稽古場に行くのはとても失礼です。
いつか、ご一緒できることを願って勉強を続けるつもりです。
ご無礼、どうぞ、お許しください!

(Photo by Mrs.Showshank)
カルガモ親子が全員、新しい水場へ引っ越しました。
「親子水入らず」、でも、「親子水いります」ですからね。
木陰のある、昆虫や小魚のいる池であることを祈ります。
そして、大きくなったら、今度は涼しい春にでもまた帰ってきてね!

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