「治田さん、オーラを消してください」
4月29日、初の通し稽古の後、演出家にいただいた私へのダメ出しである。
アルカポネ(松平健)が、カポネに成りすましたジミー(私)に対して「オーラゼロ、蚊だ!」と、怒る場面がある。
そのときの私の芝居が、
「オーラありすぎ」
なのだそうだ。
「あ・・・」
このダメ出し・・・
思い当たる節がある。それもたくさん・・・
二年間、正しい発声を勉強してきたものだから、いくら大声を出しても枯れない。
むしろ、息の「当て何処」さえちゃんとしてれば気持ち良いほど出る。
だもんで、つい調子に乗って、共演者にも「良い声ですねぇ」なんて褒められたものだから、つい、その気になって、バカ声を張り上げていた。
あれじゃあ、「蚊」どころか「スズメバチ」である。
演出家はもっと「普通に」との注文を出した。
頭の中で突如、言葉が渦を巻く。
普通に・・・ふつうに・・・フツウニ・・・
ああ・・・
なんだろう、「普通」って!!??
「わからないっちーの!」
しかし、悩んでる暇はない。
原点に戻らなくては。
ジミーは善良で、子供思いの優しいパパなのだ。
先ずは声量を抑えよう。
文句は垂れるくせに聞く耳は持つはるパパ。
(自分で言うな!)
早速、台本に書き込んだ。
「オーラを消す」
翌日は稽古休み、翌々日は衣装合わせ、私は二日間「猫の穴」に閉じこもった。
とにかく細い、消え入りそうな、小さな声で喋る。
大きな声より楽そうだが、実は、二年前のソフトヴォーチェと同じで、フォルテシモの声よりはるかに難しい。
ただぼそぼそっとつぶやくだけでは客席に届かないからだ。
消えそうで、でも芯のある、口跡(言葉の明瞭さ)良い声でなくてはならない。
私は「反逆児」の平(幹二郎)さんを思い浮かべた。
平さんはどんな小さな声のときも言葉に思いを込めていた。
ひとり、部屋に閉じこもった私は小さな声で、大きな思いを必死に伝えた。
耐震構造の腹筋がぶるぶる震える。
ピアニシモ・マグニチュード9.9だ。
「猫の部屋」はフォルテシモのときよりうんと熱気に満ちた。
「失礼なダメ出ししちゃって」
衣装合わせのときに、若い演出家が私に言う。
オーラを消せという言い方に恐縮したのだろう。
「とんでもない!」
私は言った。彼の指摘は全くもって的を射てるからだ。
自分で書いた本であるだけに、彼の演出は的確である。
私は彼を信頼している。
家に帰った私は再びオーラを消しにかかった。
満を持して臨んだ昨日の稽古、オバマ大統領の「チェンジ」よりもうんと変革したジミー・マローン。(ほんまかいな!)
初めの内こそなかなか気持ちが入らず、相手役とも空回りしていたが、二日間、汗をかいた自分を信じて、ひたすら集中した。
「優しいお父さんって感じしたよ」
栗ちゃんに言われた。
演出家は、
「治田さん、それです」
ブタもおだてりゃ木に登る。
まだまだ課題はあるがベースはできた。
慢心することなく、いっぱい汗をかこう。
今日も猫の穴で!
「猫もスリスリしたら、ぐるぐる言うっちーの!」
「アンタッチャブル」
シアター1010で追加公演あります。
6月15日1時半、6時半
16日1時半
こちらもチケット受付中!
http://star.ap.teacup.com/harupapa/1317.html#comment
稽古場最寄り駅の魚屋、「魚寅」。
ここのタコぶつが安くて美味い!


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