先日、何気にTVを見ておりましたら、17才の少女がトライアスロンに挑戦するという話題を取り上げていました。
トライアスロン・・・こないだブログで書きましたトリコロール(;tricolor:tri;三つ、color;色)のようにTRIは3を表します。
例えば英語のthree、フランス語のtrois、トリオtrio、三角形のtriangleトライアングル・・・
すると、トライアスロン;triathlonは三つのアスロンということになりますね。
では、このアスロンって何でしょう?
その語源ATHLは「運動」を表します。
アスリート:athlete運動選手、アスレチックジムのアスレチックatheleticといった具合です。
トライアスロン、つまりは「三つの運動」;(水泳、自転車、マラソン)です。
この競技の過酷さはその距離にあります。
水泳3・8キロ、自転車180キロ、そしてフルマラソン42・195キロ、まさに気の遠くなるような鉄人レースです。
さて、話が横道にずれてしまいましたが、少女がトライするのはこの規模を縮小したオリンピック・ディスタンス(水泳1.5km・自転車40km・マラソン10km)です。
それでも大変なディスタンス(距離)に変わりはありませんが、ちゃんと鍛錬すれば決して不可能ではない距離です。
では、何故これがテレビの話題として取り上げられたのでしょう?
まだ若い女の子だから?
いえ、若ければ、より成績を上げられるレースです。
性別は関係ありません。
では、何故・・・?
それは彼女が持つハンディが故でした。
彼女はリレーで渡る津軽海峡横断レースにも出場し、最初の年こそ途中棄権しましたが、15才になった翌年は見事やってのけました。
人々は彼女が挫折を味わいながらも鍛錬を積み、ハンディを克服したことに大いなる敬意を払ったのです。
立木早絵さん、17才。
2才の時、彼女は視力を失いました。
トライアスロン;三つの運動の中で(もちろんどれも付き添いがいます)盲目の彼女にとって最も過酷なのが自転車です。
先導の自転車が音を出して彼女をリードするのですが、直線ばかりではなくカーブも坂もある道程を40キロも走らなくてはなりません。
番組でも一人のタレントが目を瞑って自転車をこいでみましたが、ベルの音にリードされてるとはいえ、すぐにバランスを失い倒れてしまいました。
体力ばかりではなく、恐怖と戦う強い精神力、バランスをとる集中力も要求されるはずです。
しかし、その練習風景を見る限り、最初こそ失敗の連続でしたが、やがて彼女はすいすい自転車をこぎはじめたではありませんか。
そして、今では時速25キロ(普通にこいで10キロぐらい)で走れるのだそうです。
視覚を奪われた少女が1.5キロ泳いで、40キロこいで、10キロ走る。
前代未聞です。
しかし、彼女は平気でこう言いました。
「前例がなければ、自分が一番になればいい」
お恥ずかしい話、私はテレビの前でおいおい泣いていました。
前例がなければ自分が一番になればいい・・・
50過ぎたおじさんはどうでしょう?
僭越ながら、努力家を自負する私ではありますが、それでも、ちょっと辛い目にあうと、「これ以上できるはずがない」、「もう年なんだから」、「あきらめよう」なんて直ぐ思ってしまいます。
落ち込むスピードは日本一です。
それなのにこの子はどうでしょう。
前例がなければ自分が一番になればいい。
目からウロコです。
神の啓示にすら思えました。
早絵さんは言います。
「自分がこれだけ世間で取り上げられるのは、そして、いろんなことをやらせてもらえるのは『自分が盲目だから』です」
彼女は冷静に社会と自分をとらえています。
そして彼女はこう言い放ちました。
「やがて医学が進歩して、自分の目が見える日が来る」
・・・
目、口、耳、三つの能力から一つを奪われても、早絵さんはそれをいつか必ず取り返せると信じている;
盲目が「治る」。
この子にとって「不可能」は一切ないのです。
言葉にはその由来、語源が必ずあります。
ATHLは「運動」を表すと先ほど書きました。
ひょっとすると、その語源の語源はATHENS;アテネかもしれません。
アテネ、オリンピック発祥の地、ギリシャの首都です。
TRIは3を表す接頭語です。
この3という数字は、日本語に置いてもキーナンバーになります。
「3人寄れば文殊の知恵」「三択」「三顧の礼」・・・
私の職業であるミュージカルも三つの総合芸術です。
歌、ダンス、芝居。
3という数字は一見無秩序に見える世界に置いて、実は神様が決めた秘密の数値なのかもしれません。
一回や二回の失敗は挫折に値しない・・・もちろん三回目も・・・
三つの段階。
ホップ、ステップ、ジャンプ。
一つ一つが協力し、後押しして、より高まり、三つ目で始めて完結する。
その「3」が次のレベルでは「1」になり、また大いなる「3」を生み出す・・・
人生はその繰り返しなのかもしれません。
ピアノを弾き、歌も歌う早絵さん。
番組の中で「もし良かったら、歌ってほしい」と請われ、普通の子ならしり込みするところでしょうが、彼女は「ぜひ、やらせてください」と、言いました。
彼女が大好きな歌、その歌詞を聞いたとき、私は彼女の哲学を理解したのです。
♪人生なんて一瞬さ
命を燃やしてるかい
かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい
TRIは3を表す接頭語です。
ひょっとしてTRYの語源は?
三つの挫折、三つの粘り、三つの飛躍・・・
それがトライなのかもしれません。
「家猫にしてくれたお礼だっちーの!」


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