最近、ちょっと面白い出来事に遭遇しました。
なんだか、人生にも通じそうな事件なので、書いてみますね。
最初考えたタイトルは「無知の罪」;勉強不足の、いや、勉強をしていない花屋さんのお話です。
私のクリロー歴は3年になりますが、ここらへんにくると、好みは艶やか系より、渋系へ移っていくようです。
グリーンに紫系のバイカラー、それも八重咲きは人気で、ネットショップでも紹介されるそばから売れていきます。
数ある写真の中から「あ、いいな・・・!」と、思うやつは間違いなく値段も高く、そして、その下には「売り切れ」の文字が添えられ、「ああ、好きなものは皆同じなんだな・・・」と、つくづく思うしだいです。
さて、稽古場の近くに小洒落た花屋を見つけたもので、ひょっとして掘り出し物が・・・と、淡い期待を抱きながら入ってみました。
「クリスマスローズ八重咲き」
ありました。
店外の売り場にいくつか鉢が並べられています。
寒さにやられたのでしょうか、いくつかはしんなりと頭をたれています。
しかし、その値段に驚きました。
「1200円」
これは八重の値段ではありえません。
一重咲きの、しかも、まあ、言ってみれば「並の下」クラスの値段です。
そして、ある株を見て私はひっくり返ったのです。
なんということでしょう、「並の下」の中に、「上の特上;グリーン・紫・バイカラー」が凛と茎を立てているではありませんか!
しかも、鮮やかなカラス葉(濃い色の花につきものの黒っぽい葉)の茎がいくつも出ています。
これって「吉野家で牛丼を注文したら、魚沼産コシヒカリで炊いたご飯の上に松坂牛のすき焼きと名古屋コーチンの温泉卵が乗っていて、しかもきょうから百円引きの280円だった」みたいなものです!!(どんなんや!)
ネットショップに出したら、間違いなく「1万2千円」と「売り切れ」が添えられる逸品なのです。
私は株をつかむと、まるで万引きをした少年のように心臓をバクバクさせながらレジに向かいました。
「せんにひゃくえんっす」
私の興奮とは裏腹に、花屋の主人はあっさり売ってくれました。
・・・
こうなると、欲が出てくるのは人情です。
実は、あのしおれた花の中に、同じようなバイカラーがもう一鉢あったのです。
あれも良い株です。
グリーンは買ったやつよりも鮮やかで、蕾も沢山ついていますが、いかんせんヘナヘナです。
「水やりすぎちゃってねえ・・・」
主人は悪びれもせず言いました。
この花屋は日当たりが悪く、しかも、川のそばなので冷たい風が吹きさらしています。
このところの寒さでクリローたちも凍るくらいですから、水やりは控えなくてはなりません。
やるとしたら、天気の良い午前中が鉄則です。
しかし、(この店に来たのは夕方でしたが)鉢を見ると、ちょっと前に水やりしたようで、おまけに直接コンクリートの上に置かれてるではありませんか。
通風と温度調節のため「クリローの鉢は直接地面には置かない」は鉄則中の鉄則です。
もし、うちのクロードが見たら、間違いなく、
「こいつシロートだぜ!」
って、言うでしょう。
瀕死の王子と王女
「た、たすけて・・・」
どこかから声が聞こえました。
だ、だれ!?
「わたしよ、『ネットだったら売り切れちゃん』よ!」
(だれやねん!)
「なんとかして!」
ヘナヘナ・バイカラーが救いを求めています。
本来なら王女様として、人々の賞賛のまなざしの中で展示されるはずなのに・・・
私は瀕死の王女をむんずとつかむと、店主の元へ行きました。
「この子・・・もし、良かったら、引き取るけど・・・」
こんな状態で、客が買うとは思えず、結局、ゴミ箱に捨てられるのが落ちです。
私は訴えました。すると・・・
「あ、いっすよ」
店主はOKしました。
しかも、私の提示した値段を主人はあっさり受け入れたのです。
ネットなら1万円は軽くするのに、なんということでしょう・・・
五百円で買ったのです!
二日後、再生した王女
この話って、何をやるにしても、ちゃんとやりたいなら「知識」が要るという教訓です。
もし、ちゃんとした知識があの花屋にあれば、相応の儲けを得られたはずなのです。
私たち俳優もそうです。
きちんとした訓練を得て、「技」という「肉体の知識」があれば、より良い役が得られるのです。
今、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」に取り組んでいますが、去年学んだ知識がなければ、「鼻の頭から出す息」、「眉間から出す息」、「頭のてっぺんから出す息」の使い分けは出来なかったでしょう。
この「三つ息の流れ」と「分量」を微妙に配合させないと、この歌は歌えないのです。
勉強してて良かった・・・
つくづく思いました。
そして、もっと「知識」を磨かなくてはと・・・
改めて思ったのです。
千二百円王子と五百円王女は我が家で手厚い介護を受けました。
しおれた茎には支柱を当て、一晩、室内で静養させ、晴れた翌朝、根をほぐし、水はけの良い土で素焼きの鉢に植え替え、メネデール(植物界のリポビタンD)を処方しました。
すると、見る見る元気になっていくではありませんか。
いずれ、ふたりは仲良く幸せに花開くことでありましょう・・・
また、あの花屋、行こうっと。
だって、激安なんだもん!
知らないってのはいいねえ・・・(笑)

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