昨日はご近所寿司名人、スッシー家の結婚披露宴でした。
青山学院内にある式場はさながらウエディング・ミュージカル劇場と言った感でした。
ミセス・ショーシャンクのピアノ伴奏も絶品でしたし、手前味噌ではありますが、「なかなかお目にかかれない披露宴」になったようです。
しかし、なんといっても最大の功労者は新郎新婦でした。
お色直しの再入場用に9分間のミニ・ミュージカルを作ったのです。
「美女と野獣」のパロディで、花嫁はお色直しに行き、会場に残った新郎が謎の祝電を貰うところから始まります。
何通か本物の祝電を読んだ後、最後の一通を開けます。
「○○さん(新郎の名前)、わたしのこと覚えていますか?」
私が電文を読むと、「美女と野獣」の序曲がかかります。
ここで先ず、どかんとウケました。
まるで、新郎の昔の女から来たような導入です。
「変な電報送ってごめんなさい。でも、この物語、思い出してほしいのです・・・」
会場は怪しげでミステリアスな世界に入っていきます。
「むかし、遠い国の千葉県(新郎の出身地)にひとりのわがままな少年がいた・・・」
観客は耳をそばだてて聞いています。
「少年は物心つくと、祖父母の住む(実話)大阪へ遊びに行った。
タコ焼きが大好きだったのだ。
口の肥えた少年が食べるのは決まって渦潮にもまれた明石のタコ。瀬戸内のタコはほとんど少年が食い尽くしたと言っても過言ではない。」
すごくくだらない内容を私はすごくシリアスに読んでいきます。
「ある冬の夜、ひとりの老婆があまりの空腹に一口だけ食べさせてくれと、こいねがった。しかし、わがままな少年は、
『ばあちゃん、世の中、そない甘ないでえ。ま、青海苔やったらあげるわ』
と、マヨネーズまみれの口で冷たく突き放し、青海苔を老婆に差し出した。すると・・・
突如、瀬戸内の巨大な渦が老婆を巻き込み、激しい波しぶきと共に巨大なタコが海から現われた。老婆は明石のタコの化身だったのだ。タコは言った。
『にいちゃん、そらま確かに世の中、甘ないわなぁ。せやったら、にいちゃんが大人になって、結婚するとき、気ぃつけぇや。嫁はんがお色直しで退場したら、どやろ・・・
戻ってきまっしゃろか?おほほほほ!・・・」
新郎は花嫁を探しに会場を飛び出ます。
「・・・しかし、老婆の呪いを受けた少年はみにくいタコに姿を変えられたのだ。」
ネットで購入したと言う可愛いタコの被り物をして新郎が再び現われると、もう、やんやの大拍手です。
そして、このばかばかしい格好で真剣に苦悩する彼に向かって、私も真剣に歌います。
「♪哀れなやつめ このみにくさで あのひとにおもいよせる・・・」
笑いの渦でした。
「♪恥にまみれて もだえ苦しむ 見よ行く手には闇が待つ・・・」
新郎は「行く手」、新郎新婦席へとぼとぼと歩いていきます。
「・・・♪愛なしには生きてはいけぬ 燃ゆるおもい あのひとに捧ぐ」
空っぽの新婦席を、新郎がいとおしく撫でます。
およそ結婚式にはふさわしくないこの歌が、かくしてベストマッチになったのです。
そして、絶望の最中、タコの呪いが解け、振袖にお色直しした花嫁が「美女と野獣」のテーマ曲に乗って再登場します。
観客はもう大喜びです。
わたしは歌います。
「♪人の世は変わらずに 繰り返す 日は昇りまた沈む」
花嫁が新郎のタコの被り物を外し、無造作に真後ろへ放り投げると、ばかウケです。
「♪恋もまた 愚かさと寂しさと嬉しさの甘き香り」
ふたりは腕を組んで新郎新婦席に歩いていきます。
観客は拍手で迎えます。
「♪・・・落ちてゆく恋の淵へ 二つの心」
空っぽの新婦席に花嫁が戻りました。
二人はゆっくりと着席し、後奏に合わせて私は言います。
「おふたりさん、いつまでもずーっと、おしあわせに」
最後の音に合わせて二人は寄り添うポーズ。
終わり。
割れんばかりの大拍手でした。
そして、わたしが
「・・・ミュージカル、『美女とお色直し』でした」
と言った途端、会場は揺れたのです。
楽しい結婚式でした。
ピアノを弾いてくれたミセス・ショーシャンクも生き生きしていました。
来賓も、新郎新婦も、会場の従業員までも喜んでいました。
でも、一番喜んでくれたのはご両親のスッシー夫妻だったかもしれません。
実はこれが一番のねらいだったのです。
お二人にはずっとお世話になりっぱなしでしたからね。
「ここへ越してきてよかった」
心から私は思ったのでした。
さあ、明日からいよいよ「反逆児」立ち稽古。
今日は一日、台詞入れです!!
「♪恥にまみれて もだえ苦しむ・・・」
「反逆児」チケットは明日、私の手元に届きます。
今週中に発送します。今しばらくお待ちを!

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