
「彼女はきーれい…!」
二幕冒頭でグリュンネ伯爵が歌う小さなソロです。
実はこれ、ゾフィー内閣崩壊すら促す大変な閣僚問題発言なのです。
いくらゾフィー首相に強烈な鼻パンチをくらい、もうろうとした中で口走ったとは言え、よりによってライバル党首エリザベートを臆面もなく「きれい」などとは、閣内から辞任はおろから、更迭を突きつけられてもいた仕方のない大失言です。
では何故、グリュンネ伯爵はこんな問題発言を吐いたのでしょうか?
それは最初の出会い、バートイシュルまでさかのぼらなくてはなりません。
首相補佐官に任命されたグリュンネ伯爵はここで初めて少女エリザベートに遭遇します。
「国境の長いトンネルを抜けると、そこには日傘をクルクル回し遊ぶシシィがいた…
私は一目で彼女の虜になる。
数分後、彼女が若くして王女に選ばれるなどとは露ほども知らず…無邪気に二杯目のお茶を注文する少女に私はただ相好をくずすばかりであった…」
こんな感じで初演から八年間、グリュンネ伯爵は役作りを続けてきました。
もちろんこちらが一方的に見つめていただけですが。
しかし、先週、事件は起きました。
シシィがそんなグリュンネ伯爵に気づき、目をあわせた次の瞬間、微笑み返してきたのです!
無論、なんの打ち合わせもしていません。
少女コムさんシシィは中年はるパパグリュンネに、なんの照らいもなくにっこり微笑んだのです。
私も思わず会釈を返しました。
八年目にして初めてシシィと交流が持てたのです。
役者は舞台の上で「役を生きている」、交流っていいなぁ…
そんなことをあらためて思ったのでした。
七日夜、がんじろうのお別れ会はしめやかに…いいえ、にぎやかに行なわれました。
姪っ子たちにも手伝ってもらい、おもてなしの準備です。
お客様が次々といらっしゃいました。
中には知らない人も何人かいて(どうやら、かみさんの知り合いらしいです)、故人の人望…いや、故猫の猫望の深さが伺い知れ、我が子ながら鼻高に思ったほどです。
タンスの上に作った祭壇は花や猫缶で埋まり、テーブルは用意した料理、ご近所の方達が持参してくれたワインや大皿であふれました。
がんじろうを通じて色々な方と話ができました。
そう、ここでも交流が持てたのです。
がんじろうが天に召される前日、私はお膝の上の彼と深い交流を持つことができました。
彼の幸せが私の体中に伝わり、私も幸せであふれました。
がんじろうは本当に喜んでいたのです。
彼と一緒に暮らした十年間の集大成でした。
色んな方に「立て続けで」大変ですねって言われます。
もちろん失くしたものは大きいのですが、でも、得たものも立て続けに大きいのです。
ご近所の方達、猫仲間、ポンと肩だけ叩いてくれた共演者、たくさんのメールやコメントを下さったお客様、そして、我が家の他の猫達と本当に温かい交流を持てました。
とりわけためおくんの懐の深さは、我が子ながら誇りにすら思います。
「ためおくんがこんな風に接してくれるなんて初めてです!」
ご近所の方にも言われました。
知らない人が来ると、必ず逃げていた彼が今はきちんと「大人の応対」をしています。
介護厚生労働大臣ばかりでなく、広報としても治田内閣の頼もしい官房長官へと成長したのでした。
8日朝、がんじろうは沢山の花に囲まれて土に戻りました。
がんじろうにはクリスマスがよく似合います。
墓には本当にクリスマスの頃に咲くニゲル種のクリスマスローズを植えました。
これで毎年12月にはがんじろうが、そして、2月ごろにはムギョちゃんがきれいな花を咲かせます。
どなたかがコメントで言ってましたが、ふたりとも私が東京にいるときを選んで旅立ってくれました。
これがもし、地方に一人でいるときだったとしたら・・・
「いつかは来る日」を、ふたりはちゃんと選んでくれたのでした。
最近保護したシマモッチががんじろうと同じ腹膜炎に犯されていることが分かりました。
二代目会長ためおくん指示のもとに 「がんじろう基金」活動再開です!
シマモッチはまだ若い猫です。
基金は総力をあげて彼を救います。
今日、楽屋を出たら「ためおファン」とおっしゃる方から寄付を受けました。
心から感謝いたします。
新会長にきちんと渡しますからね。
(一度メールを下さいませ。会員番号をお知らせいたします。)
故猫の猫望と意思を引継ぎ、基金は精力的に活動を続けていきます。
いつまでもしんみりしてはいられません!
「マイフェアレディ」も返信できないままで、ゴメンナサイ。
明日から平常どおり受け付け、返信いたします。
がんばりますよ!
皆さんの温かいご協力、今後ともどうか、よろしくお願いいたします!!
「シマモッチさん、こっちに来るのはまだ早いわよ!」
「そうですだよ、ゆっくり人生を楽しんでくだせえ!」
生前、たまたま知り合いが作ってくれていた、がんじろう、ムギョちゃんフェルト人形。

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