すっかり忘れていました。
楽屋へ入る前、お客様から言われ思い出しました。
今日のお昼で「エリザベート」700回出演です。
私の出演記録としては「美女と野獣」868回に次ぐ数字です。
すごいですねぇ・・・!
カーテンコールでは「皆勤賞組」の挨拶に混ぜてもらいました。
モノローグでも紹介した「大阪公演結石ネタ」です。
あのときは、救急車で搬送される前、ホテルの廊下を担架で運ばれながら、携帯電話のアドレスをホテル支配人に見せながら「プププ、プロデユーサーに電話を!」と、叫んでおりました。
あれから八年・・・
続けるって素晴らしいことです!
ムギョちゃんが逝ってから三日が経ちました。
でも、なんだかもっと、もっと時間が経ったような気がします。
あの日は二回公演、おそらく、帝劇退出スピード新記録を樹立して帰ったのじゃないでしょうか。
翌12日もご近所、あるいは遠方から色んな方が弔問に来てくださいました。
タンスの上にこしらえた祭壇は綺麗なお花や猫缶で埋まりました。
「故人のお人柄がうかがい知れます」って、葬式の常套文句だけれど、ムギョちゃんの場合も、「故猫のお猫柄」がこんなにもあったのかと、驚かされました。
もちろん、それは私が一番感じておりますが・・・
しかし、随分と急でした。
ずっとがんじろうの心配をしていたものですから、油断と言う言葉が当てはまるかどうかは分かりませんが、心にいきなりぽっかりと大きな穴があいてしまいました。
これを埋めるのはなかなか容易なことではないようです。
「ムギョちゃん、ちょっと早すぎるよ!」
なんて、つい口から出てしまいます。
劇場でも、できるだけ冗談を言って明るくしておりますが、誰もいない廊下や、暗い袖を歩くと、ひょいと気が緩んでしまいますね。
いけない、いけない。
一旦舞台に出てしまえば、グリュンネ伯爵になれますが、ただ、葬儀のシーンばかりは私なのか彼なのかまだまだ分からない状態です。
リー・ストラスバーグの「メソード演技」によれば、代替行為;「感情の記憶」に当てはまり、これはこれで正しい芝居のやり方になるのでしょうが、そうは言ってもね・・・
11月13日、快晴の朝、ご近所のミセス・ショーシャンクが作ってくれたスープを飲んで、作業を開始しました。
モッコウバラが入っていた大きなプランターを空け、ムギョちゃんのお墓作りです。
10年前フリオが死んだ時もそうでしたが、なかなか火葬には忍びず、土に帰すことにしました。
作業の間、ムギョちゃんはしばしの日光浴です。
本当にいいお天気で、彼女を送り出すにはこの上ない朝でした。
苔のついたプランターを綺麗に洗い、軽石を敷き詰め、その上に土をかぶせました。
お花模様のかわいい枕カバーを敷き、ムギョちゃんを寝かせると、太陽がうんと彼女を温めてくれます。
16本のバラと、みなさんからもらったお花を少しずつ彼女の周りに飾りました。
ムギョちゃんはお花の女王様です!
最後、彼女のほっぺにキスをして、両手で土をすくい、少しずつかぶせました。
大好きだよ、ムギョちゃん、ありがとう!
ピンク・ピコティ(縁取りのある花びら)のクリスマス・ローズを植え、お墓は完成です。
88鉢のクリスマス・ローズの中から一番彼女に合う花を選びました。
来年の二月、早ければ一月に可愛い花を咲かせるでしょう。
ムギョちゃん、また会えるね。
なんだか太陽がとてもまぶしかったです。
「700回、おめでとうなのよ!」
なんて、きっと天国でお祝いしてくれているでしょう。
ありがとう、ムギョちゃん、これからもがんばるよ!

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