がんじろうはマグロを食べませんでした。
久しぶりに会う彼は、想像したより症状は良くないように見えます。
突然、この何ヶ月で目が見えなくなったものだから不安なのでしょう。
鼻水もずっと出ているので、においもかぎ分けられなく、トイレ以外の場所で粗相をするようです。
それでもがんじろうは久しぶりに会う私の膝に乗ってきました。
小さな声ですがグルグル言っています。
「おう、嬉しいか、がんじろう!」
マグロを小さくちぎって、口元に持っていきました。
しかし、顔を背けます。
クロードだけが肉片をじっと見つめ、すきあらば奪い取ろうとしています。
「ほい!」
わたしは大きめのマグロをクロードにあげました。
やつはアグアグいって食べています。
・・・
あれくらいがんじろうも食べていたのに・・・
あざみ野に捨てられていたがんじろうは、こと食べ物に関しては貪欲でした。
出せば出すだけ食べました。
今食べておかないと次はいつ食べられるか分からない、そんなことが頭にあったからでしょう。
「ライオン・キング」の稽古で、へとへとになって稽古場から出てきた私は「がんじろう!」と、闇夜の中で彼の名前を呼びました。
すると、やつは「はらへりましただー!」と叫びながら、どこからともなくフラフラあらわれるのです。
私は近くのコンビニまで走って、猫缶を買うのでした。
坂道の途中まで、がんじろうと一緒に走ったものです。
モンプチ・ゴールド白身魚を買って、稽古場まで戻るとやつはどこにもいません。
駐車場横の原っぱにみかんを入れるネットが落ちていました。
私はその上に缶詰を開けました。
後日、彼を保護して、病院に連れて行くと、お腹の中からビニール袋やらネットが出てきたそうです。
ネット・・・?
あの原っぱのみかんのネットだ・・・
缶詰の中身と一緒にやつはネットまで食べたのでした。
そのがんじろうがマグロ、しかもトロに見向きもしません。
クロードの(白濁してない方の)見える目が大きく見開いています。
でも、がんじろうの、あのつぶらな瞳は目ヤニまみれで閉じられたままです。
両目とも見えないのです。
頭を優しく撫でました。
グルグル言っています。
心配するな、がんじろう。
あざみ野のときみたいに、またおれがお前を助けてやる!
私は心の中で何度も言いました。
「おらの目は、つぶらな心の目ですだ!」
翌日。
突然、がんじろうの食欲が戻りました。
かみさんが買ってきた別のマグロを彼は実に美味そうに食べているではありませんか!
一昨日はあんなに食欲なかったのに・・・
よく見ればマグロは赤身です。
名古屋のトロはどうやら今のがんじろうには油が乗りすぎてきつかったようです。
また私の膝に乗ってきたので、赤身をちぎってあげると、やつはバクバク食べます。
ものすごい勢いです。
あざみ野がんじろうが戻ってきた!
私は大喜びです。
調子の乗った私はマグロを全部食べさせてしまいました。
クロードが恨めしそうに見ています。
すまん。お前にはサンマの骨をやるから我慢してくれ!
うちの猫で魚の骨を食べるのはクロードとシロモモちゃんだけです。
ムギョちゃんとふうちゃんは見向きもしません。
ためおくんはドライが大好きです。
ギャル・モモは・・・未だ生態は不明です(笑)。
クロードは骨をやると、ガリガリかじって食べるのでした。
治療薬・ホメオパシーの影響で名古屋から帰ってきた日はお腹の具合も良くなかったようです。
慢性便秘のがんじろうがかなりゆるい便をしていました。
体が悪いものを外へ出そうとしているのです。
昨日、私が歌稽古をしてリビングに戻ると、がんじろうは畳の上にウンチをして、トイレの中で寝ていました。
複雑ですが、ジラーレはいい子守唄になったようです(笑)。
砂は嫌がるので、トイレにはシーツを敷いています。
「シーツ・トイレ」、これががんじろうのベッドなのです。
言ってみれば・・・
「ジラーレ・シーツ・トイレ」
なんだか、高級そうな響きですよね。
みなさん、たくさんの応援、本当にありがとうございます。
がんじろうに言って聞かせたら、グルグル言って喜んでいました。
これから彼と付き合うのに「介護」という言葉を避けては通れません。
それは今までにはなかった多くの問題を含んでいます。
「排泄」に関してもそうです。
でも、なんの不安もありません。
私は喜んで畳の上のゆる便を掃除しました。
パソコンをうっているときも、膝の上の彼は少し漏らしたようで、Tシャツを汚しました。
でも、そんなもの着替えれば済むことです。
あざみ野で、すさんでいた私の心をほぐしてくれたのはがんじろうです。
彼に癒されたこと、私は絶対に忘れないでしょう。
わたしはがんじろうを一生大事にしてやります。
大事な家族ですからね。
さあ、今日、福岡へと旅立ちます。
大好きな博多です。
ジラーレ・コンコーネ26から50まで制覇を目標に、昨日より「ほんのちょっとでも今日の進歩」を目指して頑張ります。
この次家へ帰ったら完璧なジラーレで、またあいつを寝かせてやりましょう!
応援よろしくお願いします!
「おら、ジラーレ聞くと、すぐ寝れますだよ!」

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