“Hell of a day !”
ミュージカル、「コーラスライン」で、全てのオーディションを終えたメンバーに演出家のザックが吐くセリフです。
文字通り「地獄のように色々あった一日」、つまり「お疲れ様!」と言う意味です。
宮崎での五日間はまさに「ヘル・オブ・ア・デイ!」でした。
飛行場へ着くなり、その足で会場のホテルを下見しました。
天井は低いですがかなり広い空間です。
あれこれステージングのプランを練り、その夜は両親と久々の会食。
耳の遠い父は私の舞台発声をもっても通じぬのですが、何故か母の「通訳」を介すると理解できるようです。
母は足の状態があまりよくなく、歩行が困難で、父が代わりに家事をやっています。
もともと料理上手なので、苦にならないというよりはむしろ嬉々としてやっているようです。
しかし、(最近引っ越したばかりの)新居の台所は、まるで「嫌がらせ」のような家具の配置です!
冷蔵庫のドアひとつ開けるのに、左側の壁と正面のテーブルが邪魔し、荒川静香並のイナバウワーで身体をひねらないと、取っ手に手が届かないのです。
他にも「迷宮」はあちこち立ちふさがっていました。
見かねた私は翌日、「THE台所リフォーム」大作戦に着手したのです。
二時間かけて、ラビリンスには見違えるように快適な導線が生まれました。
一旦始めると最後までやらなければ気がすみません。
次は冷蔵庫の掃除です。
「乾燥」と言う概念を覆す三十年物の切り干し大根、水分と言う水分を出し切った二十年物の干し椎茸、不気味にうごめくビンの中の「塩辛エイリアン」等々・・・再び二時間かけ、「Extra Terestrial;地球外生物」を全て撃退したのです。
美しく生まれ変わった冷蔵庫には平和が訪れ、野菜室には花が咲き乱れ、冷凍庫には蝶が舞うのでした。
「敦ちゃん、きれいになったね・・・」
泣いて喜ぶ母でした。
そして、翌日、交通事故・・・
耳の遠い父のため、警察への証言、保険の手続き等、私が代行しました。
ぶつかってきた車が軽だったので大事には至りませんでしたが、もし、あれが大型トラックだったら、二月四日のコンサートは「治田敦くんを忍ぶ会」に変わっていたでしょうね・・・
そして、いよいよコンサート当日。
果たして客は来るのか、ちょっと心配しておりました。
しかし、ふたを開けたら、なんということでしょう!
180人以上も駆けつけてくれたのです。
「暖冬」というより「冷夏」と言ったような暑さで、会場は暖房は止めても温度が急上昇、更に、西日が時に観客の目をくらます、そんな悪条件だったにもかかわらず、それを吹き飛ばす熱気でお客様は迎えてくれました。
自分の出来も、その暑さと乾燥で声帯がくっつかず、高音の伸びに欠け、また、ワイアレス・マイクが使えず動きも制限されました。
しかし、同級生も、一般客も、これだけ大勢が観に来てくださったのです。
集中力だけは欠かさぬよう、丁寧に丁寧にやりました。
結果、トークはバカウケし、歌も大きな拍手をいただきました。
後で感想を聞いたら、かなり好評だったようです。
再演を企画する声も聞きました。
耳の遠い父がこう言いました。
「歌やら話やらは聞こえんちゃけど(聞こえないけど)、喜んじょる客ん表情を見とったら、嬉しかったとよ・・・」
今回のコンサート、同級生たちには心から感謝しています。
駆けずり回ってくれた現地マネージャーの本田君、いっぱい連絡しまくってくれた淳司くん、観客動員の電話をかけまくってくれたトコちゃん、野口さん、横田さん、司会もやらされ、最後は私を弟のうちまで送ってくれた束野さん、そして、「もう折る骨はない!」と言うぐらい骨を折り、最後はスナックのマスターになって焼酎の水割り作ってくれた日高くん、観に来てくれたみんな、どれだけ感謝してもし足りません。
乾杯の音頭をとってくれた世界史の栗原先生、34年ぶりの再会嬉しゅうございました!
終演後のパーティーでも、二次会でもみんな大喜びしてくれていました。
中には卒業式以来の連中もいました。
34年の月日は膨大です。
すぐに思い出せるやつ、じんわり記憶が蘇るやつ、突如蘇るやつ、さまざまですが、皆の喜ぶ顔が人生と言うとてつもなく長い時間を、あっという間に凝縮してくれました。
私は二次会のバーカウンターでトコちゃんとしんみり語りました。
「友達っていいよね・・・」
事故にもあいました。
冷蔵庫も片付け、エイリアンも撃退しました。
そして、歌って踊って芝居して、皆を喜ばせました。
“Hell of a day !”
いろんなことがありすぎて、終わればあっという間だったけど、実は、とても長い長い五日間でした。
うちへ帰り、愛猫がんじろうに会った途端、疲れがどっと出たのです。
“Hell of a day !”
でも、今回の帰郷・・・
母の一言が嬉しかったです。
「敦ちゃん、いい親孝行じゃったよ・・・」
34年前、厳粛なる高校の卒業式で、(昭和のスマップと呼ばれる)フォーリーブスの物まねをやり、大騒ぎした不謹慎な高校生4人組。
そのうちの二人がこいつらだ。


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