うちのマンションが、私の住む中央エレベーター永世中立国を挟んで西側諸国と東側諸国に分かれる話は前回書いたとおり。
しかしながら、この国境は必ずしもはっきり引かれているわけではない。
永世中立国両隣の棟はいわゆる「グレーゾーン近隣」諸国と呼ばれ、西だの東だのに色分けされることを必ずしも潔しとしていない。
そして、この近隣領地の重要人物と言えば、匠の技とお酒が大好きなことでも知られる江戸前寿司共和国大統領;
サーKである。
サーKには愛すべき外交官、ミー女史がいる。
彼女は他の猫官僚と違い、領地内にとどまることを嫌い、しばしば外遊しては他国との親睦を深めている・・・ま、単に「外出好きのニャンコ」だとも言えるのだが・・・
ある時、この外交性が国家的危機を呼ぶのであった。
サーKが国民たちと共に談笑していた時のことだった。
突如、どこからか、
「ギャー!!!」
と、恐ろしい悲鳴が聞こえてきた。
間違いない、あの声はミー外交官だ。
しかも、声の方向はあのグルメーニュの森からではないか。
この森、領地力学上から言えば東側諸国に属するのだが、実質、国交はないにひとしい。年に一度「竹の子掘祝賀祭」のときだけようやく国交が回復されるが、それ以外は高いフェンスに・・・そうでもないか・・・囲まれ、6カ国会議にも加盟していない。
一度、我が永世中立国の友好ミサイル・ムギョドンを打ち上げたことがあるが、全くもってなしのつぶてであった。
そのグルメーニュの森から愛すべきミー女史の悲鳴が!
江戸前寿司共和国国民全員が救出に向かった。
高い・・・そうでもない・・・フェンスを乗り越え、いざ、声のする方向へ!
そして、そこで見たものは!!??
*
ファーザーSパパが月夜の晩、公園で出会ったのは犬でも猫でもない、間違いなくアライグマだった。
十二猫使徒たちの食事中、じっと何者かがこちらを見ている。
大きい・・・
使徒のなかで一番大柄なのがブラザー・セイジューロー、彼のゆうに五倍はある。
こんな大きな猫は・・・がんじろう幹事長とてその比ではない・・・どこにもいない。
では、犬ではないのか?
違う。
なぜなら、そのなぞの生物は「両手」を使ったからだ。
ファーザーが「食べるかい?」と、キャットフードを地面に置くと、動物はなんと難波(なにわ)の商人(あきんど)のように両手をスリスリしたのだ。
あの動きは間違いなくアライグマのラスカルだ!
そして、ラスカルはファーザーがあげたフードをむしゃむしゃ、ぼりぼり(聞いたわけではないので、こんな音かと・・・)食って、再び闇夜に消えたのでした。
*
グルメーニュの森に新たなキャラが登場した。
江戸前寿司共和国国民が森で見たものは、
「アライグマ・ラスカルVSミー女史」・・・
ではなく、なんと「ラスカルVSたぬき」だった!
しかも、このたぬき、子連れだった。
子供をラスカルから守ろうと母は(父・・・!?)戦っているのだった。
呆然とこの戦いを見つめるサーK。
イッツァ、サークルオブライフ!
自然の脅威に巻き込まれたミー外交官はなすすべもなく、ただ、ミャーとなくばかりであった・・・
森は生きているV
「 まさに12月16日の午前中であります.。私の部屋の配置をご存知と思うのですが、
私がPCを使っているときは、ほぼ、管理棟というか裏山に相対する形で座っております。
で、ときどき目の端に動くものがあり(大抵は猫ちゃんです)そのたびに一応、確認しているわけですが、その時は、明らかに猫とはちがう異形の動物が!彼は『なんか、ええもん、ないかな〜』と(思ったかどうかは不明ですが)、管理棟のほうに向かって、おそ〜るおそ〜る上って行こうとしていたようです。
で、とりあえず、最初のショットは部屋の内側から撮り、
その後、カメラを持って外に飛び出し、彼を追跡しました。
で、管理棟の前の植え込みのあたりで待ち伏せする感じになり、ハタと見つめる顔と顔、という状況になりました。
(2枚目の写真)
で、彼はおそらく、ニンゲンと、あれだけの至近距離で接したのは初めてと思われ、あるいは、かつてニンゲンに意地悪をされたトラウマがあったのか、そのへんは謎ですが、
数秒見つめ合ったあと、スタコラサッサと、きびすを返して、裏山へ戻って行ったというわけです(3枚目の写真)。
その間すべてを合わせて、おそらく3分も無かったと思います。
ということで、だいたいよろしいでしょうか?
じゃ、深夜の国境警備に戻らせていただきます。
西側諸国父島国境警備隊隊長 ミセス・ショーシャンク 」
うちのマンションが、私の住む中央エレベーター永世中立国を挟んで西側諸国と東側諸国に分かれる話は前回書いたとおり。
東にはグルメーニュの森があり、そことは国交は無いが、森の「住民」たちはパスポートもビザもなしに、西と東を自由に行き来している。
東がツンドラに接するとしたら、西の最果ては父島にも接し、気候的には亜熱帯地域に属する。(話四分の一ぐらいで聞いていただきたい・・・)
この広大な地域の西側国境警備隊長を任ぜられたのがミセス・ショーシャンクである。
「ショーシャンクの空に」という、スティーブン・キングの映画があった。刑務所からトンネルを掘り脱獄する話だ。
ミセス・ショーシャンクは手造りリフォームの匠で、湿地亜熱帯にある彼女の国を湿気から守るために、壁中に珪藻土を塗ったり、木場から材木を買ってきてはカウンターを作ったり、机も椅子も平気で作る。
一度、視察に行ったことがあるが、それは見事なハンドメイドの国家であった。
そのうちわが国に彼女からホットラインで「ねえ、はるパパ大統領、駅までトンネル掘ったの、見に来て!」などと連絡が入りそうなので、こんな名前になった。
その彼女が国境警備をしているときに撮ったのが上の三枚である。
今回のこの物語を作るきっかけにもなった。
どうぞ「話半分」で聞いていただきたい。
しかし、森は生きている。
ラスカルも、獣医に相談したら「警察に知らせた方が良い」とのことだった。
国家的には「害獣」扱いだそうだ。
つまり、つかまれば「駆除」されるということだ。
社会にルールは必要である。
情に流されるつもりは毛頭ない。
しかし・・・
森は生きている。
グルメーニュの「住民」はだれもパスポートなんて持っていない。
立派な意見なんて持たなくていい。
共存の道を模索しつつ、彼らを見守ることはできないだろうか。
そのためなら、西も東も、中立も、近隣も、
協力は惜しまないと思うのだが・・・
完
「 拝啓 西側諸国・父島国境警備隊隊長へ
それにしても、なんて見事な写真でしょう!
一枚目は北狸共産圏の貧困さを、お腹の筋と共に浮き彫りにさせ、二枚目はその貧困に負けず父島自由主義圏への憧憬と友好を、そして、三枚目は、『所詮はかなわぬ夢』という、憧れの中に垣間見えた、どうしようもない淋しさをあらわしています。
あの後姿に哀愁の『あ』の字がはっきり読み取れるではありませんか。
この写真、今年のピューリッツァー賞ノミネート間違いなしでしょう・・・
今度、父島にマングースとハブが現れたら、ぜひまたお知らせください。
もし、象だったら・・・避難された方が・・・
東西中立近隣共和国・ピューリッツァー賞選考委員長
治田敦 」

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