稽古場情報6
今回「マイフェア」で共演する岡智くん、私は数十年来の仲なので「おかち」と呼んで
冗談を言い合っております。
おかちはその昔、和物をやっており、時代物のボキャブラリーに造詣が深く、二人して
事あるごとに“時代劇ごっこ”をして楽しんでおるのです。
「これ、おかち」
「はは、との」
「そちゃ、居酒屋の主ジョージなる役をやるようじゃが、酔客ジェミィに蹴りを
いれる折、多少の手加減は心いたせよ」
「はは、かしこまってござりまする」
「うむ」
「との、これにていかでござりましょうか」
と、ジョージ役のおかち、ジェミィ役のはるパパを思い切り蹴る。
「ななな、なんたる不埒千万、手打ちにしてくれようぞ!」
「おお、お許しを!」
「かくなる上は、市中引き回しの上、遠島(えんとう)を申しつける!」
「ははーっ!!」
などという具合に、演劇の殿堂・帝国劇場九階稽古場にて、不謹慎にも二人は
大音声にて戯れているわけでございます。
さて、その二人の今日のお戯れ。
「これ、おかち」
「はは」
「よは、こ度(たび)、銀幕にデビューすることにあいなった」
「ななな、なんと、との、おめでとうござりまする」
「うむ」
「で、いつ」
「正月じゃ」
「・・・『釣りバカ』か何かでござりまするか!?」
「たわけ!」
「ははーっ!」
「コメディーではない!ホラーじゃっ!」
「ホホホホホホホホホホホホホホホホ、ホラーーーーーーーーーーッッッ!!!」
この後、四十過ぎの岡智は七転八倒するのでございます。
「わたくし、ホラーはだめです!幼少の折より、便所にすら母親に手を引かれて行った
ほどでござりまする!とととと、との、お許しを!!!」
岡智のあまりのうろたえぶりに、私はただ驚くばかりでした。
いるのですよね、ホラー全くダメな人・・・
「マイフェア」メンバーではこの他、リサもシノブも全くだめだそうです。
ただ、青森生まれイタピョンは熱狂的な清水崇監督ファンらしく、
「おら、絶対見るっきゃ!」
と、興奮していました。
ここで、「ホラーを超えたホラー」を主張する、はるパパの言い分。
この物語は、昭和45年に起こった、大学教授の山荘ホテル11人殺人事件に端を
発します。この事件を元に、35年後の現在「記憶」という映画が製作されることに
なり、ヒロインに女優・杉浦渚(優香)が抜擢されるのです。彼女の役は殺された
“教授の愛娘・千里”役でした。
ストーリーは内向的なこの女優・渚に降りかかる、「前世」から仕組まれたトラジディ
(悲劇)なのです。
彼女の前世がこの忌まわしい事件に関わっていただけで、どうしてこれほど切ない
結末にならなければならないのでしょう。彼女に一体何の罪があるのでしょう?
わたしは出演者として結末を知る立場にいたわけですが、試写室にいてこれほどただの
観客でいたいと思ったことはありませんでした。
まだ何も知らない皆さん、
どうか、このホラーではなくトラジディを共感し、そして、最後に訪れるこの壮大な
カタルシスを体全体で味わってください。
最後の二十分はまるでジェットコースターに乗った様に息をもつけず、そして、
悲しくも切ないドラマをあなたは堪能することでありましょう・・・
これはホラーではなく、壮絶な悲劇のドラマです!
http://www.j-horror.com/trailer/rinne_teaser1_l.html
明日はジェミィで「運が良けりゃ」、こいつもいっぱい「作戦」練ってます。
休日ごとに、がんじろう見守る中、ひとり稽古しています。
お楽しみに!

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