稽古場情報3’
2005(はは・・・)年8月14日9時、私たちを乗せたベンツは高速を降りると
新百合ヶ丘へ向かった。ご近所のよしみで村井さんが愛車でおくってくださったのだ。
この日の稽古は結構きつかった。
新ゾフィー、旧ルドルフ・・・つまり寿さんと芳雄くん中心稽古で、昼3時ごろから
みっちり行なわれたのだ。
エリザベート以外の出演者がほぼ全員揃うと、9回の稽古場はまるでお祭り騒ぎ。
ああ、こんなにいっぱい出てたんだ・・・
あらためて、その賑やかさに驚く。
先ずは寿さんのために、ワルツの入れ込み稽古。
舞踏会のシーンでは始め、振り付け助手の川岡君が村井さんの代役をしていたのだが、
いざワルツを踊る段になってどこからともなく突然ご本人が現れ、寿さんを驚かせた。
こういうお遊びは村井さんお得意のわざだ。
寿さんは振りをもうすっかり入れていらっしゃる。明日本番でも大丈夫だ。
オープニングと最後の悪夢シーン、芳雄くんは以前出演していたけれど、
振り付けが初演とは全く違っている。現ルドルフの二人が懇切丁寧に教えていた。
「はるパパ、おひさしぶり!」
色んな劇場の楽屋で会ってはいたものの、5年ぶりに共演する芳雄くんはなんだか
一段と凛々しくなっていた。色んな仕事でもまれ、何事にもおごらず謙虚な彼だから、
さぞや沢山学んだのだろう。
成長したルドルフを作ってくれるに違いない。とても楽しみだ。
「ウッチー、もっと早く降りてきてよぉ!間に合わないわよぉ!」
伊藤さんがケラケラ笑いながら青年にリクエストする。オープニングのトート登場の
シーンである。
「あ、ごめーん!」
髪を短く切った青年がいたずらを見つかった子供のようにあやまっている。
以前、舞台稽古のとき鬘を被らないでシーンを当たっていた青年を見たことがあるが、
青年は短い髪が実によく似合う。トートが短髪じゃまずいかなぁ・・・
そういえば、博多座でこのシーンを当たっている時、
「とっとと、とーと、とおっととと」
(博多弁で「とっとと、トート、通っとと(通るんだって)」)
なんてこと言っては笑っていたっけ。
青年は以前にもましてマッチョになっていた。
「欲望という名の電車」を思い出した。
きっと、またどこかでなにか役作りてしているんだろう。
こうして、6時間近くに及ぶ稽古は、わきあいあいと、しかし、しっかり集中して
行なわれた。
「乗ってくか?今日は日曜だから(道は)すいてるぞ」
村井さんがおっしゃってくださった。
二つ返事で、私は車に乗り込んだ。
運転しながら、村井さんといっぱい芝居の話をした。
前から思っていたが、本当にこの人は芝居の好きな人なのだ。
村井さんは淡々と、そして、熱く語ってくれた。
村井さん流の役作りのプロセスは、とても興味深かった。
いざ、稽古場へ行くまで、実に丹念な準備をなさるらしい。
今も来年やる芝居のために、資料を読み漁っていらっしゃるようだ。
「ほい、着いたぞ!」
車は駅に横付けされた。
村井さんに礼を言うと、私は駅の階段を早足で登った。
今日一日とっても疲れた。でも、久しぶりに仲間と時間を共にした。
みんな、芝居が好きなんだな・・・
なんだかよく分からないけど、この職業を選んでよかったと思った。
うらやましい 投稿者: サリー 投稿日: 8月17日(水)00時19分41秒
「なんだかよく分からないけど、この職業を選んでよかったと思った。 」
この最後のはるパパの一言ガビーンときたなー。
ここに来ているみんなは自分の仕事の事をはるぱぱみたいに言えますか?
私は・・・自分の中でいっぱい、いっぱい言い訳を作りながら仕事しているような気がする。
「ほとんどの人が自分がなりたいと思った仕事についてる訳じゃない」とか
「生きる為にはイヤだと思うこともしないとイケナイ」とか
「この会社だと安定していて親も安心してくれるし」とか。
会社には毎日行く。仕事もそれなりにする。だが、心のどこかに引っかかっている
何かがある。だから多分この一行目が書けるはるぱぱがうらやましいんだと思う。
じゃあ何をやりたかったんだろう?・・・。回答もない。

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