劇場中継5 徒然なる役作り・・・
「今回、どんな風にして役作りしたんですか?」
こんな壮大なる質問メールをいただきました・・・
僭越ながら、手短にご説明させていただきます。
先ず台本を読んで、自身の役を膨らませたら(「いっちゃった怪獣オカマ」等・・・)
次は絡んでいる相手役との関係です。
先ずラッキー。
「会うなり、『あ、いい男だなぁ!』って思ったらどうでしょう?」
稽古中、そんな要求が出されました。
「恋心」か・・・・!なるほど、オカマだもんね・・・
坂本君はアイドルだけあってハンサムだし、踊りも歌も演技も三拍子揃っているし、
「カマ心」を抱く役作りはとても簡単でした。
で、早速稽古場で発表したのです。目線、仕草、かなりラッキーにせまりました。
しかし、ギャラリーには大うけだったのに、「キモチワルイ」の一言で却下(笑)。
★パングボーン氏はラッキーに対して、恋するオカマではなく、経営者オカマ。
メイベルとの関係。
大浦みずきさんと演っているうちに(ストレッチしながら、芝居とは関係ない色んな話を
していくうちに)段々私は彼女に部下と言うより、かつて一緒に舞台で踊った「仲間」
みたいな感覚を持ち始めました。
パングボーン氏が昔出演したバレエ「くるみ割り人形」の中で一番やりたかった役は、
可愛いドレスを着たヒロインのクララです(夢見るオカマですからね・・・)。
でも、実際貰ったのは最も屈辱的な(着ぐるみを着せられた)「ねずみの王様」でした。
「あーん、もういやっ!こんなデパートの屋上ショーみたいな役!」
と、袖でわんわん泣いていると、花の精をやっていたメイベルが優しく慰めたのです。
「あたしたちのスタジオ作って、あたしたちの『くるみ割り』やりましょう!」
★パングボーン氏はメイベルのことを信頼している。むしろ、かなり頼っている。
ペニーとの関係。
メイベルがペニーに言う台詞;
「あともう一回遅刻したら、クビだって言われてるでしょう?」
「あともう一回」・・・どうやらペニーは遅刻の常習犯らしい。
★パングボーン氏はペニーに手を焼いている。
しかし、ペニーはペニーで遅刻しそうなのにもかかわらず「あ、コーヒー一杯だけ!」
と、パングボーンの脅しを全く意に介していない。
★パングボーン氏は恐くない。むしろ、手玉に取られている?
ペニーの台詞;「(クビにする)その前にお給料払ってほしいわ」
スタジオ経営はうまくいっておらず、パングボーンはペニーにお給料を払っていない。
★パングボーン氏はペニーに負い目がある。
紺野まひるちゃんと演っていて、ペニーのことを「放っておけない」という母性・・・
いや、カマ性(笑)を感じるようになってきました。それは女優としての彼女がとても
素直で、優しく、時にお茶目なキャラを醸し出しているからです。他の女優さんが
やったらパングボーン氏もまた変わってきたでしょう。
なんだか、二人はいつも喧嘩というより「喧嘩ごっこ」をして遊んでいる仲のよい
親子みたいな関係に思えてきました。
(実際オカマさん達は自分で自分を演じて悦に入るという性癖があります)
さらに、彼女が懸命に踊っている姿を見て、私は彼女に敬意すら抱いてきたのです。
★パングボーン氏はペニーのことをダンサーとして認めている。そして実は、大好きだ。
リカルドに対して。
「スペインの情熱にメラメラ燃えるセクシーガイ!」
★パングボーン氏はリカルドと仲がいい。彼のことが大好きだ。
シャルフォント氏に対して。
パングボーン氏は前述の通り、リカルドとペニーのことが大好きだ。
そして、そのリカルドとマーガレット、ペニーとラッキー、本当は愛し合うそれぞれの
仲をこじらせた張本人がシャルフォント氏。
だから、パングボーン氏は彼に「あんた地獄に落ちるわね」と吐き捨てる。
★パングボーン氏はシャルフォント氏に怒り心頭。
以上が台本を読み、相手役と稽古を重ねていくうちに感じた役作りです。
それともう一つ、とても大事なことがあります。
役者治田敦の信条として、たとえ怒鳴り散らすような役だとしても、観ているお客様に
嫌われるようなキャラにはしたくありません。
「あ・・・おこってはるわ・・・くすっ」と笑ってもらえるような役にしたいのです。
これはコメディアン(仏語で役者と言う意)として譲れないところです。
それから、相手役はラッキーであり、ペニーであり、メイベルでありますが、目の前に
いるのは坂本さんであり、紺野さんであり、大浦さんであります。そして、パングボーン
は治田敦です。
本を読んで抱いたイメージをかたくなに押し付けるより、実際の相手に感じたことを
大事にしたいと思っております。
・・・とまあ、理論は理論として語れるのですが、追いつかないのがその具現化、
つまり表現、つまり演技です。
観ていて、納得いかないところも多々ございましょうが、それはそれ、忌憚ない
ご意見お聞かせ下さい。
自慢できるのは治パパ、「聞く耳」を持っているというところでございます・・・!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

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