12月14日「ネバ・ゴナ・ダンス」(私の)稽古初日は波乱の幕開け・・・
でもないが・・・結構おどろかされた。
稽古予定を読むと「14日;芝居、一、二幕」とある。当然「本読み」だとふんで、
私は小さな作戦・・・まあ、演技プランとも言うが・・・だけ用意していた。それも、
あえてその日は出さず、さらっと読んで様子を見よう・・・そんな魂胆だった。
が・・・
「それでは、始めましょう!」
演出家・植田さん(まだお若い女性)の掛け声で、一幕一場の「立ち稽古」が始まった。
「えええっ!!!???」
主役の坂本くん(親友の神埼順くんに紹介してもらって、私は既に大阪で会っていた。
気さくな好青年という印象)なんか、もう結構セリフ入っている。ヒロインのまひる
ちゃん然りだ。
「なぁ、本読みちゃうん・・・?」
小声で私は十数年ぶりの共演(坂井)なるくんに聞いた。
「甘いすよ・・・」
げげげーーーーーっ!
主役の二人は大変だ!歌って踊って芝居して・・・あたりまえか・・・でも、ずーっと
出ずっぱりで、ずーっと歌って踊って芝居して・・・なのだ!
二人とももう結構振りは入っている。振り付け助手のシャンテくんが先日NYへ
行って来て、教わってきた振りだ。
商業演劇のヒーロー、ヒロインと言えば昔は、歌えない、踊れない、芝居できないの
「三重苦」が相場だったもんだが・・・今は違うねぇ・・・たいしたもんだ・・・
おれもがんばんなきゃ・・・
「それでは、一幕五場まいります」
出番だ!
とりあえず、大きな声で元気よくいこう・・・「作戦」は・・・小出しぐらいで・・・
先は長い・・・今日はほどほどに・・・
私はゆっくりと立ち上がった。
「治ぼん、初日から『飛ばした』んだって?」
プロデューサーのSさんが言う。12月16日、稽古三日目になってようやく大物は
現れた。今回、この仕事(おかまのミスター・パングボーンという役)を名指しで
下さった方だ。彼は私のことを「はるぼん」と呼ぶ。
「いや、『本読み』だって思ってたのに『立っちゃう』んだもの、つい・・・」
「あははは、治ぼんが飛ばすのをおれが抑える・・・楽しみだね・・・」
Sさんは、劇団四季時代、ボツにはなったが私の(ジーザス・クライスト・スーパー
スターの)ヘロデ王を一緒に創ってくださった。
稽古場じゃ、かなりウケタんもんさ・・・
15、16日は歌稽古だった。
今回、私にソロはないがコーラスで参加する。音楽監督もおっしゃっていたが
あの当時(1930年代)のジャズにしては少しも古さを感じさせない、
ジェローム・カーンの素晴らしい音楽だ。
とにかくスゥィングだからリズムがとっても難しいし、ハーモニーも複雑で結構
ぶつかっているから、中々簡単には音が取れない。かなりの「強敵」だ。
だからこそ、聴くぶんにはとっても心地よいのである。
コード進行的には「アニーよ銃を取れ!」を思い出した。
「あ、これ知ってる!」
そう思う曲が必ずあるはずです!
「治ぼんはな、おれが向こう(NY)で観たとき・・・」
Sさんが言うには、このパングボーンを始めて観た時、私だと思って下さったらしい。
「だから、おまえさんが最初のキャスティングだよ・・・」
「ええっ・・・!?・・・ああ、ありがとうございます!」
ホントに世の中って・・・捨てる神あれば拾う神ありだね・・・
二人で一緒に稽古した劇団の第一稽古場が頭をよぎった。
「よろしく頼むよ」
「はい、『立ち』用の作戦は年が明けたら・・・!」
私が神妙に言うと、Sさんはゲラゲラ笑った。
さあ、年末年始はこの音楽を体に入れることと、「史上最大・・・最小にならない、
最中ぐらいの作戦」はかならずや準備いたします。
どうぞ、ご期待あれ!

0