私は大変な肩こりで、本番に入ると背中から肩にかけてうちのでぶ猫がんじろうを
10匹ぐらいおんぶして、そいつらの40本の四肢に爪をたてられているような、
そんな重みと痛みを感じます。
前にも書きましたが、これはテナー歌手の宿命で高い音を出す時、首肩の筋肉を
酷使するからです。更に私の筋肉は他の方々と比べてかなり硬い「肉質」らしく、
以前バレエのレッスンを受けているとき、先生が私の腿(もも)をさわって、
「んまぁ、はるたさん・・・カツオ節みたいな筋肉ね!!」
と、びっくりしたほどです。
今回の名古屋公演もその例外ではなく、鈍痛に苦しんでおりました。すると、
トートダンサーの大ちゃんがプロ級のマッサージ師だという評判を聞きつけ、
早速頼んだのです。すると、彼がプロ「級」だというのは大ウソで、実は正真正銘の
「プロ」だったのです。帝劇時代から、彼のことを一目置いていたのはその知識の
豊富さです。あらゆるジャンルに見識が深く、わからないことは大抵彼に聞けば
解決し、いつしか人は彼のことを「踊るトレビの泉」と呼ぶようになったほどでした。
ですから、職業上「筋肉」に関しても当然のように造詣(ぞうけい)が深く、実際
マッサージの技術を学んだそうなのです。
「大ちゃん、ほな悪いけど、明日昼夜公演の間やってもらえるやろか?」
「いいですよ、何時にしましょう?」
「じゃあ、五時に楽屋で・・・」
というわけで昨日、トレビ大先生にマッサージを頼んだのでした。
私は昼夜の間は一旦ホテルに帰り、部屋でゆっくり食事し、少し仮眠を取って
また楽屋へ戻ります。
昨日もいつもどおりに楽屋へ戻ると、約束どおり大ちゃんが待っていてくれました。
結果から先に言うと、本当に上手でした。
「そ、そ、そ、そこー!!!」
痛い「そこ」を見事に当て、適切に処置をしてくれます。
「ぎゃー!!!」
時々、痛かったりもしますが・・・
おかげさまでかなり良くなりました。しかし、たったひとつだけ問題がありました。
それは大ちゃんの格好です。
プロの大ちゃんはきちんと「白衣」を着てマッサージに望んでくれたのです。
それはそれで、「さすがプロ!」とうならせるものだったのですが、問題は
「顔」でした。そう、トレビ大先生の顔にはあの妖しくおどろおどろしい
トートダンサーメイクが・・・・
「脈は?」
「大丈夫よ・・・」
「びーねつはー?」
ドクターゼーブルガーごっこをして遊ぶ、はるパパと大ちゃんでした。

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