そこまで譲歩はできません。
戦犯の釈放は、私が生まれる前の時代に父達数千万人の国民が望み、政府が
戦勝関連国の了解を取り付けて実現させたものです。そうやって私の叔父も帰ってきました。岸信介も帰ってきて首相になりました。我家では戦犯は事実上
国民が望んで実質的な名誉回復がなされたものと信じています。でも裁判はもう終わったことです。今更裁判に対して不服を語ることもありません。
そしてもう一人の特攻で散った叔父。叔父の遺品は紙切れしかありませんでした。我家では、国家の最高責任者が彼のもとにひざまずくことが永遠に途切れるはずがないと信じています。私は父からそう教えられました。私も子にそう教えます。
これらは政府間の問題ではなく、個人の死や名誉に係わることです。
一度了解したことなら、40年以上も経ってから故人の墓や名誉を揺さぶるようなことはしないでください。故人を弔う国民一人一人の心まで踏み込むようないじめは勘弁してください。お願いですからこれだけは交渉のカードには利用しないでください。
これは交渉でも説得でもない。
淡々と何度でも繰り返し説明し、他の問題と一緒にしないよう
お願いすることだ。「適切に判断」するだけじゃ心は伝わらない。

0