それから一ヶ月が経って
あと一ヶ月ちょっとでシテ・デザール入館予定日である。グズグズしていられない。入館手続きの事や個展の日取りの申し込み、それに航空券も買いに行かないと。フランスからの書類が来ないと話が始まらないのである。焦る気持ちから、大使館に電話をしてみた。
「フランスからの書類は、まだ届いていませんでしょうか? 急いでいるのですが」
例の受け付けの女性の返事は以下のようである。
「フランスの方がいつ書類を出すかは、こちらとしてはまったく分かりません、まだ一ヶ月でしょ、2〜3ヶ月かかるのは当たり前、あなたの準備が遅いから悪いのです」と言われた。
もうこれは六月になってから来るのかと諦めていた。
五月の末、一応電話を入れてみた。また冷たくあしらわれるのかと沈みがちに。
まさかの返事。「書類はとっくに届いていますよ、取りに来て下さい」
との事。どうして連絡をしてくれないのかと思ったが、言っても仕方がないので、次の指示に従った。芝公園にあるクリニックで健康診断をする様にとの事、次の日に、そこへ行った。
東京タワーの真向かいである。機械振興会館というビルの中にある。中に入ると、カウンターがあり、事務員風のお姉さん達が三人ほどお話をしていた。そこで書類を書き、尿をとってドアもない続きの奥の部屋へと入り、そこで看護婦さんに尿を渡し、その後採血された。採血が終わり、また奥に進むと男の医師に血圧検査と問診、普通の医者らしくない、ぼそぼそとした口調で、「どこ行くの、なにしに行くの、何を作っているの」と身体の事以外の事だけを質問した。その後、カウンターで一万二千円程払う。保険はきかない。そして地下へ行き次はレントゲンだ。レントゲン室は、ドアを開けると幅一メートルほどの通路を2〜3メートル行くと突き当たり、籠が置いてあ、ベンチのところで上半身を脱ぐ、奥に入ると男の人が一人ガラス張りの向こうの室から出てきて「ハイ、土足のまま台に乗って下さい。ハイ、胸をつけて腕は横に、ハイ、息を止めて・・・と、いつものように終わる。良いご旅行をと言われて帰る。一週間後の十時に結果書類を取りに行き、そのまま大使館へと向かい書類を提出する。そして、五日後の六月十日に大使館にVISAを受け取りに行く。それから航空券を買っていたのでは、また一週間後になってしまうので、早めに予約する。安売りチケット、エールフランス、25万5千円、一年オープン、それなのに一ヶ月後に帰りの予約が入っているとの事で、フランスに着いたら事務所に行ってキャンセルをする必要があるとの事、「なんとも面倒な事だ」
一人で行くのにプラスツアーと言う名目も入っている。「なんなのだ?」後に知った事だが、シテ・デザールで知り合った名古屋の方の碧南市という所から来ている、版画家の鍔本氏に聞いたところ、彼もエールフランスのオープンチケットで金額は22万5千円だったとの事、「細かい事を言うようでなんだが、彼は四月に来たのだが、四月過ぎてから三万円も値上げしたとでも言うのか?」

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