「アンドリュー・ワイエス展」
山口薫、アンドリュー・ワイエス、モディリアーニ、ルドン、イサム・ノグチなど、私のblogになんども登場している画家がいる
こういう思いいれのある画家の展覧会は、かえって記事が書きにくいが、さて今回素直な感想が伝えられるだろうか・・・
チラシ(ガニング・ロックス)&アラベラ
ワイエスの絵を観ると、私はいつも冬を思う
絵に冬の朝のような凛としたもの感じる
また、人物は凛としたもの持つ人がモデルとなっている
この人は風を描くのが上手い人だな〜と思う 風というのか、空気と言うのか・・
私はよく、どんな絵が好き?と問われると、「そこに空気を感じる絵」と応えてきた
風景なら、まるで自分もそこに立ち、その冷たい空気に晒されていたり、海の絵なら潮の匂いがする
人物なら、その人の性格が分かるような感じ
ワイエスの絵はそういう絵だった
チラシ裏&今回展示のない「海からの風」
「クリスティーナ」の髪のデッサン、「そよ風」の風になびく髪、また「柱のカモメ」海辺の強い風や風景の中の下草の揺らぎ、窓辺のカーテン
今回はなかったが、彼代表作「海からの風」が好きな人は多いだろう
また、ワイエスの絵で「光は、影があるからキレイなのだ」と実感する
全体に暗褐色の色彩が多いので、ひんやり暗い室内に小さな窓からドアから射し込む光に、美しさと共に「光とはなんと暖かいものか」と感謝したくなるようだ 「青い計量器」や納屋の絵など、ことにだった
彼の、普通の人が見過ごしてしまう風景・物、歪んだバケツや納屋の道具など、ありふれたものへの美への感覚
図録の中の彼の言葉に、「【写真のようだ】と言う人がいるので、その絵のモデルとなった場所に連れて行くと、【絵の風景ではない】と言われる」とあったが、風景も物も彼の目を通すとこうも美しくなるのか・・
「創造への道程(みち)」と副題があるように、一枚の作品が出来上がるまでのデッサンや水彩画から完成した絵と言う展示になっていた
私は制作をする人間なので、作品が出来上がるまでの思考や過程の分かるデッサンが観られる展覧会はとても好きだ
習作のスケッチには、バケツの水面に建物が映り込んでいる事をメモしてあったりもした 写真のようと言われる彼の絵は、丁寧に丁寧に美しいものを拾い上げ描き込まれた絵なのだ
習作は、それ自体が魅力的でその一枚で十分に作品になるものも多かった
また、中には私は完成作品のテンペラより、水彩段階の習作の方が好きなものさえあった
「幻影」や「松ぼっくり男爵」など・・
ついつい描きこみすぎて悪くしてしまうと言う事はあるが、どこで打ち切るかと言うのは製作者の決断なのだ
同じ渋谷Bunkamuraで開催された
モロー展では、デッサンが多くて内容が薄い展覧会とかなり評判が悪かったが、こちらはあの時よりもっと習作デッサンが多いのに、創造の過程が分かると好評なのは何故かと考える
彼の絵自体の魅力なのか・・ 展示構成が上手いのか・・
そして、なんだか懐かしさを感じさせるのは何故だろうか 日本とはまるで違う風景、乾いた空気を感じる絵なのに・・
今回出ていない作品 ヘルガ関連が少ないのは残念だった
とても満足した展覧会であったが、いっそう彼の硬質のテンペラ作品がどっさり観たくなった
今回の展示で特に好きなのは、ガニング・ロックス、表戸の階段に座るアルヴァロ、幻影の習作です
幻影の習作&表戸の階段に座るアルヴァロ
最後に・・・
現在、「美術館でワイエスの絵の解説をしているという孫娘」がインタビュアーとなっている4分間のインタビュービデオがよかった
91歳の現在、「感動すればすぐに行動に移す 年齢は関係ない」と、毎日制作を続けているそうだ
おおいに長生きして貰うと、私も嬉しい

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