さいたま芸術劇場前
庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル
シューマン ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 op.105
ショスタコーヴィチ ヴァイオリン・ソナタ ト短調 op.134
R.シュトラウス ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
開演のブザーが鳴り、客席には期待に満ちた静けさが広がっていた 舞台の袖から、音合わせのヴァイオリンの音が聞こえる 彼女は、ドアから転がり出すように大またで元気に歩いて来た
ヴァイオリンに弓が落ちるのを、604席ほぼ満員の観衆が固唾を飲んで見守っていた
「ああ、この娘はこんな音なのか・・・ こういう音が
パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝する音なの?」
私はショックだった 少しも良いとは思えなかった 弓が上滑りしているように感じる 私は、音楽素人なのでこの音の良さが分からないだろうか?と考えた なんであれ、この娘のバイオリンは好きとは言えなかった
それでも、2楽章に進んだらだいぶ良い感じなり、2曲目はかなり良かった ただ、どう見ても
主役はピアノだった 「おい、今日はあんたが主役じゃないんだから、もう少し押さえてヴァイオリンを引き立ててあげてよ」と、聞いている間中ピアノの音が鬱陶しかった
ココで休憩が入った 娘にどう?とたずねてもいいとも悪いともパッとした答えはなかった
第3曲目が始まった
「ええ〜?コレがさっきと同じヴァイオリンなの?まるで別人だ・・・」 音が輝いている ヴァイオリンが気持ちよく鳴っている 豊かで心地よかった ピアノになんかまったく負けていない ピアノも気持ちよく聞こえた 時を忘れて聞き入った
私は嬉しかった コレならこれなら国際コンクールでの優勝が分かる この音なら私は大好きだ さきほどの曲は挑戦曲だったのだろうか・・・
昨日まで少女だったバイオリニスト、こからどんどん大きく羽ばたくのだろう 前半は、「チケット損しちゃった・・」の気分だったが、後半とアンコールで今日は大満足です、という気持ちになった
「お腹空いちゃったね、いい音楽は聴くだけでもお腹がすくのかしら?」と先ほどの音を心地よく反芻しながら駅に向かった

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