2/22付の北海道新聞の社会面に載っていた記事を要約する。
2001年、道央自動車道を走行していた女性が、苫小牧付近で事故に遭い亡くなった。事故の原因は、高速道をキツネが横切り、それを避けようとした彼女は運転操作を誤りスピンしてしまった。そして中央分離帯に衝突したところに後続車が突っ込んだ。この区間は年間20〜60回ものこの類の事故があるにもかかわらず、十分な対策を取っていない日本道路公団に対し彼女のご両親は訴訟を起こした。そのご両親に警察官は「動物なら轢けばよかったのに」と言った。
はたしてまともな神経を持つ人間は、このような時キツネを轢き殺すことが出来るのだろうか?もし出来るとするならば、その人はどんな状況でも瞬時に物事の前後を判断でき、冷静に対処できるスーパーマンか、愛情というものが極端に欠如している冷血人間かどちらかだろう。
動物が道路上で車にはねられて死ぬことを「ロードキル」という。残念ながらこのロードキル、道内では高速道に限らず一般道でも頻繁に起こっている。
元来、野生動物は警戒心が強く人間がいる場所へは近づこうとはしない。そしてもし車の傍に来てしまったとしても、優れた運動能力が事故を回避できるはずである。それなのにこのような事が起こってしまうのは、人間のせいなのである。
特に初めて北海道に来た観光客などはキツネなどの野生動物をみると感動する。当たり前である。私は今でもキツネを見ると嬉しくなる。しかし観光客は可愛さから、つい自分の持っているお菓子やおにぎりなどを与えてしまう。
餌付けすることによって、キツネは自ら人間の元に近づいてくる。またマナーの欠けらもない人間が道にゴミを捨て、その中に入っている食べ残しを彼らは食べようとして道を徘徊する。そして事故が起こる。事故だけではない。これらが原因でキツネは自らの力でエサを取ることを忘れ、シーズンオフには飢え死んでしまうのである。よく観光地の近くでエサをねだりに来るキツネを多く見かけるが、彼らはもうすでに野生に戻れない。可愛いと思ってしてしまう軽い行為が生態系をも破壊してしまうのだ。
被害を被るのはキツネだけでない。もしエサを与えた時に、キツネに直接触れてしまったら「エキノコックス」という寄生虫が体内に入り、重い肝機能障害を引き起こしてしまう可能性がある。このエキノコックス、潜伏期間が長いということもあり、自分が感染していることに気が付かなくて、時には家族や友達など身近な人にも移してしまうこともあるのだ。ちなみにエキノコックスはキツネの糞尿から河川にも存在していることがあるので、地元の人が大丈夫、と言っているもの以外の河川の水は飲んではならない。
これらのことは何度も北海道に来られている方は、既によくご存知だと思う。その方は、宿などでご存じない方に出会ったら、ぜひ教えてあげて欲しい。そして一日も早く、野生動物にエサを与える人がゼロになることを願っている。
『ボクを見かけてもエサを与えないでね!』

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