「山道を登りながらこう考えた。
知に働けば角が立つ、
情に棹させば流される、
意地を通せば窮屈だ。兎角にこの世は住みにくい。」これは「草枕」の冒頭に出てくる夏目漱石の文章です。
このいわゆる知・情・意はギリシャのアリストテレスの時代から伝わっているレトリック(修辞学・説得術)の三要素すなわち
エトス・パトス・ロゴスに通じます。(ethos=意、pathos=情、logos=知)知は論理・理性、情は情緒・感情、意は意志・意欲が主な内容となりましょう。
「国家の品格」で「数学者のはしくれである私(藤原正彦)が、論理の力を疑うようになったのです。そして、「情緒」とか「形」というものの意義を考えるようになりました。」また「形とは主に、武士道精神からくる行動基準です。」と述べています。
大数学者の岡潔先生は数学の独創には情緒が必要と考えておられました。たとえ論理的には筋が通っている数学理論であっても、それが美しいと心で思わなければご自分では納得できないので、正しくないと結論づけたそうです。藤原氏もその域に達したと見るべきでしょうか。
要するに論理だけでは人を説得はできないのです。米国風ロジカルシンキングだけではダメなのです。情緒と形が先に来て最後に論理がくるようにするのが説得の技法なのです。ねずみ大好き123の
123はそれを指しています。結論から言いますと、
説得や説教に関しては「1形/道・2情緒・3論理」の順序が肝要です。(意が形や道に変容している点についてはいづれ説明を加えたいと思います)

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