「千住博」・・こういう人がいることも、もちろん絵も2年前までは知らなかった いつしか、この人がバイオニストの千住真理子さんのお兄さんで有名な画家と言う事は知った
でも関心を持ったのは、友だちがこの人の「大徳寺別館の襖絵」のことをよく話してくれたからだった そして伊東の大徳寺に観に行くことを勧められていた
その千住博が、アメリカ・フィラデルフィアの“松風荘”の為に襖絵を描き、その絵が山種美術館で観られることを知った
「アメリカ・ニューヨークで制作した襖絵」を「アメリカ・フィラデルフィアの松風荘」に納めるのに、その前に日本に持って来て公開する 一度海を往復させることは、大きな作品だけに大変だし損傷も心配だろう それをすることは、描いた千住本人がとても日本人にも観せたいからだと思った 画家のその気持ちと、期待とで嬉しかった
「千住博展」
大きな「襖絵」は、全体を観たいのでどうしても空いている時間に行きたかった TVで紹介すると混むので、その前に観たかったが放映の後になってしまった
せめてもと、朝一番に行った あら、開館しているの?と言うほど人がいなくて、これは大当たりだった
じっと観ていると、自分が滝の霧に包まれているような気分になってくる ヒンヤリ冷たいのだ
そして、真ん中が分かれている滝は、そこを分け入ってあちらの世界に入って行きたいと思わせる あちらに何があるのか分からないのだが行ってみたいのだ 不思議な感覚だった
部屋の真ん中に椅子があったので暫く座っていた
一本の滝は自分が滝に打たれて修行しているような、滝の傍にいる感覚になる
いつも絵を観ると、色がいいとかデッサン上手いとか、構図に感じいったりとなるのに、今回ただ観るだけ、ただ雰囲気に浸るだけだった
今回、松風荘に納められる絵は全部展示されているそうだが、これ以前の作品も奥に展示してあった
滝のほうが圧倒的に良い この人は滝を見つけて何かを見出したのだろうと考えた
そんな感想をこの人を教えてくれた友だちに送ったら、すぐにこの本を持ってやって来た
本は2冊セットになっている
1冊は「大徳寺聚光院伊東別院の襖絵の写真と辻仁成の短編小説」
もう1冊はそれを制作するまでの彼の写真と文章
私はこの作品に到達すために
今まで膨大な数の周辺の作品を描いていたのかなと感じています
こういう言葉がいっぱいある
先日の新日曜美術館の中で、松風荘の襖絵について、
自分が何百年後かにこれを観て、自分で良い絵だと思えたら良い
と言っていた
良い絵を描く人は良い言葉をいっぱい持っている
この本は、見開きのページがなおかつ開き、襖絵の感覚で観れるのがとても素敵だ 写真も良いし、彼自身が本に関わって作ったと思える
これを貰えてとても嬉しかった
何百年後に千住博の絵は観られないが、これからずっと彼の作品が気になって観て行くだろう

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