
芸術新潮1994年11月号
宮城県立美術館・洲之内コレクションカタログ
(海老原喜之助・ポアソニエール)
先日の東京美術倶楽部の展覧会の洋画部門を見た時、懐かしいような気持ちになった
私は20代の頃、「芸術新潮」に連載されていた洲之内徹の【
絵のなかの散歩
】【
気まぐれ美術館
】」というエッセイが楽しみだった 彼は、芥川賞の候補に3回なったという文学を目指したことある、銀座の「現代画廊」という自分の好きな絵ばかり扱う小さな画廊の経営者だった
私が、この人のエッセイから知った画家は多く、その画家が何人も東京美術倶楽部に出ていた
松本俊介、関根正二、長谷川利行、前田寛治−この辺の画家は彼によって広く知られるようになったのではないだろうか・・ 村山槐多、靉光
彼の本を今でも時々読み返す 絵に関する話は何度読んでも飽きないが、彼と女性たちの話もここまで書いていいのかと思うほど出てきて読むほうには面白い
まだリアルタイムで読んでいた頃、その画廊の常連という人に連れられて現代画廊に行ったことがあるが、いつも旅している彼には会えなかった
私も彼に出会っていたら、彼に恋したのじゃないかと思う 父親の世代でも、小っちゃくても、貧しくてもだ 私には、20歳そこそこの頃、46,7歳の男性に恋していたという実績がある
「洲之内コレクション」を、4年ほど前宮城県立美術館にて観た時「ああ、コレがあの人の目にかなった絵なのか・・」と感慨があった
私にはその良さが理解出来ない絵も多かった
東京美術倶楽部展に出ていた村山槐多の「バラと少女」や「関根正二の三星」はこんな良い絵だったのかと感嘆した
絵に惹かれたのか洲之内徹を思っていたのか、しばらく動けなかった

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