世界スウェンティア
この広大な世界は人、動物が限りなく暮らしている平和な世界。
ここ数年では亜人、獣人といった数少ない種族も世界へと進出してきたようだがとても仲良く手を取り合って暮らしている。
しかしこの世界には古くから伝わる謎があった。
〜宝玉を持つ者 世界の覇者となりて 世界の王となるであろう〜
この言葉の通りならば誰もが世界の王になれると信じた。
だが謎は謎でしかなく、宝玉すら本当にあるのか誰も知らない。
人は探求心に目覚めるとどうしても解き明かしたいと思ってしまう。
<ゴエルゴ採掘場>
樹海の奥にひっそりと構えている小さな採掘場。
年々此処では僅かだが鉱石が採れ、商人たちの間で取引されているようだ。
だが鉱石が取れなくなってからは誰もこの場所には近寄らなくなり、今では樹海に生茂る巨大な蔓によって入り口がとんと塞がれてしまった。
「成程。此処、ですか。」
眼鏡をくいっと持ち上げ低くも冷静に呟く男。外見は若く見え、背丈も高く執事系の印象を受ける。
「…とりあえずー。コレ、斬っちゃいますよ?」
逆に声が高く背丈の小柄な少女。背丈以上の大きな鎌を手に持ち、それを軽々と振るって見せている。
「はい、宜しくお願いします。ヒナシロさん。」
「まっかせてー!」
鎌を自在に操り採掘場を縛っていた蔓を一網打尽に粉砕する。
とても少女が操っているようには見えないくらい鋭い切れ味を持っている。
「さて……本当にあるんですかね、此処に。」
「知らないよー。でも情報確かなんでしょー?」
「確かでも多少の疑いはするべきですよ。さ、行きましょうか。」
不穏な空気を残した2人は、静かに採掘場へと入って行くのだった。
所変わって世界スウェンティア中立とされた国、ガウラッハ。
過去、騎士団が駐留するとされていたが此処十数年でそれはがらりと変わった。
騎士団駐留地はガウラッハから離れた場所に新しく設置し、ガウラッハ本来の国として他大陸から渡ってくる冒険者や旅人たちのふれ合い、憩いの場として利用され東大陸では印象が尤も高い国となっている。
ガウラッハで生まれ、育った若者が1人居た。
彼の名はソルエ・L(ライト)・コーネリアス。かの有名なレイド・コーネリアスの弟の息子である。父は病気で幼い頃に亡くなり、母と二人暮らしを続けるがその母も半年前に病気で亡くなってしまった。
年齢は21歳。まだ幼さを残す彼だが、両親の死を乗り越え誰よりも強く優しい心を持った男へと成長した。
両親を失った直後、遺留品を探っていたら母の手帳が見つかった。
もし1人になってしまったらこの方達を訪ねなさいと。
今はガウラッハではなく西の大陸にある小さな港町シー・リ・リュークの小さな家、ソエルの従兄弟にあたる人物の元で暮らしている。
「ソルエ、そろそろご飯にしますよ。席について。」
「あ……はい。」
毎度ながら素晴らしい食事を提供してくれるのは、従兄弟の嫁であるエル・フェンシス。彼女のお腹には5ヶ月になる赤ちゃんがいる。
「エル。僕が運ぶって言ったじゃないか。君は出来るだけ休んでいてって言ったのに。ほらー」
「いいじゃない。少しくらい身体も動かしてこの子に刺激を与えないと。」
ほのぼのしている仲良し夫婦。
こんなこと誰が知っているって、この辺に住んでいる人は夫婦の事を熟知しているだろう。以前、世界で大規模な争いがあった。明日を夢見て冒険する若者たちとそれを阻むアプソリュートと名乗る者たちの戦い。今では歴史の一つとして残ってはいるが、既に過去の話。
そこで冒険し、添い遂げた2人はやがて歳を重ね結婚し子供を授かった。
「…………。」
「ん? ソルエ……美味しくない?」
「! いやっ、美味しいっすよ。」
「元気がないな。…従兄弟だからって遠慮することないんだぞ。」
「…あ、はい……」
実を言えばソルエが此処に越してきてまだ2ヶ月だ。
母の手帳を見た日から即此処に来ようと思ったわけじゃない。
住み慣れた国から離れたくなかったと言うのもあったが、自分の父の兄である息子夫婦にお世話になるのは気が引けたのだ。
夕食を食べ終え、2階の部屋窓から外を眺めた。
何も変わらない世界。平穏な世界。
少し慌しくなればいいのに何て思うのはいけないことなんだろう。
「はぁ。…このままじゃ気疲れしそうな勢いなんだよな…」
窓の手すりに項垂れながら息を溢した次の瞬間――
突然遠く前の方向に空をも突き刺す黄色の縦線が弾いた。
「な、何だっ?!」
光りは一瞬だけでもう何も見て取れない。
ただ収まったと思えば直に余震が走った。余震から地震に変わり、震度は左程感じなかったが特別なものをみた感覚に暫らく呆然と窓の外を眺め続けた。

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