ミツキの夢の中。今話題になっている夢侵食系ヒルイト。
あのミツキでさえ侵食させられるほどの強い魔物。
だがこの場所はあの夢の場所だ。
+++++
「何故だ……?」
幾度も辺りを見渡そうが同じ景色、同じ空間。戻るにも戻れない異界の地。
果たして本当に此処が夢の中なのだろうか。
ミツキの姿が何処にもない。
「ミツキ! 居るのか、返事をしろ!」
大声を出しても人の気配はしない。声は闇の中にすぅっと溶け込んでいった。
取り合えず先に進むことにした。少しでも歩けば、誰かが居ると思いこんでいた。それが人かヒルイトか、どちらでも構わない。
ミツキの夢の中ならばヒルイトは必ず存在する。
+++++
何処までも深く、深く奥まで突き進んだ。
すると一滴の光が前方に淡く薄ら輝いた。
「ヒルイトか?」
光の方向に進めばシツキの脳裏に声が木霊した。
『やぁやぁお兄さん。キミは何処まで行くのかな?』
「――!?」
バッと振り向くが後ろに人影はない。
これも侵食型ヒルイトの特性の一つだろうか、自らは姿を見せずに声だけ発して敵を窺う。まるで忍者の様な感覚だ。
「お前は誰だ、此処はどこなんだ!」
『おやおやぁ。此処がどこかも分からないで迷い込んだのかい? そういえば先日も誰かが此処へ迷い込んだようだけど…もしかしてそれもキミかな、お兄さん。』
「迷い込む…? お前の言っている意味が分からない、此処はどこだと聞いているんだ。」
『…分からないなら今一度外に戻って入って来て御覧よ。そうすれば此処がどこかわかるだろう。』
謎の声はそこまで言うとシツキを外へと追い出した。
+++++
――シツキ
自分を呼ぶ声が聞こえる。
――シツキ
薄らとした意識の中、少しずつ取り戻していく。
――シツキ
「! ……ここ、は…?」
「良かった。気が付いたのね。」
意識を取り戻すとアールが心配そうに覗き込んでいた。ずっと傍に居てくれたのだろうか。
「覚えてないかもしれないけれど…ミツキに巣食っていたヒルイトの攻撃にやられたまま、意識を落としてしまったのよ。大丈夫? まだ顔色悪いわ。」
「ヒルイトに…?」
覚えが無かった。
ミツキの中に居たヒルイトにやられたと言う事は自ら、精神世界を発生させたのだろう。恐らくその後、シャンが処置を取ったお陰で此方側に戻って来られたのだ。
しかし何も覚えていない。やられた感覚が一切ないのだ。
アールにその後のミツキの容態を聞いたが何も異常は見当たらなかったらしい。
と言う事は先程の光景はミツキの夢の中ではない確率が高まってきた。
それなら誰の夢か、それとも誰かの能力なのだろうか。謎は深まったままシツキは遭った出来事をノートに残した。

0