シュミレーションは簡単だ。
カプセルの中に入り、操作してボタンを押せばすぐに始まる。ただ眠り状態に入るので脳に直接操作した内容が入り込み精神世界に行った感覚となる。
精神世界とは能力者たちが能力を発揮する場所の事を俗に言う。
しかし自分の作り上げた世界でなく、相手の作り出した世界にも稀にだが入る事があるのだ。
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「…? 俺の世界じゃない…、誰の世界だ?」
周囲を見渡すが能力の壁は殆ど見つからない。まるで生まれたての赤子の様だ。
これなら直傷つけてしまうと、精神世界を作り上げた主がダメージを負う仕組みだ。
「周りが静か過ぎる……少し傷を負わせてみるか。」
シツキは壁に手を添えて自らの能力を発動させた。
すると変化は直に起きた。一瞬で世界が崩壊し、気付いた時にはあの場所に居た。
今朝の夢で出会った、あの長い長い道の真ん中に――
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「またここ、か……。そういえば千影さん、カバチ君の夢の中に入ること言ってたけどもしかして此処がそうなのか?」
しかし同じ夢の中ではないはずだ。詳しい事は千影に聞かなければ解らないので、道なりに進むことにした。
幾度も幾度も同じ道。飽きるほど真っ直ぐ伸びた道。
壁は透き通っていてまるでミラーハウスにでもいるような感覚だ。
どのくらい歩いただろうか。恐らく20分は同じ景色だと思う。
すると誰かの話し声が聞こえてきた。
一人は確実に女性、しかしもう一人の声は聞こえない。
道なりに歩いてきたのは正解だったようだが、何か不安が付き纏い足を速めた。
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「あんたが悪夢! 友の敵、此処でアタシに食われなさい!」
『悪夢だと…… ワタシは悪夢などではない。ワタシは……』
「うるさいのよ!!! あんたが居なくなればカバチ君は普通の生活に戻れるの!」
千影に間違いはなかったが相手の容姿がイマイチつかめない。
シャドウ(影)の様にも見えるし侵食型ヒルイトの様にも見える。
シツキは二人の間に飛び出した。
「千影さん無事ですか。」
「?! し、シツキちゃん…??? どうしてあなたが此処にいるの。」
「解らない…ただ訓練中に何時の間にか此処に……、それよりカバチ君は!」
「……それが……失敗しちゃって……」
失敗の二文字、能力者の口から出たそれはシツキにはすぐ理解出来た。
つまりハングが失敗したと言う事なのだ。
「ならどうして夢の中に居るんです?」
「知らないわよ。急に能力の負担が掛かって目が覚めたら此処に居たの。……でもカバチちゃんじゃなくて、シツキちゃんがいるってことは…」
「……確かに可能性は否定出来ないけど此処は俺の世界ではないですから。」
意見は別れるが当たり前だ。ここは全くの異空間。
出られるかもまだ判りかねない場所だ。
『…お前も能力者だというのか…?』
「悪いが千影さん、あなたの能力じゃこいつは殺せない。俺が消滅する。」
「そうね、悪いけど頼むわ。」
千影を後ろに行かせて前に出る。
αの能力でなら敵は簡単に消せる。
『………無駄なことを………』
「無駄じゃないことを見せーーー!!?」
悪夢の身体がシツキの身体に合わせるように纏わりついた。
その時悪夢から聞こえた言葉、
――― 同じ階段を歩む者は 地獄へと向かう ―――
「シツキちゃん!」
千影がドリームハングを使用し、シツキと悪夢を離そうとする。その間、悪夢をハングしようと能力を強めた時だった。
「ぎ、あ……きゃああぁぁぁぁん!」
少々色っぽい声だが悲鳴を上げる千影。どうやら悪夢が抵抗を見せ、ハングされる前に逃げ出してしまった。しかしここは誰かの精神世界。悪夢は簡単には逃げられなかった。
『グ、グ、グ、出口はドコダ!?』
「逃げられると思うな、くらえ…… α!」
αを浴びた悪夢は弱り地についた。そして干からび煙の様に跡形も無く消える。
「千影さん、大丈………」
シツキが見たのは、カバチ君が千影を後ろから刃渡り40cmのナイフで突き刺している場面だった。
「シツキ…ちゃん……?」
「千影さん!」
前のめりに倒れた千影は自然と世界から消滅する。
「カバチ君! 何故だ。」
「………………。」
カバチ君は表情を変えず、何かが身体から抜け出たように楽になるとその場で膝をついた。
「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ…くは……僕の手で千影げげげげげげげさぁん。」
「カバチ君落ち着け、ここは夢の中だ、君の夢の中……! だから千影さんは此処でダメージを受けても現実世界で苦しんでるだけだ。つっても早く現実世界への道を拓いてくれ!」
「なななななななななな!! ち、ちちちち違いままますす。ここははは僕のののじゃ、ななない!」
「……?! そんな馬鹿な……じゃあ誰の世界だってんだ。」
意味が解らないままどうにかしてでなければならなかったので、協力して現実世界への扉を開き、外へ出ることに成功した。
訓練所の外で千影が苦しみもがいているのをシャンが発見したらしく、そのまま医務室へ連れ込んでくれていた。
ツォルトも混じって4人、椅子に座ってから悪夢の話を始める。最初はヒルイトの影響だと話して居たが段々内容がぶれてきて、ヒルイトの所為かどうかも怪しくなってきたことに、ツォルトは眉を顰める。
「千影さんは無事、だよな…」
「……シツキとカバチには悪いが千影は重傷だ。背中から刺された傷で内臓を深く傷つけている。暫らくは…」
カバチはガタガタと震え出し、医務室を出て行ってしまった。シツキは追いかけようと思ったが腕をシャンに掴まれて大人しくそこに居た

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